ジャズの演奏などで聴かれる、持続的で繊細なシンバルの余韻。この特有のサウンドは「シズルシンバル」と呼ばれる楽器によって生み出されています。専門的な知識や高価な機材を必要とせず、手元のシンバルを加工することで、その音響特性を再現することが可能です。
当メディア『人生とポートフォリオ』では、音楽を単なる趣味ではなく、人生を豊かにする「情熱資産」を育むための重要な自己表現活動と位置づけています。この記事では、シズルシンバルの音響的な仕組みから、具体的な製作手順までを解説します。既製品を購入するのではなく、自らの手で楽器を創造するプロセスは、音楽表現の可能性を広げる一助となるでしょう。
シズルシンバルとは何か?その音響的な仕組み
シズルシンバルとは、シンバルのサスティン(音の余韻)に、「ジュー」や「シー」といった特徴的な高周波ノイズが付加されたシンバルの総称です。英語で肉を焼く際の擬音語である「sizzle(シズル)」が、その名称の由来とされています。
このサウンドの根幹は、シンバルに取り付けられた複数の金属製リベット(鋲)にあります。シンバルが打撃によって振動すると、そのエネルギーがリベットに伝わります。リベットはシンバルの表面で細かく跳ねて接触を繰り返すことで、無数の微細な接触音を発生させます。この現象が、滑らかで持続性のあるサスティンを生み出すのです。
音響学的な観点からは、シンバル本体が発する基音や倍音の成分に対し、リベットによる高周波のノイズ成分が加算されることで、サウンド全体の周波数特性がより複雑で豊かなものに変化します。この効果によって、演奏における音の隙間を埋めたり、静かな楽曲において空間的な広がりを演出したりすることが可能になります。主にジャズで多用されますが、ポップスやロックのサウンドにアクセントとして用いられることもあります。
なぜ自作するのか?既製品にはない価値
市場には、製造段階からリベットが取り付けられた既製品のシズルシンバルも流通しています。では、あえて自作という選択肢を検討する理由は何でしょうか。そこには、既製品の購入とは異なる、三つの本質的な価値が見出せます。
第一に、音響的な探求の自由度です。手持ちのシンバルを基にすることで、その楽器が元来持つ音響特性を活かしながら、自分だけのシズルサウンドを追求できます。リベットの材質(真鍮、スチールなど)、数、配置によってサウンドは多角的に変化します。この試行錯誤のプロセスは、音響に対する自身の理解を深める機会となります。
第二に、経済的な合理性です。現在使用していないシンバルや、安価で入手したシンバルを加工することで、新たな楽器として再生させられます。これは、手持ちの資産を有効に活用するという、当メディアが提唱するポートフォリオの考え方にも通じるアプローチです。
第三に、創造的行為そのものがもたらす価値です。楽器を単なる消費の対象として捉えるのではなく、自らの手で加工し、新たな価値を生み出す対象として向き合うこと。この行為は、楽器との関係性を再構築すると同時に、人生における「情熱資産」を形成する上で、有意義な時間の使い方と考えられます。
シズルシンバルの製作手順
ここからは、シズルシンバルを製作するための具体的な手順を解説します。作業には電動工具を使用するため、危険が伴う可能性があります。安全管理を徹底し、自己の責任において慎重に進める必要があります。
必要な道具と材料
まず、作業に必要な道具と材料を準備します。
- 道具: 電動ドリル、ドリルビット(リベットの軸径よりわずかに大きいサイズ)、マスキングテープ、油性ペン、金属ヤスリ(細目)、ポンチ(任意)、保護メガネ、軍手
- 材料: 加工対象のシンバル、シズルリベット
リベットの材質には真鍮(ブラス)製やスチール製などがあり、サウンドに影響を与えます。一般的に、柔らかく暖かい響きを持つブラス製が選択される傾向にあります。
リベット位置の決定
リベットを打ち込む位置は、サウンドを決定づける重要な要素です。
- 位置とサウンドの関係: エッジ(縁)に近いほどリベットの反応は速くなり、シズル効果が強く現れます。カップ(中央の膨らみ)に近づくにつれて効果は穏やかになり、サスティンに溶け込むような響きになります。
- 一般的な配置: 均等な間隔で3箇所、あるいは対象的な位置に2箇所配置するのが一般的です。
- 事前の音響確認: 穴を開ける前に、マスキングテープでリベットを仮止めし、マレットなどで軽く叩いて響きを確認する方法が有効です。これにより、完成後のサウンドをある程度予測できます。
位置が確定したら、油性ペンで正確に印をつけます。
ドリルの穴開け作業
印をつけた箇所に、ドリルで穴を開けます。
- 安全確保: 必ず保護メガネと軍手を着用してください。
- 下準備: ドリルの先端が滑ることを防ぐため、印の中心にポンチで小さなくぼみを付けておくと、より正確な穴開けが可能です。
- 穴開け: シンバルを安定した台の上に置き、ドリルを垂直に当て、低速で回転させながら圧をかけていきます。金属の削りカスが飛散する可能性があるため注意が必要です。
- バリの除去: 穴が開いた後、ドリルの縁に生じたバリ(金属のささくれ)を金属ヤスリで丁寧に削り取り、滑らかに仕上げます。バリが残っていると、リベットの自由な振動を妨げ、意図しないノイズの原因となる可能性があります。
リベットの取り付け
最後に、開けた穴にリベットを取り付けます。シズルリベットとして市販されている製品の多くは、先端が二股に割れたスプリットタイプです。
- 穴にリベットを差し込みます。
- シンバルの裏側で、二股に分かれた先端を左右に押し広げて固定します。
- このとき、リベットが自由に揺れ動く程度の遊びを持たせることが重要です。きつく固定しすぎると、シズル効果が十分に得られない場合があります。
これで、オリジナルのシズルシンバルは完成です。
シンバル本体を加工しない代替手法
シンバルにドリルで穴を開けることに抵抗がある場合、シンバル本体を加工せずにシズル効果を得るための代替的な手法も存在します。
シンバル・チェーンの活用
シンバルスタンドのティルター部分から、玉鎖状のチェーンを垂らすアクセサリーです。チェーンがシンバルの振動によって表面に触れることで、リベットと同様の効果を生み出します。着脱が容易なため、複数のシンバルで気軽に試せる点が利点です。
テープとコインによる試行
簡易的な方法として、シンバルの裏側にガムテープなどでコインを貼り付ける手法もあります。得られるサウンドは本格的なシズルとは異なりますが、どのような響きが付加されるのかを実験的に試す上では有効な手段です。
まとめ
ジャズなどで聴かれる独特の余韻を持つシズルシンバルは、リベットがシンバルの振動によって微細な接触音を発生させることで、そのサウンドが形成されます。
この記事で解説した製作手順を実践することで、手持ちのシンバルを加工し、独自の音響特性を持つ楽器を創り出すことが可能です。リベットの位置や数、材質を試行錯誤するプロセスは、音響への深い理解と、自分だけの表現を追求する機会を提供します。
当メディア『人生とポートフォリオ』が考える豊かさとは、既成のものを消費するだけでなく、自ら創造する活動の中に見出されるものです。楽器に手を加え、自分だけの音を生み出す行為は、音楽という自己表現の領域を広げ、自身の「情熱資産」を形成する一助となるでしょう。









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