物価上昇は預金の価値をどう減らすのか?2025年度PB黒字化の見通しと資産防衛

物価が上がると名目の所得や売上が増えるので税収も増えやすくなりますが、同じ物価上昇のもとで、預金で買えるものの量は減ります。2025年度のプライマリーバランス(PB)黒字化の見通しが出ても、手元の預金の購買力は、物価上昇率と預金金利の差で決まります。

しかし、PB黒字化は財政にとって良い知らせなのだから、預金の価値と結びつけて考えるのは大げさだ、と感じる方もいるでしょう。黒字化の見通しが財政健全化の一歩とされていることは確かです。ただ、国の収支と、家計の預金の購買力は、別の数字で決まります。

この記事では、PBの意味、物価上昇が預金に与える影響、資産を分けて持つ考え方、見直しの3つの行動を、この順に説明します。

目次

PBは税収と政策経費の差で、税収は名目GDPに連動する

プライマリーバランス(PB)は、社会保障や公共事業などの政策経費を、その年の税収などでどれだけ賄えているかを示す指標です。国債の元利払いは含めず、黒字なら、新たな借金なしで政策経費を賄えている状態を指します。

内閣府が2024年7月に出した試算では、2025年度の国・地方のPBは約0.8兆円の黒字になる見込みでした。内閣府はその理由として、2023年度の税収の上振れと、経済の動きを踏まえた基調的な税収増を挙げています。税収は家計の所得や消費、企業収益に連動し、名目GDPとの相関が強いと内閣府は説明しています。物価が上がって名目GDPが増えると、税収も増えやすくなります。

しかし、2026年7月の試算では、2025年度のPBは0.2兆円の赤字となり、黒字化の時期は2027年度以降に変わりました。

物価が年2%で上がると、現金の購買力は30年で約45%減る

物価が年2%で30年間上がり続けると、いま1000万円で買えるものは、30年後には約552万円分しか買えなくなります。預金金利が物価上昇率より低い間は、預金していても購買力は下がります。

企業間の取引価格は約90年で約860倍になった

日本銀行の統計では、企業どうしが取引する商品の価格を示す企業物価指数(1934〜1936年の平均を1とする)は、2022年に約860になりました。90年弱の間に、企業間の取引価格は約860倍になった計算です。

実質金利は、預金金利から物価上昇率を引いた値

実質金利は、預金の金利(名目金利)から物価上昇率を引いた値で、おおまかな目安として使われます。例えば、預金金利が0.1%で物価上昇率が2%なら、実質金利はおよそマイナス1.9%で、預金の購買力は毎年それだけ減ります。預金金利が物価上昇率を下回る間、預金の購買力は下がり続けます。

日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%を「物価安定の目標」にしています。

現金と預金だけの資産は、物価上昇のリスクをすべて受ける

現金と預金だけの資産は、物価上昇で購買力が下がるリスクをすべて受けます。物価の動きに合わせて価値が変わる資産を組み合わせると、そのリスクを分けられます。

資産物価上昇との関係注意点
物価連動国債元本と利子が、生鮮食品を除く全国消費者物価指数に連動して増減する2013年より前に発行された旧型は、物価が下がると額面を下回るおそれがある。2013年以降の新型は、償還時に元本が額面を下回らない設計
株式物価が上がると、企業の売上は名目の金額では増えうる株価は上下し、物価に連動して上がる保証はない
不動産物価が上がると、家賃や価格が上がることがある価格が下がることもあり、物価の動きに必ず連動するわけではない

どの資産にも価格の変動があります。リスクの中身を理解してから選ぶ必要があります。

資産の見直しは、3つの行動から始める

1. 資産の内訳を確認し、現金・預金の購買力を計算する

まず、総資産が現金・預金、株式、保険などにどう分かれているかを確認しましょう。物価が年2%で上がり続けると、現金・預金の購買力は10年後に約82%、20年後に約67%になります。名目の金額ではなく、購買力で数字を見る習慣が出発点になります。

2. 少額から投資できる制度に新NISAがある

新NISAは2024年1月に始まりました。つみたて投資枠は年120万円、成長投資枠は年240万円まで、非課税で投資できます。非課税で保有できる期間に期限はなく、生涯の上限は1人1,800万円です。世界の株式に分散した投資信託は、少額から買える選択肢の一つです。元本は保証されないので、値下がりしても続けられる金額で検討してください。

3. PB黒字化や金利の動きが預金や投資に及ぼす影響を確認する

ニュースを見るたびに、政府がPB黒字化を目指す理由と、日本銀行が金利を動かす理由が、預金や投資にどう関わるかを確認しましょう。その積み重ねで、数字の意味が読み取りやすくなります。

現金と預金の購買力を計算してみる

PB黒字化の見通しが出ても、預金の購買力は物価上昇率と預金金利の差で決まります。手元の現金・預金が10年後にどれだけの購買力を持つか、一度計算してみてはいかがでしょうか。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次