「何か面白い企画はないか?」
ビジネスの現場では、常に新しいアイデアが求められているかもしれません。しかし、多くの企画会議は、無数のアイデアの断片を生み出しながらも、最終的には「ありきたり」で「無難」な結論に落ち着いてしまうことはないでしょうか。それはなぜなのでしょうか。
その理由の一つは、私たちが「アイデアを出すこと」に集中するあまり、その企画が『そもそも、何を解決するためのものなのか』という、最も重要な問いを深く掘り下げていないからだと考えられます。
本シリーズでは、一つの曖昧な「アイデアの種」から、実行可能で価値ある「事業企画」を生み出すまでの、思考の全プロセスを公開していきます。記念すべき第1回は、全ての企画の土台となる『問題の再定義』について、その具体的なステップを解説していきます。
出発点:ありふれたアイデアから「本質的な問い」を見つけ出す
今回の思考実験の出発点は、ごくありふれたものとします。
「商品購入後のサポートに関する、有益なコンテンツはどうか?」
一見、良さそうなアイデアと言えるでしょう。しかし、このままでは弱いかもしれません。なぜなら、多くの競合が、既に同じような情報を発信している可能性が高いからです。これでは、視聴者に「このチャンネルでなければならない」という強い動機を与えることは難しいでしょう。
価値ある企画への第一歩は、このアイデアの裏側にある『なぜ、この情報が必要とされているのか?』という、より根源的な問いを立てることにあると言えます。
ステップ1:業界の「構造的な課題」に光を当てる
ここで重要なのが、問題を個別の事象としてではなく、よりマクロな視点、すなわち『業界全体の構造』から捉え直すことです。
例えば、ある業界のビジネスモデルが、本質的に「取引の成立」をゴールとして設計されていると仮定します。その場合、事業者の関心は「契約まで」に集中し、顧客の「購入後の人生」にまで責任を負うモデルになっていない、という構造的な課題が見えてくるかもしれません。
その結果、顧客は購入後に「こんなはずではなかった」という後悔を抱えやすくなる傾向が生まれます。物件のメリットは雄弁に語られても、購入後の資産価値の変動リスクや、維持管理コストの総額といった、『未来の不都合な情報』は積極的に提供されにくい構造があるからです。
この分析を通じて、私たちの最初のアイデアは、より鋭く、より本質的な問いへと進化していきます。
「『購入後のサポート情報』を提供するのではない。『業界が構造的に提供しづらい、未来の不都合な情報を提供すること』にこそ、価値があるのではないか?」
ステップ2:企画の出発点は「答え」ではなく「問い」にある
このプロセスで明らかなように、企画創発の第一歩は、ユニークなアイデア(答え)を探すことではありません。まず、その企画が対峙すべき『本質的な問題』を、深く、そして誠実に再定義することにあるのです。
- ありきたりな企画: 顧客の「知りたいこと」に、ありきたりな「答え」を提供する。
- 価値ある企画: 顧客が「まだ気づいていない問題」を提示し、新しい「問い」を立てる。
業界の常識を疑い、顧客の本当の痛みを見つめ、そして自社の哲学と接続する。このプロセスを経て初めて、アイデアは「ありきたり」を脱し、人を動かす「価値ある企画」へと進化を始めるのかもしれません。
まとめ
今回は、企画創発の出発点について解説しました。価値ある企画は、奇抜な「答え」からではなく、深く掘り下げられた「問い」から生まれます。それは、顧客自身もまだ言語化できていない、本質的な問題の「再定義」から始まるのです。
あなたのチームが今、取り組んでいる企画は、どのような「問い」に答えようとしているでしょうか。その「問い」自体を、より深く、より本質的なものへと進化させることはできないでしょうか。一度立ち止まって考えてみることが、ありきたりな企画から脱却する、重要な一歩となるかもしれません。
次回予告
第2回では、この再定義された問題を解決するための「最強のコンセプト」を、いかにして生み出すのか。その具体的な思考プロセスを解説します。






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