同じ会社が、片方のAIでは大手と並び、片方では埋もれる

自社がAIの回答にどれくらい登場するかを測ると、ChatGPTとGeminiで結果が食い違うことがあります。私が関わったケースでは、同じ会社の同じサイトで、片方が20パーセント台、片方が5パーセント台でした。この差は、会社への評価が割れているのではありません。AIによって、自社を見ている範囲が違うだけです。だから高いほうの数値が実力に近く、低いほうは到達していないことを示しています。

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2つの数値が食い違ったとき、どちらを信じるか

AI検索への対応を始めると、たいてい最初に現状を測ります。自社が答えとして挙がりそうな質問を用意して、各AIに投げて、名前が出るかを記録する。手順としては単純です。

困るのはその後です。ChatGPTでは競合ばかりが並ぶのに、Geminiでは自社が最初に挙がる。あるいはその逆。同じ会社、同じサイト、同じ時期の測定なのに、結果が噛み合いません。

社内に報告するときも困ります。低いほうを出せば危機感は伝わりますが、対策の必要性を過大に見せている気がする。高いほうを出せば安心されますが、実態と違う気もする。どちらが本当の実力なのかが分からないまま、判断が止まります。

この疑問を調べると、答えは比較的すぐ見つかります。参照している検索基盤が違うから、というものです。ChatGPTの検索はマイクロソフトのBingを土台にしていて、GeminiはGoogle検索と一体になっている。土台が違うので、拾われるページも変わる。

説明としては正しいと思います。ただ、これだけでは足りません。

基盤の違いだけでは、個社差を説明できない

基盤が違うという説明は、すべての企業に等しく当てはまります。どの会社にとってもChatGPTはBingを見ていて、GeminiはGoogleを見ている。

ところが、差の出方は企業によって違います。ある会社はGeminiで高くChatGPTで低い。別の会社は両方で高い。また別の会社は両方で低い。同じ基盤を見ているのに、結果が分かれます。

つまり基盤の違いは、差が生まれる舞台の説明であって、差の大きさの説明ではありません。読者が知りたいのは、なぜ自分の会社でこの差が出ているのか、です。

もうひとつ、基盤の違いという説明には、処方が付いてきます。ChatGPTで出ないならBing向けの対策を、Geminiで出ないならGoogle向けの対策を、という形です。足りないほうに施策を足す発想です。

ここに引っかかりました。片方で高い数値が出ているなら、それは対策が足りていないという状態とは違うのではないか。同じサイト、同じコンテンツで、片方は評価されているわけです。

実際に測ると、何が起きていたか

数値を出します。ある企業について、購入検討者が投げそうな質問を数十問用意し、複数のAIで測定した結果です。業種は伏せますが、地域に複数の拠点を持つ、中堅規模の事業者だと考えてください。

その企業の言及率は、Geminiで20.1パーセント、ChatGPTで5.6パーセントでした。4倍近い開きです。

同時に、同業の大手数社も測っています。ここが興味深いところでした。

ChatGPTでは、業界最大手が51.5パーセント、2位が45.2パーセント、3位が39.4パーセントと並び、当該企業の5.6パーセントとの間に大きな段差がありました。順当な結果に見えます。

ところがGeminiでは、様子が違いました。最大手が20.2パーセント、別の大手が11.7パーセント。そして当該企業が20.1パーセントです。最大手とほぼ同じ、他の大手より上でした。

同じ会社、同じ期間、同じ質問群です。片方のAIでは大手の4分の1以下、もう片方では大手と並ぶ。この結果を最初に見たときは、測定の誤りを疑いました。

最初に立てた仮説は、どれも外れた

なぜGeminiだけ高いのか。仮説はいくつも浮かびました。

最初に考えたのは、動画です。その企業は数年にわたって動画を発信していて、本数が積み上がっていました。動画プラットフォームはGoogleの傘下なので、Geminiがそれを見ているのではないか。

