おとり広告の罰則。不動産公正取引協議会は、事務所に立ち入って売る意思を確かめる

おとり広告の罰則は3つです。不動産公正取引協議会の違約金。宅地建物取引業法の監督処分と罰則。景品表示法の措置命令。

しかし、売る意思はあった、と言われた場合はどうなるのでしょうか。掲載を続けていた理由を聞かれて、売るつもりはあったと答えたら、そこで話は終わるのでしょうか。

終わりません。意思があったかどうかは、自己申告では決まらないからです。この記事は、意思がないと判断されるパターンを並べます。

目次

罰則は3つある

1つ目は、不動産公正取引協議会の違約金です。表示規約第27条で、警告のうえ50万円以下の違約金。厳重な場合は500万円以下の違約金と、資格停止や除名処分。第27条の3では、事業者名と違反の内容を公表することもできます。

2つ目は、宅地建物取引業法です。第32条の誇大広告等の禁止に触れると、指示処分、業務停止処分、免許取消処分。罰則は6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で、法人にも罰金が科されます。

3つ目は、景品表示法です。第5条第3号にもとづく昭和55年公正取引委員会告示第14号で、消費者庁長官の措置命令につながります。

だます意図は、条件に入っていない

3つとも、だます意図があったかどうかを条件にしていません。線を引いているのは不動産の表示に関する公正競争規約の第21条で、禁じているのは3つの表示です。物件が存在しないため実際には取引することができない表示。物件は存在するが実際には取引の対象となり得ない表示。物件は存在するが実際には取引する意思がない表示。

読み直すと、条件はすべて物件の状態で書かれています。だました、誘導した、といった気持ちの話が一つも出てきません。だから「そのつもりはなかった」は、条件を外す材料になりません。

首都圏不動産公正取引協議会は、特に多いのは2つ目だと書いています。契約済みで取引することができなくなったのに、広告が残っている物件です。悪意で残したのか、消し忘れたのかを、規約は区別していません。

「売る意思はあった」は、自己申告では通らない

3つのうち、3つ目だけは条件が事業者の側にあります。だから、売る意思はあったと言えば済むように見えます。

済みません。表示規約第26条で、不動産公正取引協議会は違反の疑いがある事実について、事業者や参考人を招致して資料の提出を求め、事務所に立ち入ることができます。

確かめられるのは、資料に残った動きです。問い合わせの記録、案内の記録、成約の日付、掲載を落とした日付。売る意思があったなら、その資料に動いた跡が残っているはずです。

意思がないと見られるのは、こんなパターン

最初の3つは、条文の言葉とそのまま重なります。物件が存在しないなら1つ目。存在するけれど成約済みや売り止めで動かせないなら2つ目。存在して動かせるけれど、集客のために載せているだけなら3つ目です。

残りは、3つ目に当たるかどうかを外から見るときの材料になります。他社からの問い合わせを断り続けている。内見の調整を理由にして、実際には見せていない。相場から離れた価格のまま、値下げも取り下げもしない。その物件の反響が、ほとんど別の物件の契約になっている。掲載期間が長いのに、成約も価格変更も起きていない。

この5つは規約の条文に書かれていないので、解釈です。ただ、どれも資料に残る形をしています。

違約金を課された会社は、4回目だった

罰則は、1回で終わるとも限りません。2026年3月度の措置に、埼玉県所沢市の会社が出てきます。賃貸共同住宅10物件について違約金を課されました。おとり広告に当たるのは5件で、契約済みになった後も削除せず、長いもので3か月以上、短いものでも1か月間、掲載を続けていたものです。対象はポータルサイトでした。

この措置には「過去の措置」という項目があります。2013年6月、2016年12月、2022年6月。同じ契約済みのおとり広告で、すでに3回、厳重警告と違約金の措置を受けていました。今回が4回目です。

次の措置を重くするのは、その前の措置です。1回目を作らないことが、いちばん効きます。

ポータル5社は、違反した物件の情報を共有している

2026年3月度の措置で対象になった広告は、ポータルサイトでした。そのポータルの側にも、動く仕組みがあります。

首都圏不動産公正取引協議会には、2012年3月に設置されたポータルサイト広告適正化部会があります。アットホーム、CHINTAI、LIFULL、LINEヤフー、リクルートの5社が入っていて、違反物件の情報を共有し、その結果を年度ごとに公表しています。行政処分を受けた場合の対応も、部会として決めています。

1社のポータルで起きたことは、その1社で終わりません。

今日、掲載中の物件に当てる3つの質問

止められる前に、自分で当てます。掲載中の物件を一覧で開いて、1件ずつ3つを見ます。

1つ目。この物件は、いま契約できるか。成約済みか売り止めなら、その場で掲載を落とします。首都圏不動産公正取引協議会が特に多いと書いているのが、この成約済みの物件です。

2つ目。いま問い合わせが来たら、この物件を案内できるか。案内できない理由があるなら、その理由を書き出します。オーナーが内見を渋っているなら、いったん掲載を落として、そのうえで交渉します。

3つ目。直近1か月で、この物件に問い合わせが何件来て、そのうち何件がこの物件の契約になったか。10件来て0件なら、その物件は集客の入口として動いていて、契約は別の物件で起きています。第26条の調査で資料を出すことになったとき、この数字がそのまま出ます。

3つとも、物件情報を管理している画面で見られるはずです。週に1回、決まった曜日に回すのが現実的です。

よくある疑問

3つの質問を回すと、必ず出てくる疑問があります。

Q:成約済みの物件を、消し忘れていただけでも違反になるのでしょうか。

A:なります。表示規約第21条は物件の状態で条件を書いていて、消し忘れたのか意図的に残したのかを分けていません。2026年3月度の措置でも、契約済みの5件が3か月以上残っていたことが、違約金の理由になっています。

売る意思があるかどうかは、資料に残った動きで見られます。今日いちばん重いのは、掲載中の物件を開いて、いま契約できるかどうかを1件ずつ確かめることではないでしょうか。

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