ドラム椅子の高さは、踏んでいる姿勢のまま止めて測る。座ったままでは決まらない

膝の角度が100度。太ももの上部が床と平行か、膝がやや下がるくらい。背骨と太ももの間が100度から110度。ドラム椅子の高さについて、よく紹介されている3つの目安です。

この3つを同じ椅子で順に試すと、高さが揃いません。1つ目に合わせた椅子が、2つ目の基準では低すぎることがあります。

目安が食い違うのは、数値が違うからではありません。数値を測っている瞬間が、それぞれ違うからです。この記事で書くのは、自分がどの瞬間で測ればいいかを決める順番です。

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膝100度、太ももが水平、背骨と太ももで110度。同じ高さを指していない

膝の角度100度は、膝関節そのものを測っています。太ももが床と平行かやや下がる、は太ももの傾きを見ています。背骨と太ももの間が100度から110度、は股関節の角度です。

3つは連動していますが、同じ値ではありません。股関節が110度でも、椅子とバスドラムの距離が変われば膝の角度は動きます。太ももの傾きも、腰を丸めるか立てるかで変わります。だから、どれか1つに合わせると、残りの2つはずれます。

かかとを下ろすか上げるかで、同じ「膝が少し下がる」が別の高さになる

かかとを下ろしてペダルに足を乗せた状態で測る、と書いてあるものがあります。かかとを持ち上げてビーターを打面につけた状態で測る、と書いてあるものもあります。同じ「膝が脚の付け根よりやや下がる」でも、この2つはまったく別の姿勢です。

かかとを上げれば、その分だけ膝は上へ動きます。だから、かかとを上げた状態で「膝がやや下がる」を満たそうとすると、椅子は高くなります。差は数センチです。小さく聞こえますが、よくある製品の調整幅は12センチから17センチほどしかありません。その中の数センチなので、座れば別の椅子に感じられます。

椅子より先に、バスドラムの踏み方が決まっている

かかとを上げて、足の指の付け根で踏むのがヒールアップです。かかとを床につけたまま、足首の動きで踏むのがヒールダウンです。多くの人は両方を使いますが、1曲を通して長く取っている姿勢は、どちらか一方に寄ります。

自分がどちらに寄っているかが分からないときは、いつも叩いている曲を1曲、足元だけ録画してください。かかとが浮いている時間と、ついている時間の長いほうが、あなたの踏み方です。椅子の高さは、その長いほうの姿勢で決めます。椅子は演奏中ずっと同じ高さで、変わるのは姿勢のほうだからです。いちばん長い姿勢に合わせておけば、外れている時間が短くなります。

測る前に、椅子の前後位置を先に固定する

椅子を前後に動かすと、同じ高さのままでも膝の角度は変わります。距離が動いたままで膝を見ても、答えは1つになりません。いつも演奏している位置に椅子を置き、そこから動かさずに測ってください。

ここでいう脚の付け根とは、座ったときに太ももとお腹のあいだにできる折れ目のことです。この位置と膝を見比べます。

ヒールアップとヒールダウンでは、止める瞬間が違う

共通しているのは、ただ座った姿勢では測らない、という一点です。

ヒールアップの人は、ビーターが打面に当たっている瞬間で測る

ペダルに足を乗せ、かかとを上げて、ビーターをバスドラムの打面に当てます。その姿勢のまま止めて、膝の高さを見ます。

膝が脚の付け根と同じか、やや下にあれば、そこが合っている高さです。膝が脚の付け根より上に来ていれば、椅子が低すぎます。この状態では、踏み込むときに膝を持ち上げる動作が先に入るので、足の重さがペダルに乗る前に力を使うことになります。

鏡がなければ、スマートフォンを腰の高さに置いて録画してください。カメラが高すぎると、膝が実際より下に写ります。感覚だけで判断すると、低い椅子は安定して感じられるので、低すぎることに気づけません。

ヒールダウンの人は、かかとが床についた状態で測る

かかとをペダルの後ろ側につけたまま、つま先で踏み込みます。その姿勢で止めて、膝の高さを見ます。

判定の位置はヒールアップと同じで、膝が脚の付け根と同じか、やや下です。ただし出てくる椅子の高さは低くなります。かかとを上げていない分だけ、膝が上がっていないからです。

高すぎるときは、太ももが下がって足首が伸びる向きに寄り、つま先を持ち上げる余地が減ります。踏み込んだときにかかとが床から浮くようなら、高すぎます。低すぎるときは、膝が脚の付け根より上に来て、足首を使う前に膝が邪魔をします。

