ランディングページがほぼ出来上がって、あとはフォームの手前に会社概要を置くだけ。そう思って調べ始めたら、書くことがどんどん増えていった。そんな経験はないでしょうか。
よく言われるのは、だいたい3つです。会社名と住所と電話番号をテキストで載せること。フッターに特定商取引法に基づく表記とプライバシーポリシーへのリンクを置くこと。「No.1」のような表現を使うなら、第三者機関の調査データを添えること。
ここまでは、どの解説にも同じことが書いてあります。困るのはその先です。多くの解説は「一部の業界では、法律で表示が義務づけられている場合もあります」という一文で終わります。では、自分の事業がその一部に当たるかどうかは、何を見て決めればいいのでしょうか。
会社概要の項目は決まっているのに、業種の話になると答えが止まる
LPに載せる会社情報の項目は、ほとんど定型です。企業名、代表者名、事業内容、所在地、電話番号という並びは、どの解説を読んでも大きくは変わりません。
止まるのは、業種の話に入った瞬間です。「一部の業界では義務づけられています」で終わり、その先が書かれていないのは、おそらく書けないからだと思います。業種の数だけ法律があるので、汎用の解説では扱いきれません。
そこで多くの人は、自分の業種の名前を入れて調べ直します。すると、その業種に関わる法律が一通り出てきます。免許の話、表示義務の話、監督官庁の話。記載事項が増え始めるのは、ここからです。
法律は、業種の名前ではなく、実際にやる行為に付いている
免許や登録を求める法律は、たいてい「〜を業として行う者」という形で対象を決めています。会社が何屋を名乗っているかではなく、その行為を実際にやるかどうかで決まります。
「業として行う」は、一般に、不特定多数を相手に反復継続して行うことと整理されています。つまり要件は行為の側にあり、看板の側にはありません。
ここが、業種名で調べたときにすり抜けてしまう場所です。検索結果に並ぶのは、その業種の人が行いうる行為の規制であって、自分がやっていない行為の規制も同じ画面に混ざって出てきます。混ざったまま読むと、全部が自分の話に見えてきます。
同じ「相談を受ける」という行為でも、そこから契約を結ぶところまで進むかどうかで、付いてくる規制は変わります。手前で止まる事業と、最後まで通す事業は、業種の名前が同じでも別物です。業種名で調べるかぎり、この違いは検索結果に出てきません。
相談した相手は、業種名を見ただけで規制の一覧を返してきた
私自身がこれをやりました。あるLPについて記載すべきことを整理しようとしたときで、相談相手はAIでした。
返ってきたのは、業種に紐づく免許番号の表示、監督官庁の名前、その業種特有の表示義務でした。どれももっともらしく並んでいたので、私はそれを受け取り、開示すべき項目として提案しました。
崩れたのは一言でした。「その行為のやりとりをしないのに」。事業者が実際にやっているのは相談を受けることだけで、その免許が対象にしている行為はしていなかったのです。
言われてみれば、事業の中身は最初の説明にきちんと書いてありました。それでも私は、業種の名前のほうに反応していたわけです。確かめる手間は、行為を1つ確認するだけで済んだはずでした。
相談を受ける側には、書かせる方向のインセンティブしかない
ここからは私の解釈です。学説として確立された議論ではありませんので、そのつもりで読んでください。
同じことは、相手がAIでなくても起きると考えています。念のため書いておきましょう、という助言は、外れても損をしません。書かなくてよい、という助言は、外れたときに責任を負います。
だから助言は、積む方向にしか動きません。減らす判断は、助言する側ではなく、事業をやっている側にしか下せないのだと思います。ここを人任せにすると、記載事項は増える一方になります。
注意書きが増えたページは、読む人の警戒心を先に立ち上げる
積み増したものが無害ならよいのですが、そうでもありません。申し込みボタンの手前に、免責と但し書きと注釈が並んでいるページを想像してみてください。
書いた側は、誠実さの表明のつもりでいます。読む側は、そこまで断らないといけない何かがあるのだろうかと身構えます。信頼のために置いたものが、逆に働いてしまうわけです。
これは私の観察であって、数字で測ったものではありません。ただ、フォームの直前は読む人がいちばん慎重になる場所なので、そこに情報を足すなら、足す理由を説明できたほうがよいとは言えそうです。
書いておいたほうがよい場合も、正直に書いておく
公平を期すために、逆側も書きます。行為で絞り込めない層が、少なくとも2つあります。
1つは景品表示法で、これは商品やサービスの表示について、業種を問わず事業者に適用されます。実際より優れて見せる表示や、有利に見せる表示は、どの事業でも規制の対象になります。行為で外すことはできません。
もう1つは、法律ではなく広告媒体の審査ポリシーです。主要な広告媒体は、掲載するサイトに主体者の表記を求めています。法的な義務がなくても、審査で落ちれば配信できません。この2つは、業種にかかわらず最初から前提として扱ったほうが早いと考えています。
そして、いちばん正直に書いておくべきコストがあります。減らす判断をした人は、その判断の責任を自分で持つことになるので、積むより疲れます。ここは記事で肩代わりできない部分です。法令の適用が微妙な領域であれば、弁護士など専門家への確認を検討してみてください。
判断基準は、その行為を自分が本当にやるかどうかである
明日から使える形にしておきます。順番は3つです。
最初に、自分の事業が実際にやっていることを動詞で書き出します。名詞ではなく動詞にするのが要点です。相談を受ける、見積もりを出す、契約を結ぶ、代金を受け取る、他社に取り次ぐ。この粒度まで下ろします。
次に、その動詞に付いている規制を調べます。業種の名前では調べないのがここでの肝で、動詞で調べると検索結果に並ぶものがはっきり減ります。
最後に、業種名の検索で出てきた規制を1つずつ見て、対象になっている行為を確かめます。条文が「〜を業として行う者」と書いてあるなら、自分がその行為をやっているかどうかだけを見ます。やっていないなら、そのLPに書く必要はありません。
よくある疑問
Q:LPに会社概要を載せないと、法律違反になるのでしょうか。
A:会社概要そのものを一律に義務づける法律はありません。ただし、Webの申込フォームで契約の申込みを受ける取引をしているなら、特定商取引法に基づく表記が必要になります。さらに法律とは別に、広告媒体の審査ポリシーが主体者の表記を求めています。義務の出どころが分かれているので、まとめて「会社概要は必要か」と考えると答えが出ません。分けて考えると出ます。
Q:業種の名前で調べるのは、そんなに悪いことなのでしょうか。
A:調べること自体は悪くありません。問題は、出てきた規制をそのまま自分に当てはめてしまうことです。業種名で調べると、その業種の人が行いうる行為の規制がまとめて並び、自分がやっていない行為の規制も混ざります。動詞で調べ直すと、その混ざりが消えます。
記載事項が増えたときは、事業が変わったときである
ここまでの話を1つにまとめておきます。LPの記載事項は業種で決まらず、実際にやっている行為で決まります。
この考え方には、おまけが付いてきます。書くことが増えたなら、それは事業のほうが変わった合図です。相談を受けるだけだったのが、取り次ぐようになった。紹介するだけだったのが、契約を結ぶようになった。行為が増えたから、書くことが増えた。順番はいつもこちらです。
逆に、事業は何も変わっていないのに記載事項だけが増えているなら、増えた分は誰かの念のためということになります。あなたのLPに並んでいる注意書きのうち、実際にやっている行為に付いているものは、いくつあるでしょうか。






