何者かになりたい心理は、何を確かめようとしているのか?

何者かになりたい、と思うとき、ほしいのは肩書きや実績だと思われています。仕事で名前が出ること、SNSで数字が伸びること、誰かに一目置かれることです。

しかし、それが手に入っても、同じ気持ちがまた戻ってきます。集めているものと、ほしかったものが、別のものだからです。この心理がどこで始まるのかから、順にたどります。

目次

何者かになりたい人がほしいのは、捨てられない安心である

何者かになりたい人がほしいのは、特別な立場の先にあるものです。特別になれば誰にも代えがきかず、代えがきかない人は、いなくなれと言われずに済みます。

たとえば、会社で自分にしかできない仕事を持とうとするときです。その仕事があれば、人を減らす話が出たときに、自分の名前は挙がりません。ここで手に入れようとしているのは、名前が挙がらない状態のほうです。

特別さは、安心へ行くための道として選ばれています。ただし、この道を進んでも、安心には着きません。

子どもの頃、成績や我慢や聞き分けを見せたときだけ、親は見てくれた

では、その安心は、どこで足りなくなったのでしょうか。子どもの頃に、見てもらえる条件が、こちらのしたことの側にあった場合です。

テストの点がよかった日は、家の空気が変わります。手のかからない子でいれば、褒められます。兄弟とけんかせずに我慢すれば、いい子だと言われます。どれも、こちらが何かをしたときに、親の反応が返ってきています。

親がそう返していたことを、意図していたとは限りません。仕事が忙しかった、下の子に手がかかっていた、その親自身も同じように育った。理由はいくつも考えられます。それでも、受け取った側に残るのは、何かをしたときに返ってきた、という記憶です。

熱を出して寝ていた日に、どう扱われたかを覚えていない

何かをしたときに返ってくる経験は、年々積み上がります。積み上がらないのは、何もしていないときの経験のほうです。

熱を出して寝ている日、成績が下がった学期、部活を辞めて何もしていなかった夏休み。そういう日に、それでも同じように扱われた記憶があれば、確かめは済んでいます。済んでいなければ、確かめる機会が来ないまま、大人になります。

ここで残るのは、分からない、という状態です。試したことがないので、答えを持っていないだけです。

仕事と恋愛とSNSと見た目が、親の代わりになる

分からないままでいると、人はどこかで確かめようとします。そして、身についている確かめ方は一つだけです。

仕事で成果を上げます。恋人に選ばれます。SNSに投稿して数字を見ます。見た目を整えます。名刺の肩書きを増やします。どれも、こちらが何かをして、相手の反応を待つ形です。子どもの頃と同じ形が、相手を替えて続いています。

相手は、親から上司や取引先や、画面の向こうの数字に替わりました。替わったのは相手だけで、確かめている中身は同じです。だから、昇進が決まった日の夜に、もう次の目標を探していることになります。

評価を求めるループから抜け出すことができない

だから、評価を求めるループから抜け出せません。褒められた記録は、褒めた人の中にあるだけだからです。

仕事の実績は、それを見ていた人の頭の中にあります。同じ上司の下にいても、今期の評価が決まれば、次に見られるのは来期の仕事です。上司が替われば、その人はこちらの過去の仕事を見ていません。転職すれば、また一から見せることになります。SNSなら、次の投稿の数字は0から始まります。

確かめたかったのは、何もしていない状態の自分が、それでもここにいていいかどうかでした。返ってくるのは、やったことへの評価です。聞いたことと返ってきたことが別なので、評価がいくら集まっても、聞きたかったことは残ります。

仕事に要るからやるのか、確かめたくてやるのか、自分に聞く

ここまでの中身が分かると、できることが一つ増えます。何かをやろうとする場面は、毎日いくつも来ます。会議で発言しようとしたとき、SNSに何かを書こうとしたとき、資格の申し込みページを開いたとき。そこで、これは仕事に要るからやるのか、それとも自分がここにいていいかを確かめたくてやるのか、と自分に聞けます。

聞いたうえで、やってかまいません。ただし、確かめたくてやった日は、反応が返ってきても、しばらくすると同じ気持ちが戻ってきます。戻ってくると先に分かっていれば、戻ってきた日に、自分が何か間違えたのだとは思わずに済みます。

この状態が続いて、眠れない日や、体が動かない日が増えているなら、一人で扱う範囲を超えています。心療内科やカウンセリングで、専門家に話してみてはいかがでしょうか。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次