はじめに:FIREは新たな課題設定の機会
経済的自立と早期リタイア(FIRE)を達成すると、多くの自由な時間が生まれます。これは一つの到達点であると同時に、「残りの人生で何を成し遂げるか」という新たな問いに向き合う機会ともいえるでしょう。
この記事では、その問いに対する一つの選択肢として、ブログを通じた情報発信について論じます。本記事が、FIRE後のキャリアや人生設計を考える上での参考情報となれば幸いです。
なぜFIRE後の活動として「ブログ」が考えられるのか
FIRE後の活動としてブログを選択することには、どのような利点があるのでしょうか。ここでは、「思考の整理」「経験の価値化」「新たな関係性の構築」という3つの側面から、その可能性を探ります。
思考を整理・深化させる場として
会社組織では、常に効率や決められた目標達成が求められる傾向にあります。一方で、FIRE後の自由な時間においては、すぐには答えの出ないテーマについて深く考えることが可能です。
私自身、哲学、人類学、社会学といったリベラルアーツに関心があります³。ブログは、これらの分野を探求する中で得た気づきや疑問点を言語化し、思考を構造化するための有効な手段となり得ます。文章にする過程で、頭の中にある漠然としたアイデアが整理され、より深い考察へと繋がることも少なくありません。これは、対話を通じて洞察を得るという私の基本的な姿勢とも合致しています⁴。
経験や知識を社会的な価値に転換する
これまでの職業経験、乗り越えてきた困難、情熱を注いできた活動は、他の誰にもない個人的な情報資産です。
- キャリアにおける専門性: 私の場合、ウェブブランディングやリスク対策のコンサルタントとして、クライアントの年間経常利益1億円達成に貢献し、個人での累計経常利益は3億円を超えました⁵。この経験は、ビジネス関連のテーマを扱う上での信頼性の基盤となり得ます。
- 困難を乗り越えた経験: 31歳でパニック障害を発症し、特定の状況に困難を感じるようになりました⁶。このような個人的な経験を開示することは、同じような課題を抱える読者からの共感を得る可能性があります。
- 人生の転機となった経験: 学生時代、学業不振の状態から恩師との出会いをきっかけに学力を向上させ、明治大学に合格した経験があります⁷。この出来事は、「人は環境によって変化しうる」という私の考え方の基礎となっています⁸。
これらの個人的な経験をブログ記事として記録することで、情報はインターネット上に集積され、継続的に誰かの役に立つ可能性があります。私のブログメディアでは、2028年までに月間3000万PV、年収95億円規模のエコシステムを構築するという事業計画を立てています⁹。これは、個人の経験が持つ潜在的な価値を事業として展開する試みの一つです。
新たな人間関係やコミュニティを構築する
組織から離れると、意識的に行動しない限り、社会との接点が減少することがあります。ブログは、自身の価値観や専門性に共感する人々と繋がるきっかけになるかもしれません。
ここで重要となるのは、短期的なページビュー(PV)を追求するのではなく、読者との長期的な信頼関係を築く視点です。私のブログでは、「人生とポートフォリオ思考」という中心的な考え方の上に、健康、人間関係、資産形成といったカテゴリーを配置しています¹⁰。これは、資産形成のみを追求するのではなく、思考、健康、人間関係といった要素が統合されて初めて、個人にとっての豊かさが実現されるのではないか、という問いを提示するものです¹¹。こうした思想に共感する読者との繋がりは、FIRE後の人生における貴重な関係資本となる可能性があります。
独自の「発信テーマ」を見つけるための自己分析
「自分には発信できるような専門性がない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、重要なのは、これまでの経験を客観的に評価し、それらを組み合わせることで独自の領域を見出すことです。
人生の経験を整理する
- 職務経歴: どのような業界で、どのような役職を経験したか。(例:零細企業の子会社社長¹²、現職では主査¹³)
- 成功体験と失敗体験: 何を達成し、どのような壁に直面したか。(例:学業の遅れを取り戻した経験¹⁴、パニック障害の発症¹⁵)
- 情熱を注いできたこと: 時間を忘れて没頭できる活動は何か。(例:高校時代から2,000時間以上練習したドラム¹⁶)
