これから先も、クラウドAIを選ぶのが基本です。ローカルAIが役に立つ場面は、3つに絞られます。
しかし、ローカルAIはデータが外に出ないので安全で、電気代のほかにお金がかからないので安い、と考える人もいるはずです。判断を任せる仕事をクラウドに残す限り、ローカルAIは安くも安全にもなりません。
AIに判断や操作をさせる仕事は、これからもクラウドAIに任せる
まず、AIに判断や操作をさせるなら、手元のPCで動く公開モデルでは足りません。Epoch AIの分析では、最も性能の高い公開モデルでも非公開の最先端モデルより平均約4か月遅れ、家庭用GPU1枚で動く公開モデルでは遅れが6〜12か月になります。
2年後には、今のクラウドAIと同じくらいの性能を家庭のPCで出せるようになると思います。ただ、2年後には、クラウドの最先端モデルはさらに新しくなっています。メールの返信やブラウザでの送信のように、間違えると困る仕事ほど、いちばん性能の高いモデルに任せることになります。
ローカルAIのためにMacを買っても、クラウドの契約は減らせない
次に費用では、判断を任せる仕事をクラウドに残す限り、Macの代金はクラウドの料金に上乗せになります。値段は以下のとおりです。
| 比べるもの | 値段 |
|---|---|
| クラウドAIの定額プラン(AnthropicのClaude Max 20x) | 月200ドル(約3万円)、1年で約36万円(Anthropic) |
| Claude Max 20xを2契約 | 月約6万円、1年で約72万円 |
| 14インチMacBook Pro(M5 Max搭載)の最も安い構成 | 2026年3月の発売時は59万9,800円、6月の値上げ後は72万6,800円(PHILE WEB、ゴリミー) |
| 同じMacのメモリを128GBにした場合 | 36万円の追加で、100万円を超える |
モデルの大きさはメモリの量でほぼ決まるので、最先端に近い大きさのモデルを動かすなら、メモリは128GB要ると思います。
2契約のうち1契約をやめられれば、100万円のMacの代金をおよそ3年で取り戻せます。やめられないなら、Macの代金は増えた支出になります。
Epoch AIによると、同じ性能を出すためのクラウドの料金は、課題によって1年で9分の1から900分の1に下がりました。Macの代金を取り戻せる時期は、クラウドが値下がりするたびに先へ延びます。
AIを手元のPCに置いても、データは安全にならない
最後に安全面では、ローカルAIを入れたPCを1台増やすたびに、更新プログラムを適用し続けなければならないPCも1台増えます。米ベライゾンの2026年版データ侵害調査報告書は、侵入の入口としてソフトウェアの弱点を突く攻撃が初めて最多になり、悪用が確認された弱点を修正し終えるまで中央値で43日かかったと示しました。
大手のクラウド事業者には24時間監視する専任のチームがいて、弱点が見つかればすぐに修正します。社内のPCを同じ速さで修正し続けるのは、ほとんどの会社では難しいはずです。
社外に出せないデータは、国内で処理するクラウドで扱う
データを国内に置くよう求める決まりや、社外のサービスに渡さないという取引先との契約がある場合は、国内で処理するクラウドで扱えます。AWSは2025年10月16日から、Amazon BedrockでのClaudeへの依頼を、東京と大阪のリージョンだけで処理する仕組みを用意しています。日本の事業者が運営するクラウドを選ぶ手もあります。
何度も繰り返す単純な仕事だけ、手元のPCで処理できるか試す
ローカルAIが役に立つ3つの場面のうち、1つ目は何度も繰り返す単純な仕事です。単純な仕事なら、数年前の中古のMacでも処理できるはずです。家庭用GPU1枚で動く公開モデルでも6〜12か月前の最先端モデルと同じくらいの性能は出せるので、単純な仕事のために100万円のMacを買う必要はありません。
たとえば、電話の録音の文字起こし、請求書のPDFから金額と日付を読み取ってファイル名を付け直す作業、新着のニュースを条件で振り分ける作業です。クラウドのAPIで処理すると使った分だけ料金がかかりますが、手元のPCなら何度処理しても追加の料金はかかりません。
試すなら、先月分の請求書のPDFを20件ほど選び、手元のモデルに金額と日付を読み取らせます。20件とも正しく読み取れたら、請求書の読み取りだけを手元のPCに移します。
ローカルAIしか選べないのは、インターネットにつながらない限られた場所である
2つ目は、インターネットにつながらない場所です。防衛に関わる施設や、外部のネットワークから切り離した工場や病院の設備ではクラウドAIを使えないので、ローカルAIを選ぶことになります。ただ、インターネットから切り離した場所は限られます。
個人がローカルAIを持つ理由は、多くの場合趣味であり、当分はお金がかかる
3つ目は、個人がローカルAIを楽しみとして持つ場合です。結果がクラウドとほとんど同じでも、自分の機械の中でAIが動いていること自体を楽しめる点に価値があります。費用や安全で比べると個人が持つ理由はほとんど残らないので、手元で動かしたいなら趣味として選ぶことになります。
2025年10月にOpenAIがサムスン電子とSKハイニックスからDRAMの供給を受ける合意を発表して以降、メモリの値段が大きく上がっているので、趣味で持つにも当分はお金がかかります。
次にクラウドの契約を更新する日までに、手元のPCで処理できる仕事を1つ探す
判断や操作をさせる仕事はクラウドAIに残し、何度も繰り返す単純な仕事だけをローカルAIに移すのが、これからの選び方です。次にクラウドの契約を更新する日までに、先月分の請求書のPDFを20件、手元のモデルに読み取らせてみてはいかがでしょうか。







