2026年8月6日、美容外科医の高須幹弥さんのYouTubeチャンネルで、実業家の堀大輔さんとの対談が公開されました。堀さんは一般社団法人日本ショートスリーパー育成協会の代表理事です。17年前から1日30分程度の睡眠を続けていると公言しています。対談で語気が強くなった場面が切り抜かれ、SNSで広がりました。
書き込みは1か月近くたっても止まっていません。8月26日には、堀さんが法的措置を含めて対応すると告知しています。なぜこれほど多くの人が叩き続けるのか。学術的に言われる誹謗中傷する人の特徴は、ストレスがたまっている、自己肯定感が低い、匿名だから気が大きくなる根は小心者、といったものです。
ここで見るのは、書き込んだ人はなぜ叩けるのか?叩いてよいという理由付けはどこから来ているのかです。堀さんが1日30分の睡眠を証明してもこれらの書き込みは止まらないでしょう。その理由も考察します。
叩く人の性質として並ぶのは、ストレス過多な日常と自己肯定感の低さである
学術的に叩く人の心理として挙がるのは、ストレス過多な日常、他人を貶めて得る優越感、自信のなさ、匿名で気が大きくなる小心者な性格です。叩く人の心理を説明した学術論文は、ほぼこの形になっています。
4つとも、誹謗中傷する人の内側に理由を置いています。その人の性質がそうなっているから書く、という説明です。ところが、誹謗中傷してよいという理由は、外から渡されることが多いのです。
書き込む動機は正義感で、どの炎上でも60から70パーセントを占める
では、書き込む人は何のつもりで書いているのでしょうか。
正義感です。
山口真一さんが2017年に発表した「炎上に書き込む動機の実証分析」(InfoCom Review 69号)に、その数字があります。書き込む動機として正義感を挙げた人は、どの炎上でも60から70パーセント程度を占めます。多くの人は誹謗中傷を書いているとは気付いていない、とも書かれています。
悪いことをしているつもりがないので、本人の中に止める理由がありません。ここが、憂さ晴らしとして書いている場合との違いです。
叩いてよいというお墨付きは、外から与えられる
正義感は、ひとりでには立ちません。叩いてよいという形は、外から与えられます。
対談で高須さんは「僕はいまだに、堀さんが1日30分睡眠を何年も続けてらっしゃるっていうのを、100%信じてないんですよね」と述べ、医師として否定すべきだという立場を取りました。睡眠は健康に直結する話です。医学の側から危険だと言われた時点で、書き込む人には健康のために言っているという形ができます。
8時間眠るという模範から外れていることも、同じ働きをします。模範から外れている、専門家が危ないと言っている、社会に悪い。この3つがそろうと、誹謗中傷をして良い理由を作り上げるパーソナリティを持つ人がいます。
高須さんは、叩けとは言っていません。医師が医学の立場から見解を述べることと、それを持ち出して個人を責め続けることは、別のことです。
1日30分眠っていると証明できても、叩く人は叩く
では、堀さんが1日30分の睡眠を証明したら、書き込みは止まるのでしょうか。
止まりません。証明が潰せるのは、理由を1つだけです。お墨付きは睡眠時間の外にあるので、そのまま残ります。
すでに起きた例があります。芸人のスマイリーキクチさんは、1999年春ごろから、殺人事件の犯人だという嘘の書き込みを受け続けました。所属事務所は2000年に否定し、2002年には公式サイトでも否定しています。それでも書き込みは止まらず、「やってない証拠を出せ」「火のない所に煙は立たない」と返されました。2008年から2009年の捜査で身元が特定されたのは1,200人から1,300人以上で、19人が検挙されています。職業は大手企業の社員から左官業まで、ばらばらでした。
事実は早い段階で示されています。それでも書き込みは、2008年の捜査まで9年続きました。
書いているのは7万人に1人で、同じ人が何度も書いている
最後に、見えている量そのものを見ます。
書いている人の数は、見た目より少ないです。山口真一さんの2014年の調査では、炎上1件に書き込む人は、ネット利用者のおよそ7万人に1人にあたります。そのうえ書き込みの回数には偏りがあります。1回か2回で終える人が大半の一方、同じ炎上に50回以上書く人がいます。画面が埋まっているとき、そこには同じ人が何度も書いた結果が並んでいます。
書き込む人は堀大輔さんを誹謗中傷し、ストレス発散し、正義感を満たし、社会のためを思っているのかもしれません。しかしながら、他人に向けた刃は自分にむかい、自分の自尊心を貶めているといえます。
正義感をふるうこと、人を糾弾するとき、人はドーパミンがでて気持ちがよいものです。この脳内の悪い回路が出来上がってからでは遅いといえます。







