ドラムを叩く靴の選び方。薄さだけで選ぶと、踏み込みで体重が乗らない

薄くてフラットなソール。軽くて、滑りすぎない靴底。ドラムを叩くときの靴の条件は、調べればすぐに出てきます。コンバース、バンズ、ランニングシューズという具体名も、たいてい一緒に並んでいます。

それでも1足に決まりません。条件を満たす靴は何十足もあり、そのどれを買えばいいのかまでは書かれていないからです。条件を全部満たしているはずの靴を買ったのに、踏んでみたら妙にしっくりこなかった、ということも起こります。

この記事が扱うのは、条件の中身ではありません。条件をどの順番で使うか、です。順番が決まると候補は勝手に消えていき、最後に1足だけが残ります。

目次

薄いソールと、しなるソールは別のものである

ドラム用の靴の条件として最もよく挙がるのが、ソールの薄さです。ただ、この「薄さ」という一語の中には、性質の違う2つの条件が入っています。厚さと、硬さです。

厚いソールがペダルの感覚を鈍らせるのは、足裏とフットボードのあいだに緩衝材が挟まるからです。分厚いクッションやエアソールが避けられるのは、この理由によります。ここまでは、どこにでも書かれています。

書かれていないのは、薄くても硬いソールがあることです。ゴムそのものが硬いので、薄いわりに曲がりません。踏み込んだときに靴底がフットボードの角度に追従せず、足の裏が硬い板に乗ったままになります。

コンバースのオールスターが、まさにこれにあたります。ソールは薄く、平らで、条件表の項目はすべて満たしています。それなのに「体重が乗らない」「力が逃げる」と感じる人がいます。特に、かかとを下ろして踏み込むスタイルだと、その感覚は出やすくなります。

ここからは私の解釈です。ソールの硬さと踏み込みの感覚を測った研究は見当たらないので、実感の説明として読んでください。硬い靴底は、足の力をフットボードへ渡す前に、まず自分の形を保とうとします。しなる靴底は、フットボードの角度に沿って曲がり、力の向きをそのまま渡します。

だから最初に見るのは、厚さではなく硬さです。靴を手に取り、つま先とかかとを持って曲げてみてください。素直に曲がるものを残し、抵抗するものを外す。この1回で候補はかなり減ります。

裸足で叩ける人が、本番でも裸足でいられるとは限らない

裸足でバスドラムを踏むドラマーは実際にいます。足裏の感覚が最大になるので、ペダルの状態をそのまま受け取れる。自宅の電子ドラムで練習するだけなら、これで困ることはあまりありません。

問題が出るのは本番です。ステージの床は自宅と違い、ケーブルや金具が足元に転がっていることもあります。長時間の演奏では足裏が痛くなり、金属プレートの冷たさも効いてきます。会場によっては、衛生の面で気が引ける場面もあるでしょう。

そして最も効いてくるのは、練習と本番で足元の条件が変わることです。裸足で詰めた踏み方は、靴を履いた瞬間に別の踏み方になります。本番でだけ靴を履く人は、本番でだけ知らない感覚と向き合うことになります。

だから本番がある人は、裸足を出発点にしながら、着地は靴にするのが現実的です。裸足に近い感覚を残したいなら、極薄のソールを持つ靴が候補になります。上履きのバレーシューズや、マリンシューズがそれにあたります。どちらもソールが薄く、足裏に届く情報の量は裸足に近い。

ただし、この2つはホールドが弱いという弱点を抱えています。激しく動く演奏では、靴の中で足がずれます。裸足の感覚を優先するか、足の固定を優先するか。ここは奏法によって答えが変わります。

屋内競技の靴は、ドラムの条件をほとんどそのまま満たす

ドラム用として売られていない靴の中で、条件の合致率が最も高いのは屋内競技用のシューズです。

理由は設計の目的にあります。体育館の床で使う靴は、薄いソールで床の情報を拾いながら、止まる動きと滑る動きの両方をこなす必要があります。足首を固定しすぎないことも要件に入る。この3つは、ドラムのペダルに求めるものとほぼ同じです。

フットサルシューズのインドア用モデルが、その代表になります。ソールは薄くて平らで、グリップは効きますが止まりすぎません。ヒール&トゥやスライドのように、フットボードの上で足を滑らせる奏法とも噛み合います。

同じ理屈で、オニツカタイガーのような薄底のスニーカーも候補に残ります。ソールが薄くて軽く、グリップも中程度に収まっているので、本番での見た目という点でも扱いやすい靴です。

一方、バンズのオーセンティックやエラは、ワッフルソールのグリップが強めに出ます。踏み込んだ力をフットボードへ預ける感覚は出やすいものの、足を滑らせたい人には引っかかりが強く感じられることがあります。ヒールアップ中心で、ベタ踏みしないスタイルなら問題になりません。

つまり、屋内競技の靴かどうかで絞ったあと、グリップの強さを奏法に合わせる。この2段階です。

かかとが上がっている靴は、他の条件を満たしていても外す

薄底の靴を探していると、ウエイトリフティングシューズが候補に挙がることがあります。ソールが薄くて硬く、床へ力を伝えることを目的に設計されているからです。

これは外してください。ウエイトリフティングシューズは、かかとが意図的に高く作られています。しゃがんだ姿勢で足首の角度を確保するための構造なので、フラットという条件とは正面から衝突します。

