インフレ税とは、物価が上がって、現金や預金で買えるモノの量が減ることです。円安で輸入品が値上がりすると、給料の額が同じでも、使えるお金で買える量が減ります。
しかし、口座の預金額は変わらないため、買える量が減っていることには気づきにくくなります。インフレ税は法律で定められた税金ではありませんが、現金や預金の価値が下がる点で税を払ったときと同じ負担になるため、この名前で呼ばれます。
円安が物価を上げる仕組み、インフレ税の中身、円安が日本経済に与える良い影響、3つの対策を、この順に説明します。
円安は輸入品の値段を上げる
円安になると、同じ輸入品を買うために必要な円が増えます。日本は原油と天然ガスをほぼ輸入に頼っているため、円安はエネルギーと食料品の値上がりを通じて生活費を押し上げます。
1ドルの商品を輸入するときの支払額は、為替レートによって次のように変わります。
- 1ドル=100円のとき、支払う金額は100円
- 1ドル=150円のとき、支払う金額は150円
日本は原油の99.7%、天然ガスの97.6%を輸入に頼っています(資源エネルギー庁の資料、2018年度の数値)。食料も、カロリーベースの自給率が令和6年度で38%にとどまり、多くを輸入に頼っています(農林水産省)。
値上がりの結果、同じ1万円で買えるモノの量が減ります。この買える量を購買力と呼びます。
インフレ税は現金と預金で買える量を減らす
インフレ税とは、物価上昇で通貨の価値が下がり、家計や企業が持つ現金や預金の価値が減ることを指す経済用語です。同時に国債の実質的な価値も下がるため、政府の債務の負担は軽くなります。法律で決まった税金ではありませんが、持っているお金で買える量が減る点で、税を払ったときと同じ負担になります。
年率2%のインフレが続く場合を考えます。今日100万円で買えるモノは、1年後に約102万円出さないと買えません。預金口座の100万円は100万円のままですが、買える量は1年後に約98万円分になります。
年率2%のインフレが続くと、今の100万円で買えるモノの量は、今の価格で買える金額に直すと次の表のとおり減ります。預金に利息がつけば、その分だけ減り方は小さくなります。
| 経過年数 | 100万円で買える量(今の価格に換算した額) |
|---|---|
| 0年後 | 1,000,000円 |
| 5年後 | 約905,731円 |
| 10年後 | 約820,348円 |
| 20年後 | 約672,971円 |
物価が上がると、消費税の税率が同じでも、1個あたりの消費税額は価格に比例して増えます。
| 状況 | ハンバーガーの価格 | 消費税率 | 消費税額 |
|---|---|---|---|
| 値上がり前 | 100円 | 10% | 10円 |
| 値上がり後 | 120円 | 10% | 12円 |
円安は輸出企業に有利で、輸入に頼る企業と家計に不利になる
円安は、輸出企業の円換算の収益を増やし、輸入に頼る企業と家計の費用を増やします。同じ円安でも、立場によって利益になる場合と費用になる場合に分かれます。
- 輸出企業:海外で日本の製品が安く買えるようになり、自動車や機械などの国際競争力が高まります。海外で得たドル建ての利益を円に換算すると、円安のときほど円の金額が大きくなります。
- 輸入企業と家計:原材料やエネルギーを輸入に頼る企業は、費用が増えます。増えた費用が商品価格に上乗せされると、家計の支出が増えます。
厚生労働省の毎月勤労統計調査では、2025年平均の現金給与総額は前年比2.3%増でした。物価は3.7%上昇し(持家の帰属家賃を除く総合)、実質賃金は1.3%減っています(厚生労働省)。給料が増えても、物価の上昇に追いつかなければ、買える量は減ります。
対策は支出の見直し、資産の分散、収入の増加の3つ
物価が上がった分は、支出を減らす、運用で資産を増やす、収入を増やす、のどれかで補います。3つを組み合わせると、現金と預金だけに頼らずに購買力の低下を抑えられます。
ステップ1:現状把握と固定費の見直し
家計の収入と支出を把握し、毎月決まってかかる固定費から見直します。
- 通信費:大手キャリアから格安SIMへの乗り換えを検討する。
- 保険料:必要以上の保障がついていないか、ライフステージに合わせて見直す。
- サブスクリプション:利用頻度の低いサービスは解約する。
ステップ2:現金・預金以外の資産に分ける
現金と預金は、物価が上がると買える量が減ります。株式や外貨建て資産など、現金・預金以外の資産にお金を分ける方法があります。
- 株式:全世界の株式に分散投資するインデックスファンドは、1社の値下がりが全体に与える影響を小さくできます。元本が保証されない点は、預金と違います。
- 外貨建て資産:円安のときは、ドルなどの資産を円に換算した金額が増えます。円高になると、円に換算した金額は減ります。
新NISA(少額投資非課税制度)は、売却益と配当・分配金が非課税になる制度です。2024年1月に始まり、年間の投資枠は最大360万円、生涯の非課税保有限度額は1,800万円です(金融庁)。通常、上場株式の売却益には約20.3%の税がかかります(国税庁)。
ステップ3:稼ぐ力への投資
物価が上がっても給料が上がらないときは、収入そのものを増やす方法があります。
- スキルアップ:専門知識や資格を取得し、社内での昇進・昇給の交渉や、待遇のよい企業への転職につなげる。
- 副業:自分のスキルを活かせる副業を始め、収入源を複数にする。
円高と円安のどちらに動くかは分からないので資産を分けて持つ
今後、円高に振れるか、さらに円安が進むかは、誰にも正確に予測できません。1つの資産に集中させず、投資先・資産の種類・投資する時期の3つで分けて持つと、1つの値下がりが全体に与える影響を小さくできます。
- 投資先の分散:国内株式、海外株式など
- 資産の種類の分散:株式、外貨、不動産など
- 時間の分散:毎月一定額を買う積立投資
最初の一歩として、非課税制度である新NISAについて調べてみてはいかがでしょうか。