- 個人的な課題: 自身の弱みやコンプレックスは何か。(例:人混み、高所、閉所に対する恐怖症¹⁷)
専門性を掛け合わせる
複数の要素を組み合わせることで、発信内容の独自性を高めることができます。
- 私の例:「年収1500万円の現役コンサルタント¹⁸」×「パニック障害の当事者¹⁹」×「音楽スタジオを持つドラマー²⁰」×「深層心理と哲学の探求²¹」
このように複数の要素を掛け合わせることで、単にFIREを達成した人物としてではなく、「現代の社会システムを分析し、そこから距離を置いた上で豊かさの意味を問う考察者」という、より具体的な発信者の立ち位置を明確にできるかもしれません²²。
誰に情報を届けたいかを定義する
自身の発信が、どのような読者を対象とするのかを明確にすることも有効です。
- 過去の自分のような読者: かつての自分と同様に、キャリアや人間関係、健康について悩んでいる人々。
- 価値観を共有したい人々: 社会的に定義された成功ではなく、自分自身の価値基準で生きたいと考える人々²³。
対象読者を具体的に設定することで、提供する情報の解像度を高める効果が期待できます。
PV数に依存しない、長期的な信頼を築くコンテンツ戦略
影響力とは、PVやフォロワーの数だけで測られるものではなく、読者一人ひとりとの信頼関係の積み重ねによって形成されると考えられます。そのためには、短期的な注目を集めることよりも、時間をかけて価値を提供していく視点が求められます。
ストック型コンテンツを重視する
一過性のニュース(フロー情報)よりも、時間が経過しても価値が劣化しにくい普遍的なテーマ(ストック情報)を中心にコンテンツを構成する方法が考えられます。私のブログカテゴリーである「人生とポートフォリオ思考」や「リベラルアーツ」「健康」などは、ストック情報を意図して設計しています²⁴。
強みと弱みを客観的に開示する
成功体験(例:米国株投資で年利30%を達成²⁵)と同時に、失敗談や弱み(例:パニック障害²⁶)をありのままに記述することで、発信者への人間的な理解が深まり、結果として信頼に繋がる場合があります。
価値提供を優先する
収益化を急ぐのではなく、まずは自身の知識や経験を惜しみなく提供し、読者の課題解決に貢献することに集中するというアプローチが有効です。読者からの信頼が十分に蓄積された段階で、収益(アフィリエイト、コンサルティングなど²⁷)は後からついてくる可能性がある、という考え方です。
継続するためのシステム作り
情報発信において最も難しい課題の一つが「継続」です。これを個人の意欲だけに頼るのではなく、仕組みによって支える方法を検討します。
執筆活動を生活に組み込む
私の1日の中で、朝8時と夜20時以降を「AI執筆」の時間と仮に定めています²⁸。このように、生活リズムの中に執筆の時間をあらかじめ確保することで、その日の気分に左右されずに作業を継続しやすくなります。
創造性を高める環境を準備する
私は、集中できる環境を確保するため、意図的に都心から少し離れた場所に個人スタジオを構えています²⁹。自宅の書斎や近所のカフェなど、自分が集中しやすい環境を意識的に選択することが、執筆の効率を高める上で役立つかもしれません。
テクノロジーの活用
文章をゼロから完璧に書き上げる必要はありません。私のブログでも「生成AI」というカテゴリーを設けているように、AIを思考のパートナーや下書きの作成者として活用することも一つの方法です³⁰。ツールを適切に利用することで、執筆の心理的なハードルを下げることが期待できます。
まとめ:書くことは、自己と思考を再構築する行為
FIRE後のブログ運営は、副次的な収入を得る手段にとどまりません。それは、自らの思考を深め、経験を社会的な価値へと転換し、新たな信頼関係を通じて人々と繋がるという、継続的な知的生産活動と捉えることができます。影響力とは、他者を操作する力ではなく、自身の生き方や発信する情報を通じて示す価値観や専門性に、人々が自然と関心を寄せる状態といえるかもしれません。
キーボードで自らの経験や思考を言語化していく作業は、これまでの人生を再評価し、今後の方向性を考える一助となる可能性があります。その一行一行の積み重ねが、ご自身の第二の人生をより主体的に設計していくプロセスに繋がるのではないでしょうか。
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