プロジェクトがうまくいかない理由として挙げられるのは、目標が曖昧、見積もりが甘い、連絡が足りない、進捗を追えていない、の4つです。
しかし、いま自分のプロジェクトが4つのどれで止まっているのかは、一覧を読んでも分かりません。どれも当てはまるように見えるからです。
この記事では、一覧を読む前に見る場所を1つ渡します。自分が相手に出した指摘です。
うまくいかない理由は、自分が相手に出している指摘に出ている
原因の一覧を眺める前に、自分が相手に送った直近のコメントを開いてください。相手はチームのメンバーでも、外注先でも、AIエージェントでも構いません。そこに、プロジェクトがいまどの状態にあるかが出ています。
指摘には2種類あります。「ここが違う」と「次はこうしよう」です。前者は、出てきたものの外れた箇所を指しています。後者は、次に何をするかを言っています。
自分のコメントが「ここが違う」ばかりなら、プロジェクトはまだ直す段階にいます。「次はこうしよう」が増えてきたら、良くする段階に入っています。どちらにいるかは、コメントを読み返せばその場で分かります。
「ここが違う」ばかりの間は、ミスの原因が自分にもまだ見えていない
外れた箇所を1つずつ指すしかできないのは、外れた箇所が同じ原因から出ていることに、自分がまだ気づいていないからです。相手のミスが多いことは、その結果として見えているだけです。
たとえば、出てきた資料の数字が違う、順番が違う、言い回しが違う、と3つ指摘したとします。3つとも別のミスに見えますが、元をたどると、相手に渡した前提が1つ抜けていた、ということがよくあります。その前提が見えるまでは、指摘は1つずつ出すしかありません。
つまり、相手が何を分かっていないのかが、自分にもまだ分かっていない状態です。
ミスの原因が見えると、指摘は「次はこうしよう」に変わる
外れた箇所に共通の原因が見えた瞬間から、コメントの1文目が「直して」から「次は」に変わります。原因が分かれば、直す箇所を並べる代わりに、次に何をすればいいかを言えるからです。
上の例なら、「数字を直して」「順番を直して」「言い回しを直して」の3つが、「次からは、この前提を先に書いてから作って」の1つになります。指摘の数が減り、種類が変わります。
「次はこうしよう」の指摘が効くことは、文章の添削で数えられています。Hattie ら(Frontiers in Education、2021年)が3,204人の学生の文章に付いたコメントを種類ごとに数えたところ、初稿から最終稿への伸びを予測したのは「次はこうしよう」型のコメントでした。測ったのは学生の文章です。プロジェクトの指摘とは場面が違いますが、指摘の種類で伸び方が変わることは、ここから言えます。
「直して」を繰り返している間は、新しいことが進まないうえに、質も落ちる
相手のミスを直させている時間は、新しいことを進める時間には使えません。プロジェクトに使える時間とエネルギーは1つで、直す側に使った分だけ、良くする側に回らなくなります。Boehm と Basili(IEEE Computer、2001年1月)は、ソフトウェア開発のプロジェクトが工数の40〜50%を、避けられたはずの手戻りに使っていると書いています。半分近くが、直す仕事に消えています。
しかも、直しを重ねたものは、質が落ちます。原因が見えないまま外れた箇所だけを直させると、直した箇所の隣で別の箇所が外れます。それをまた直させる。出来上がるのは、つぎはぎになった成果物です。「ここが違う」を出し続けている間は、新しいことが進まないだけで済みません。いま手元にあるものも、良くなっていきません。
自分の指摘を、2つに分けて数える
直近1週間に自分が相手へ送ったコメントを全部並べて、1つずつ「直して」か「次は」かに振り分けます。チャットでも、メールでも、AIエージェントへの指示でも同じです。
「この数字が違う」「ここは前に言った」「フォーマットが崩れている」は「直して」です。「次からは、この順で作って」「この前提を先に確かめてから始めて」は「次は」です。1つのコメントに両方入っているときは、1文目で決めます。
数えたら、「直して」が「次は」より多い間は、良くなるための仕事を相手に頼みません。頼んでも、直す仕事に時間を取られて進まないからです。「次は」が「直して」を上回った週から、良くなるための仕事を1つ頼みます。
この数え方は、相手の側を測っていません。測っているのは、ミスの原因が自分に見えているかどうかです。だから、相手を替えても、同じ数え方がそのまま使えます。
相手がAIエージェントでも、同じことが起きた
相手が人でもAIでも、自分のコメントには同じ形で出てきます。私がAIエージェントに記事を作らせているプロジェクトでは、コメントが「直して」だけだった週は、新しい工程が1つも進みませんでした。毎日、出てきた記事の外れた箇所を指摘して、直させて、また次の外れを指摘する。それで1日が終わっていました。
直させている間、私は「ミスをなくしてから次へ進もう」と考えていました。それが間違いでした。ミスがゼロになる週は来ないからです。変わったのは、外れた箇所が同じ原因から出ていると私に見えたときです。そこからコメントが「次はこうして」に変わり、その週から新しい工程を足せるようになりました。
部下でも外注先でも同じです。指摘を出す側にミスの原因が見えていなければ、コメントは「直して」ばかりになります。相手が変わっても、自分の側の状態は同じ形で出てきます。
「次は」が「直して」より多くなった週に、良くなるための仕事を頼む
相手のミスがゼロになる日を待っていると、その日は来ません。待つ代わりに、自分のコメントを数えてください。「次は」が「直して」を上回った週が、良くなるための仕事を頼める週です。相手のミスの数を見るより、自分のコメントの種類を数えるほうが、早く、確かに分かります。
今週送ったコメントを、まず1週間分だけ数えてみてはいかがでしょうか。