足で支えきれない分は、腰と背中が引き受ける

椅子の高さが合っていないとき、最初に困るのは足ではありません。上半身です。

高すぎると、足をペダルへ届かせるために体が前へ出ます。座面に乗る体重が減るので、左右にも揺れやすくなります。低すぎると、膝が上がって足首が曲がる向きに寄り、つま先を下ろす余地が減ります。足りない分は、膝と腰の動きで補うことになります。どちらの場合も、足で支えきれなかった分を、腰と背中が引き受けています。ここからは私の解釈で、測った研究があるわけではありません。ただ、叩き方は変えていないのに椅子を変えると腰の張りが変わる、という話は、この形でなら説明がつきます。

なお、しびれがある、夜に痛みで目が覚める、腕や脚が上がらない。こうした状態は、椅子の高さで扱える範囲を越えています。高さを何センチにするかを考える前に、整形外科や、演奏者の身体を診た経験のある方に一度みてもらうほうが確実です。

買い替えが要るのは、必要な高さが調整範囲の外に出たときだけである

測った結果、いまの椅子で止められる高さなら、買い替える理由はありません。確かめるのは2つで、その高さが調整範囲に入っているかと、その高さでぴったり止められるかです。ドラム用の椅子はスローンという名前で売られていて、高さの止め方には2種類あります。支柱の穴にピンを差す段階調整と、ネジやスパイラルで止める無段階調整です。段階調整では、穴と穴の間の高さは選べません。必要な高さがそこに来ると、上か下かを選ぶことになり、どちらでもずれます。

無段階のほうが優れているのではありません。自分の測った高さが穴の間に落ちたときに、初めて効きます。落ちていなければ、段階調整で足ります。

座面の形も同じ順序で決まります。ヒールアップで膝を大きく動かす人は、太ももの付け根が座面の縁に当たることがあります。当たるならサドル型が候補になり、当たらないなら丸型のままで困りません。先に測って、困った項目だけを買い替えの理由にしてください。

椅子を動かすと、測り直しになるものが2つある

椅子の高さを変えたら、そのままにできないものが2つあります。スネアの打面の高さと、ハイハットの高さです。

どちらも、床からの絶対値ではなく、座っている自分から見た位置で決まっています。上体の角度が変わらなければ、座面が3センチ上がったとき、肩も3センチ上がります。スネアもハイハットも、相対的には3センチ低くなったことになります。

だから、椅子は最初に決めます。あとから椅子を動かすと、決めたはずのセッティングが全部ずれます。逆に言えば、スネアやハイハットの高さがどうしても決まらないときは、その手前の椅子が動いている可能性があります。

よくある疑問

Q:椅子の高さは、身長で決まりますか。

A:決まりません。同じ身長でも、脚と胴の長さの比率で必要な高さは変わります。バスドラムまでの距離や踏み方でも動きます。身長から出した数値は、測りはじめる位置としてだけ使ってください。

Q:高いほうが良いのですか、低いほうが良いのですか。

A:どちらにも向き不向きがあります。高めにするとかかとが床から離れるので、足首だけでなく脚全体の重さを落とす動きが使えます。低めにすると座面に乗る体重が増えるので、上半身は安定します。ただしこれは、踏み方に合った範囲の中での話です。範囲の外へ出ると、どちらの利点も出ません。

Q:電子ドラムでも同じ測り方でいいですか。

A:測り方は同じですが、出てくる高さは変わることがあります。電子ドラムのキックパッドには、パッドの大きさが5インチのものから、20インチのものまであります。大きさが違えば、ビーターが当たる高さも変わります。ビーターと打面を持たないタイプのペダルでは、踏み込んで止まった位置が、測る瞬間の代わりになります。

Q:スタジオやライブハウスの椅子でも、測った高さは使えますか。

A:使えます。ただし数値を持ち歩く必要があります。自宅で決まったら、床から座面の上までをメジャーで測って、その数値を控えておいてください。機種が違っても、座面の高さが同じなら同じ姿勢になります。

測るのは1回で終わる

いまの椅子に座り、ビーターを打面に当てた姿勢のまま止まって、膝を見る。かかる時間は1分もありません。

数値を自分に合わせにいくのではなく、踏んでいる姿勢のほうに数値を出してもらう。この順番にしておくと、次に椅子を選ぶときも楽になります。座り比べる前に、必要な高さが分かっているからです。

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