ブラストビートが叩きやすいスティックは、太さ15mm前後、長さ405mm前後の無塗装です。ブラストビートで知られるドラマー2人のシグネチャーモデルを調べると、どちらも15mm前後×405mm前後でした。
しかし、いま14mmを使っていて叩けないなら、15mmに替えても叩けるようにはなりません。速さを決めているのはスティックではないからです。
15mmに替えて変わるものと変わらないもの、無塗装で買える15mmの品名、替えるかどうかを決める条件の3つを並べます。
ブラストビートを叩く人のスティックは、15mm前後×405mm前後にある
実際に叩いている人の寸法から見ると、2人とも5Bの近くにいます。NileのGeorge Kolliasのシグネチャー、Vic Firth SGKは、直径0.585インチ(約14.9mm)、長さ16インチ(約406mm)です。Derek RoddyのシグネチャーはVaterから出ています。長さ16 1/4インチ(約413mm)、握る部分の直径は0.590インチ(約15.0mm)です。
規格で言うと、Vic Firthの5Aは直径0.565インチ(14.4mm)、5Bは0.595インチ(15.1mm)で、どちらも長さ16インチです。2Bは0.63インチ(16.0mm)で長さ16.25インチです。2人のモデルは、5Aと5Bのあいだから5Bにかけて収まっていて、2Bまでは行っていません。5Bは太めの部類ですが、いちばん太い規格ではありません。
パワーに頼って大きな音を出そうとすると、ブラストビートはいつまで経ってもできない
寸法が分かっても、寸法だけで叩けるようにはなりません。ブラストビートができない原因の多くは、腕で振って大きな音を出そうとしていることです。
この記事で言うブラストビートは、両手を同時に落とすものと、右手と左手を交互に落とすものです。スネアの縁を支点にして1往復で2打出すグラビティブラストは、別の叩き方なので扱いません。SlipknotのPeople = Shitでチャイナとスネアを同時に叩く場面は、両手同時のほうです。People = Shitは自動判定で122BPMと出ますが、その倍の244BPMで8分を数えると、片手が1秒に約8打になります。1秒8打では、腕を持ち上げて振り下ろす動きは続きません。
私は14mm×400mm弱のスティックと電子ドラムでPeople = Shitのブラストを試して、腕が疲れて続きませんでした。原因は、そこそこ大きい音を出そうとして腕で振っていたことで、太さは関係ありませんでした。
速い人は、スティックを振っていません。親指と人差し指で挟んだ1点を軸にして、シーソーのようにスティックが回ります。打面から跳ね返ってきたスティックを残りの3本の指で受けて、次の1打で軽く押し返します。手首は数センチしか動かず、腕は動きません。バスケットボールのドリブルと同じで、球を毎回持ち上げてはいません。Derek RoddyはDrumeoの解説で、スネア側の手はグリップを緩めて跳ね返りを最大限に使い、力はほぼ手首から出す、と説明しています。
1打の音が小さくなるのは、正常である
跳ね返りで低く叩くと音は小さくなりますが、小さくなるのは正常で、上手い人も同じです。音の大きさは、スティックを上げる高さで決まります。1秒に8打だと、チップを高く上げる時間がないので、1打の音は普通のバックビートより必ず小さくなります。Derek Roddyは同じ解説で、高速域では人差し指をスティックの上に置いて、わざと音量を下げて粒をはっきりさせる、と言っています。
小さい1打は、スティック以外で補います。スネアのヘッドを高く張って抜けをよくします。ライブや録音では、スネアにトリガーを付けたりサンプルを重ねたりして、1打ごとの音量差を揃えます。エクストリーム系のミックスの解説でも、ブラストのスネアはサンプルを重ねる前提で書かれています。電子ドラムなら、モジュールのスネアの感度を上げて、小さい打撃でも大きい音が出るようにします。普通の曲で強弱が出なくなるので、ブラスト用のキットを別に作って切り替えます。