次に考えたのが、地図情報です。各拠点の店舗情報が登録されていて、口コミも溜まっていました。地域を含む質問なら、そこが参照されているのではないか。

どちらも、検証すると根拠が薄いことが分かりました。測定に使った質問は「おすすめの会社を教えて」というテキストの質問です。この種の質問に対して、動画を根拠に会社名を挙げる経路は細い。店舗情報も同様で、地図を返す場面では効きますが、推薦文を組み立てる場面での寄与は見えませんでした。実際、引用元の分析でも、これらが根拠として挙がった例はありませんでした。

仮説が外れたことで、見方を変える必要が出てきました。特定の施策が効いているのではないとしたら、何が違うのか。

差の正体は、視野の広さだった

ここからは私の解釈です。検証された仕組みの説明ではないので、そのつもりで読んでください。

答えを組み立てるとき、2つのAIは違う姿勢を取っています。

Geminiは、Googleが長い時間をかけて蓄積してきた、その企業に関する情報の上に立っています。関連会社のサイト、店舗の情報、動画、外部からの言及、公的な登録情報。個別の施策が効いているというより、蓄積の総体があります。だから「この業界でおすすめの会社は」と聞かれたとき、その蓄積の中から候補を挙げられる。

ChatGPTの検索は、質問を受けてから検索して、上位に出た数ページを読んで答えを作ります。参照するのは、その瞬間に開いた窓の中だけです。窓に入っていなければ、どれだけ実体があっても存在しないことになります。

つまり、片方は広く見ていて、片方は狭く見ている。同じ会社を見ていても、見えている範囲が違います。

この見方に立つと、数値の説明がつきます。Geminiで20パーセント出るのは、Googleがその企業を十分に知っているからです。ChatGPTで5パーセントなのは、Bing側の情報が薄く、検索結果の窓に入ってこないからです。

そして大手が強い理由も説明がつきます。大手は、ランキング記事や業界統計や比較サイトといった、検索上位に常駐する面に名前があります。窓が狭くても、その窓の中に必ずいる。だからChatGPTで50パーセントを超えます。逆にGeminiでは、窓の狭さによる有利が働かないので、実体の差がそのまま出る。当該企業が大手と並んだのは、そのためだと考えています。

高いほうの数値が、実力を示している

この解釈が正しければ、読み方が変わります。

低いほうの数値は、評価が低いことを意味しません。到達していないことを意味します。

同じサイト、同じコンテンツ、同じ実績で、片方のAIは高く評価しているわけです。中身が足りないのであれば、両方で低くなるはずです。片方だけ低いということは、中身ではなく届き方の問題だということになります。

これは、社内で報告するときの材料としても効きます。5パーセントという数字だけを見せると、何かが決定的に足りないように見えます。しかし、もう片方で20パーセント出ているという事実を並べると、意味が変わります。実力がインデックスに正しく載れば、この水準まで行けるという実証が、自社の手元にある状態です。

目標を立てるときも同じです。片方の数値がすでに20パーセントなら、もう片方で15パーセントを目指すのは、未知への挑戦ではありません。実証済みの水準への回復です。無理な目標かどうかを判断する材料が、自分たちのデータの中にあります。

2つの数値を組み合わせて読む

差そのものを診断材料として使います。2つの数値の組み合わせは、4つのパターンに分かれます。

**両方とも低い場合。** 中身か、外部からの評価が足りていません。どちらのAIから見ても、答えとして挙げる根拠が見つからない状態です。この場合は、まず自社サイトに、質問への答えになる事実が書かれているかを確認します。理念や沿革ではなく、対応できる範囲、実績の数値、具体的な手順といった、引用できる中身です。

**Geminiで高く、ChatGPTで低い場合。** 私が見たケースがこれでした。実体はあるが、Bing側に届いていません。着手すべきは中身ではなく、届け方です。サイトが静的なHTMLで読める状態になっているか、クローラーを拒否していないか、Bing側の管理ツールに登録して更新を通知しているか。マイクロソフトは公式のガイドラインで、重要なコンテンツはJavaScriptに依存せず静的HTMLで提供するよう記載しています。ここが塞がっていると、何を書いても届きません。