かかとが高い靴を履くと、足首の角度が変わります。ペダルに足を置いた時点で、つま先が下がった状態から始まることになる。ヒールアップでもヒールダウンでも、踏み込みの起点がずれます。

判定は単純で、靴を横から見るだけで済みます。かかとと前足部に高さの差があるなら外し、差がゼロに近いものだけを残す。ここは他の条件と交換できません。ソールが薄くても、軽くても、グリップが良くても、かかとが上がっていたら外します。

同じ名前の靴の中に、履けない型番が混ざっている

靴の種類が決まったあとに、もう一つ確認する項目があります。同じ商品名でも、使う床が違うモデルが並んでいることです。

フットサルシューズがその典型で、体育館用と人工芝用の2種類が同じ名前で売られています。アシックスのデスタッキ K FF なら、品番1111A217がインドアコート用、1111A218が人工芝専用のTFモデルです。名前は同じで、末尾のTFという2文字と、品番の下1桁だけが違います。

人工芝用のソールには、細かい突起が並んでいます。芝に食い込ませるための構造なので、ペダルのフットボードの上では点で当たることになる。フラットであることが条件だったのに、ここで崩れます。

通販サイトの一覧では、この2つがよく似た画像で並んでいることがあります。商品名だけを見て買うと、届いてから気づくことになります。買う前に品番と、TFという表記の有無を確認してください。

サイズを決めるのは、通販サイトの推奨値ではなく手持ちの靴である

種類と型番が決まったら、最後にサイズを決めます。手順の中では、ここが一番外しやすいところです。

通販サイトには「この商品は大きめを選んでください」という推奨が出ることがあります。過去の購入履歴や、レビューの声から算出されているものです。ただ、これは自分の足を測った値ではありません。

基準にすべきなのは、いま履いていて合っている靴です。それも、できれば同じブランドのもの。ブランドが同じなら、ラスト(木型)の基本設計や、つま先にどれだけ余裕を取るかという考え方に共通性があります。カテゴリーが違っても、cm表記の信頼度は上がります。

たとえば同じアシックスのランニングシューズで25.5cmが合っているなら、フットサルシューズもその近辺です。フットサルシューズは全般にタイトに出るので、0.5cmから1.0cm上げる余地はあります。それでも26.5cmまでで、2cm上げて27.5cmにする根拠は、そこからは出てきません。

Q:ドラム用の靴は、少し大きめを選んだほうがいいのでしょうか。
A:0.5cm程度の余裕までです。それ以上大きいと、踏み込むたびに靴の中でかかとが浮き、足が前後にずれます。速いテンポの連打では、そのずれが1打ごとに積み重なって、同じ位置を踏めなくなります。ゆとりが必要なのはつま先で、かかとではありません。

確実を期すなら、返品ができる店で2サイズを取り寄せて履き比べてください。実際にペダルへ乗せてみるのが一番早い。判断の材料になるのは、通販サイトの推奨値ではなく、自分の足に合っている靴です。

練習と本番で靴を分けると、そのたびに感覚が作り直しになる

1足に決めたら、その1足をドラム専用にしてください。練習も本番も、同じ靴を履きます。

理由は、ペダルとの当たり方が靴ごとに違うからです。ソールの硬さ、グリップの強さ、足の固定のされ方。この3つが変われば、同じペダルでも踏み心地は変わります。練習で作った感覚は、靴を変えた時点で目減りします。

本番でだけ違う靴を履く人が、ここでつまずきます。本番は、ただでさえ環境が違います。床も違えば、モニターの聞こえ方も違い、緊張もある。そこへ足元の感覚まで違うものを持ち込むと、確認する項目が一つ増えます。

逆に言えば、靴を固定するだけで変数が一つ減ります。ペダルのセッティングを詰めるときも、比べる基準が動きません。

外で履かないことも大事です。屋外で使えばソールに砂や小石が入り、グリップが変わります。1足を専用にして機材と一緒に運ぶだけで、足元は安定します。

決める順番は、硬さ、種類、型番、サイズ、色である

ここまでの手順を並べ直します。順番そのものが、この記事が渡す判断基準です。

* ソールの硬さ。手で曲げて、素直に曲がるものだけを残す
* 靴の種類。屋内競技用か薄底のスニーカー。かかとが上がっているものは全部落とす
* 型番。同じ商品名の中に、人工芝用や屋外用が混ざっていないか
* サイズ。手持ちの合っている靴、できれば同じブランドの実測を基準にする
* 色。ここまでで残った候補から、見た目で選ぶ

この順番が効くのは、前の項目ほど交換できないからです。ソールの硬さは見た目で妥協できませんが、色はいくらでも妥協できます。交換しにくいものから決めていけば、最後に残る選択肢は、どれを選んでも大きくは外れません。

色を最後に置いた理由も、そこにあります。黒は汚れに強く、どの衣装とも合わせやすい。足元が暗く沈むのが気になるなら、シャツやズボンを明るくすれば、コントラストで引き締まって見えます。機能を先に決めておけば、見た目は後から自由に決められます。

いま履いている靴を、つま先とかかとを持って曲げてみてください。素直に曲がるでしょうか。

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