練習で音を大きくしようとした瞬間に、腕が入ります。家で叩いて音が小さいと感じるなら、音が小さいのは合っているので、音量は追わないでください。
15mmに替えて変わるのは、音の大きさと折れにくさ
速さは跳ね返りで決まるとして、太さが効く場所は別にあります。同じ高さから落としたときの音の大きさと、折れにくさです。Sweetwaterのスティック選びのガイドは太くて重いスティックは音量と耐久性が上がると書き、ヤマハの楽器解体全書も太ければ太いほど音は重くて大きくなると書いています。ただし14.4mmと15.1mmでは、質量の差は1割ほどです。5Aから5Bに替えただけでは、音量の差は小さいままです。
太いほどいい、という話にもなりません。重いほど加速に時間がかかるので、速さだけを見れば軽いほうが有利です。KolliasとRoddyのモデルが2Bまで行かず5B付近に収まっているのは、速さと音量と耐久の釣り合いを5B付近で取っているからです。
速い人ほど細いスティックを使っている、という話もあります。どちらも本当です。シングルストロークの速さで知られるドラマーには14mm台のモデルがあり、速さだけを取るなら軽くて細いほうが有利です。ブラストビートは1秒に8打でスネアの縁やチャイナに当て続けるので、音量と耐久のぶんだけ太い側に寄って、15mm前後に落ち着いています。太さを速さの解決に使わない、という点はどちらも同じです。
無塗装の15mmは、Vater 5B NudeかPearl 106NH
汗で滑る人は、ラッカーを塗っていない無塗装(メーカーの呼び方ではナチュラル)のモデルを選びます。15mmで無塗装なら、次の2本です。
Vater 5B Nudeは、直径0.605インチ(約15.4mm)、長さ16インチ、アコーンチップです。ラッカーを塗らずにサンディングで仕上げてあり、メーカーは手の汗で滑る人向けと書いています。
Pearl 106NHは、15mm×405mm、ラウンドチップ、ショートテーパーで、税込1,980円です。こちらも汗をかく人向けとメーカーが書いています。ショートテーパーは先端側が太く重いので、パワーは出ますが、跳ね返りの戻りはロングテーパーより鈍くなります。
15mmから外れますが、TAMA Oak Lab Fast Blast(OL-FA)も候補になります。14mm×406mm、日本産オーク、大きめのボールチップ、紙やすりで仕上げた無塗装です。名前のとおり、速さと音量の両立を狙ったモデルです。TAMAは、オークの重さで14mmでも音量が出ると書いています。
替えるのは、汗で滑る、先が欠ける、音が足りない、の3つのどれかがあるとき
品名が分かったら、替えるかどうかを3つで決めます。汗で滑る。リムショットやチャイナでスティックの先が欠ける。同じ高さから落として音が足りない。どれか1つでもあれば、15mmの無塗装に替えます。叩けない、腕が疲れる、が理由なら替えません。太さでは直らないからです。
替えない場合は、いまのスティックが跳ねているかを見ます。スネアの上でスティックを親指と人差し指で軽く挟んで、そのまま落とします。勝手に2回か3回跳ねるなら、道具と打面に問題はありません。跳ねないように叩いているのは手です。跳ねないなら、ヘッドの張りが緩いか、親指と人差し指で挟めていません。
跳ねているなら、叩き方を直します。244BPMで腕が疲れないところまでテンポを落として、疲れないテンポから5ずつ上げます。いまの状態で244を叩き続けると、腕で振る癖が固まります。15mmを試すのは、低い高さで腕が疲れずに叩けるようになった後です。先に叩き方を直せば、太くしたときに音量や耐久が変わったかどうかを、自分で判別できます。
いま14mmで叩けないなら、次のスティックを買う前に、汗で滑るか、先が欠けるか、音が足りないか、の3つのどれに当たるかを一度確かめてみてはいかがでしょうか。