**ChatGPTで高く、Geminiで低い場合。** 逆のパターンです。検索上位に出る面には名前があるが、Googleの蓄積が薄い。比較記事や外部メディアでは言及されているのに、自社サイトの情報が整理されていない場合に起こり得ます。この場合は、自社サイトの情報の充実と、関連する情報の一貫性を整えることが先になります。

**両方とも高い場合。** ここは維持の話になります。更新を止めないこと、情報が古くならないようにすること。

自分の会社がどの象限にいるかを確かめるには、両方で測る必要があります。片方だけ測っていると、この診断ができません。手間は倍になりますが、着手点を間違える損失のほうが大きいと思います。

大手との差も、同じ読み方ができる

競合との比較にも、同じ見方を当てはめられます。

大手が圧倒的に強く見えるクエリと、そうでないクエリがあります。「おすすめの会社を教えて」という汎用的な聞き方では、大手が有利です。窓の中に常駐しているからです。一方、地域や条件を含む具体的な聞き方では、その有利さが弱まります。窓の中身が変わるからです。

私が見たケースでも、業界全体を対象にした質問では大手が5割を超えていましたが、地域や条件を絞った質問では顔ぶれが変わっていました。

ここから導けるのは、戦う場所の選択です。汎用的なクエリで大手の占有を崩すのは、短期では難しい。しかし、地域や条件を含むクエリなら、そもそも大手の有利が効きません。測定に使う質問群を、汎用的なものだけで組むと、この戦える場所が見えなくなります。

測定の設計と戦略の設計は、実は同じことです。どこで測るかを決めることは、どこで戦うかを決めることでもあります。

よくある疑問

Q:どちらのAIの数値を、社内の目標として使うべきでしょうか。

A:両方を並べて報告することをおすすめします。片方だけだと、実力なのか到達の問題なのかが判別できません。目標として追いかけるのは、低いほうの数値でよいと思います。改善の余地が大きい場所だからです。

Q:測定するたびに数値が変わってしまいます。

A:AIの回答には揺らぎがあるので、1回の結果では判断できません。同じ質問を複数回投げて平均を取り、月次で同じ条件で測ります。条件とは、使う質問のリスト、試行の回数、モデルの指定、ログイン状態などです。ここを固定しないと、前月との比較ができなくなります。

Q:Geminiで高いなら、ChatGPT対策は後回しでよいでしょうか。

A:逆だと考えています。Geminiで高い数値が出ているなら、その面はすでに機能しています。伸びしろがあるのは低いほうです。しかも、そこで必要なのは新しいコンテンツを作ることではなく、既にあるものを届く形にすることなので、費用も抑えられます。

Q:この差は、時間が経てば自然に埋まりますか。

A:埋まる保証はありません。届いていない原因が技術的なものであれば、放置しても解消しません。むしろ、原因を特定して手を打てば、比較的短期間で動く部分でもあります。

数値の低さは、必ずしも実力の低さではない

AI検索での自社の見え方を測ると、思ったより低い数字が出て、焦ることがあります。競合が並んでいて自社が出てこない画面を見ると、何か決定的に遅れているように感じます。

ただ、その数字が何を測っているのかは、一度立ち止まって考える価値があります。測っているのは、そのAIの視野の中に自社が入っているかどうかです。実力の評価とは限りません。

複数のAIで測って結果が割れたなら、それは困った事態ではなく、診断が一段進んだということです。高いほうが実力の目安になり、低いほうが到達の課題を示している。片方だけ測っていたら、この読み分けはできませんでした。

自社の数値を並べてみて、どの象限にいるかを確かめてみてください。低いほうの数字の意味が変われば、次に何をするかも変わってきます。

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