理念集より雄弁。組織文化の正体は「何を賞賛し、どう罰するか」に現れる

「自社の文化とは何か」。多くの経営者や管理職が、この曖昧で捉えどころのない問いに頭を悩ませます。ウェブサイトには理念が並び、研修では行動規範が説かれます。しかし、それらが本当に組織に根付いているかは、また別の話です。

言語化が難しい「組織らしさ」の正体を知るには、理念集や社内報を読むだけでは不十分かもしれません。その答えは、より具体的な現実の中にあります。組織が、何を「賞賛」し、何を「罰する」のか。そして、「どのように」罰するのか。その経営判断の積み重ねにこそ、会社の本当の姿が凝縮されている可能性があります。

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「賞」に現れる組織の視線 — 誰のために仕事をするのか

まず、「賞」のあり方について考えてみましょう。企業は利益を上げなければ存続できないため、成果を挙げたメンバーを称賛するのは当然のことです。しかし、考察すべきはそこから先にあります。持続的に成長する組織は、その賞賛の根底に、ある共通の価値基準を持っている傾向があります。それは、「その人は、仲間をみて仕事をしているか」という視点です。

例えば、直接的な利益には繋がらなくとも、組織全体の業務を円滑にするバックオフィス部門の貢献を、全社的に称賛する風土があるか。これは、その組織の成熟度を測る一つの指標になり得ます。なぜなら、この行為は単に功利的な理由から行われるものではないからです。

それは、「私たちは数字の前に、まず共に働く仲間を大切にする共同体である」という、組織のアイデンティティそのものを内外に示す、象徴的な行為と言えるでしょう。売上や利益はその結果としてついてくるものだと考える。この「視線の向き」こそが、その会社らしさの根幹を形成する一因となります。

「罰」に暴かれる組織の核心 — 譲れない一線と人間観

一方で「罰」のあり方には、その組織の「譲れない一線」と、隠された「人間観」がより鮮明に現れます。

まず、「罰の基準」についてです。「仲間をみて仕事をする」ことを是とする組織が、最も重い問題と見なすのは、その対極にある「相手のことを観ていない」行為です。個人の成果のために仲間の貢献を無視したり、情報を共有しなかったりする。あるいは、チームの士気を下げるような、他者への敬意を欠いた言動。これらの根底には、人間を目的達成のための「手段」と見なす考え方が潜んでいる可能性があります。健全な組織は、こうした行為を看過しない傾向があります。

さらに重要なのが、「罰の方法」です。同じ「許されない行為」に対して、その組織がどう対処するのか。そのプロセスには、人間観そのものが凝縮されています。一罰百戒のように当事者を糾弾し、組織から排除することで秩序を保とうとするのか。それとも、個人の尊厳に配慮し、なぜその行為に至ったのかを対話によって理解しようと努め、再起の可能性も視野に入れて処分を決定するのか。

前者は人間を「問題」として処理しようとし、後者は「道を踏み外した仲間」として向き合おうとします。この違いにこそ、その組織が持つ人間への眼差しの深さが、偽りなく示されるのです。

まとめ

あなたの会社の「らしさ」とは、一体何でしょうか。それを知りたければ、美しい理念集を読む前に、まず直近一年間の「表彰事例」と「懲戒事例」をリストアップしてみることをお勧めします。

そして、そのリストを前に、自分自身に、あるいは経営チームに問いかけてみてはいかがでしょうか。

「我々が賞賛しているその行動は、本当に仲間やお客様の方向を向いているか」

「我々が罰しているそのプロセスは、人間としての尊厳を守るものになっているか」

その答えの中にこそ、あなたの会社の本当の姿が、肯定的な側面も否定的な側面も、全て映し出されるはずです。組織文化の変革は、その鏡を正直に覗き込むことから始まります。

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この記事を書いた人

サットヴァ(https://x.com/lifepf00)

『人生とポートフォリオ』という思考法で、心の幸福と現実の豊かさのバランスを追求する探求者。コンサルタント(年収1,500万円超/1日4時間労働)の顔を持つ傍ら、音楽・執筆・AI開発といった創作活動に没頭。社会や他者と双方が心地よい距離感を保つ生き方を探求。

この発信が、あなたの「本当の人生」が始まるきっかけとなれば幸いです。

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