側面をクローズで叩くと何かちょっとタイトな、タイトじゃない、流れちゃう。自分の電子ドラムのハイハットの音を、私はそう説明していました。それがすごい気持ち悪くて、刻んでいる間じゅう気になります。
この症状に出てくる答えは、だいたい決まっています。モジュールのオフセット設定を取り直す。音色を作り直す。ペダルの中のゴムが硬くなっていないかを疑う。どれも実際に効くことがありますが、全部やっても流れる感じだけが残ることがあります。
この記事が渡すのは、打面の高さと、そこで変わる打点です。クローズが締まらないのは、ペダルの踏み込みが足りないからではなく、スティックがハイハットのどこに当たっているか、という話です。
ボウとエッジは、別のトリガーとして音源へ送られている
電子ドラムのハイハットは、1枚のパッドの中に、当たる場所ごとの検出を持っています。2026年8月時点のローランドの製品ページでは、VH-10のトリガーは2つで、ボウとエッジと書かれています。ボウが上面のことで、エッジが外周のことです。
生のハイハットなら、当たる場所が少し動けば音色も少しだけ動きます。電子ドラムは違って、上面に当たったか外周に当たったかで、音源へ届く信号そのものが切り替わります。だから打点が数ミリ動いただけで、別の音が鳴ります。
同じシリーズでも世代で分解能が違います。同じく2026年8月時点の製品ページでは、VH-14Dは開閉の位置も打点の位置も多段階で検出すると書かれていますが、VH-10は打点が2つに分かれるところまでです。自分のパッドがどちらの側かは、先に確かめておくと話が早くなります。
そのうえで、最初にやることが一つあります。上面と外周を一度ずつ叩いて、違う音が鳴るかを聴いてみてください。エッジ側に何の音が割り当てられているかはキットとプリセット次第で、仕様が保証しているのは、トリガーが2つあることまでです。
打面が手より上にあると、スティックはエッジにしか届かない
打面が自分の手より高い位置にあると、上から入れません。腕を上げて、前腕をひねって、水平に差し込む形になります。この構えでスティックが届くのは、手前の外周だけです。
指が使えなくなる、という言い方では、体のどこの話か決まりません。前腕をひねると手のひらがスティックの真上に来る、と言い直すと決まります。手のひらが真上に来ると指はスティックの下へ回り込むので、下から支えるだけになって、押し込む動きが入りません。
原因を奥行きだと考えたくなります。ハイハットはスネアの向こう側にあるので、手が届くのは一番手前の外周だけに見えるからです。ですが幾何を詰め直すと、ボウに届くかどうかを決めているのはほとんど高さで、奥行きは二次的でした。
下げればタイトな音がなるでしょ? 上を叩けるから。順番としては、これが先でした。機材の側から入ると設定と部品を一つずつ潰していくことになりますが、打点から入れば、確かめるのは自分の手だけで済みます。
ここまでの幾何は、仕様書にも研究にも載っていません。スティックの入射角から出した推論で、私が自分の身体で確かめた範囲の話です。
ローランドが「ハイハットの高さ調整」と呼んでいるのは、センサーとの3mmの隙間である
2026年8月時点で公開されているローランドのトラブルシューティングのページには、ハイハットが思うように鳴らないときの対処が並んでいます。オフセット設定、回り止めクランプ、Rolandの文字を奥側に向ける向き調整、トップとボトムの間隔。その中に、ハイハットの高さ調整という項目があります。
指しているのは、ハイハット下側中心の成型部品と、センサー中心部先端との間隔です。目安は3mm程度と書かれていて、演奏者から見た、床からの高さのことではありません。
だから高さで調べてこの説明にたどり着いた人は、まったく別の意味の高さを読んで帰ることになります。両方とも必要です。3mmはセンサーが踏み込みを拾うための隙間で、床からの高さはスティックがどこに当たるかを決める寸法なので、片方はもう片方の代わりになりません。
前腕を水平にして振り下ろし、チップがどこに落ちるかを見る
いまの高さが高い側かどうかは、座ったまま確かめられます。いつもの構えで、前腕を水平にしたままスティックを振り下ろしてください。チップが打面のどこに落ちるかを見て、外周に落ちるなら、打面は高い側にあります。
写真では測れません。カメラが斜め上から撮ると、奥行きが高さに化けて写るからです。測るのは床からの高さを2つで、スネアの打面の床からの高さと、ハイハットの打面の床からの高さ。引き算した差が、いまの位置です。
差が10cmから15cmあるなら、5cmから8cm落とすところから試してみてください。ただしこの数字は測定値ではなく、太ももの高さがスネアの高さで、私の身長は170cmなんだよ、という前提からの逆算です。身長と椅子の高さで動きます。持って帰るのは数字ではなく、床から2つ測って引き算するという測り方のほうです。
椅子を上げれば、ハイハットを動かさずに同じ差が作れます。ただ、この手が使えない人がいます。ツーバスでしょ? だからハイハットを調整する。今のバランスが一番良いんよ。両足がペダルに乗っている構成では、座面の高さと角度が踏み込みに直結しているので、椅子を動かすと今度は足のほうが崩れます。動かすのはハイハットの側です。
下げる前に、スネアとタムに当たらないかを確かめる
タムが薄いんだよ電子ドラムだから、まだ下げられるよ。実際そのとおりでした。下限を胴の深さで見積もると、そこで外します。電子ドラムのパッドは浅いので、生ドラムの胴のようには場所を取りません。止まる位置を決めているのは、リムの高さのほうです。
確かめ方は一つです。下げたあとに、いつも叩いているフレーズを一度そのまま通してください。スティックがリムに当たる音が混じったら、そこが下限です。混じらなければ、まだ下げられます。
下げすぎると、今度はエッジに振り出せなくなる
低くすると、大きく振りかぶってエッジを鳴らすストロークが振り出しにくくなります。手首から先で届く範囲が広がる代わりに、腕を落とす距離が短くなるからです。
ただ、鳴らせなくなるわけではありません。エッジを鳴らすときは鳴らせばいい話で、そのギリギリを行く感じだよ、というあたりに置くのが実際的です。失うのは大振りのアクセントだけなので、締まったクローズを取るなら妥当な引き換えだと思います。
この説明が効かないキットもあります。上面と外周を叩き比べても、音がほとんど変わらないキットです。その場合は、高さを触っても音は締まりません。仕様が保証しているのはトリガーが2つあることまでで、そこに何の音が乗っているかはキットの側の話です。先に叩き比べてほしいのは、そのためです。
高さを変えると、肩と手首の角度も変わります。下げたあとに肩や手首が痛むなら、その高さは体に合っていないので、戻して少しずつ探し直してください。痛みが続く場合は、そのまま叩き続けずに専門家に相談することをおすすめします。
打面の高さが決まると、左足の仕事は開き具合だけになる
踏み込みの深さで音色まで作ろうとすると、左足に2つの仕事をさせることになります。開き具合を作る仕事と、音を締める仕事です。片方の足で2つを同時に狙うと、どちらも中途半端になります。
高さで打点が決まると、左足は開き具合だけを担当すればよくなります。クローズは踏み切る。少しだけ開けたいときは、その分だけ戻す。音色の責任が手の側に移るので、足の仕事が1つに減ります。
オフセットをもう一度取り直す前に、床からの高さを2つ測って引き算してみることをおすすめします。ハイハットを5cm下げるのに工具は要りませんし、気に入らなければ元へ戻すだけです。動かす前と後で同じ8小節を叩いて、流れる感じが減るかどうかを聴き比べてみてください。



