自分で組んだ自動化がうまく動いた日に、これで1日に何時間浮いたのかを数えようとしました。私には数えられませんでした。
浮いた時間の出し方は決まっていて、発生した回数に、1件あたりの所要時間を掛けます。この式に入れる数字のうち、回数のほうは記録から数えられますが、1件あたりの時間のほうは、どこにも残っていませんでした。
この記事で書くのは、その数えられないほうをどう扱うかです。そして、数え終わったあとに残る問題が1つあります。浮いたはずの時間が、戻ってこない仕事があります。
数えられるものと、数えられないものを分ける
最初に、AIに削減時間を出させました。返ってきたのは、もともとやっていた分と、やらなかったはずの分に分けた集計でした。
そんな区分はありません。私が全部やっていた仕事です。やらなかったはずの仕事という枠は、根拠なく置かれたものでした。
区分を捨てて、実際に発生した回数を数え直しました。メールの履歴と保存されたファイルから数えられて、37日間で48回でした。作業の種類ごとの回数も、同じやり方で出せます。
数えられないのは、1件あたりの所要時間のほうです。手作業でやっていたころの実測が残っていないので、ここは全部が見積りになります。削減時間に幅が出る理由は、ここにしかありません。
数えられるものと数えられないものを分けたところで、話が進みました。分けないと、全部が同じ確からしさの数字に見えます。
合計を、自分の1日の労働時間と並べる
1件あたりの見積りは、どれも確かめられません。1件30分と言われても、20分だったかもしれません。
ところが、足し算の結果のほうは確かめられます。作業ごとの削減時間を全部足したところ、合計が自分の労働時間そのものを超えました。超えたということは、どれかの見積りが過大だということです。1日8時間しか働いていない人から、9時間を削ることはできません。上限は自分が知っています。
1件ずつを見直しても、どこが過大なのかは分かりません。合計を1つの目盛りに当てたときだけ、過大だったことが表に出ます。個々の推定は検証できないが、合計は検証できる。この数え方で、いちばん効いたのはここでした。
目盛りはもう1つあって、それが自分の実感です。積み上げた数字が実感の倍あるなら、どこかの見積りが大きすぎます。
外注に出していた分も、時間として数える
集計では、外注していた作業の分が、費用として別枠になっていました。時間ではなくお金の話だと扱われたからです。
ですが、外注費だってお金で時間を変換しているものです。払っているのは他人の時間なので、自動化でその作業が要らなくなったなら、減ったのは時間です。
費用として別枠にすると、時間の合計から落ちます。落ちた分だけ合計が労働時間の中に収まってしまうので、上限に当てる検算が効かなくなります。
外注費を時間に戻すには、払っていた金額を単価で割ります。単価は1本に決めます。3通り併記して幅を持たせる案も出ましたが、読む側に判断を渡すだけなので捨てました。
浮いたはずの時間が、戻ってこない仕事がある
数え終わったあとに、別の問題が出ました。届いてから判断までに3日から5日空いている作業があり、最初は処理待ちが原因だという報告が返ってきました。実際には、その3日から5日は会議の日程で決まっています。数字の表面だけを見ると、原因を取り違えます。
そこで気づいたことがあります。自動化がレポートを作って人があとで読む形にしていると、認知が2回起きます。1回目は機械が処理する分で、2回目は、人が文脈を思い出しながら読み直す分です。
読み直すときには、前提が抜けています。何の件だったか、どういう経緯だったかを、もう一度組み立てるところから始まるので、そこに時間がかかります。
機械の処理は速くなっているのに、判断までの合計はむしろ延びる。削減時間の集計には、この2回目が入っていません。
人が結果を読む仕事だけ、届いた瞬間に動かす
週に一度まとめて確認する形を勧められましたが、私は断りました。土曜日にまとめて見ると抜け漏れが出ますし、記憶が新しくないので、いい状態でバトンを渡せないからです。
次に、毎時見にいって自動で処理する形も出てきましたが、これも断りました。メールを見た瞬間に自分でコメントを書いたほうが、認知のタイムラグが小さいからです。
ここで設計が2つに分かれました。人が結果を読まない仕事は、いつ動かしてもかまいません。時刻を固定して、夜中に走らせて問題ありません。人の判断が次に来る仕事は、人がその件に触っている瞬間に合わせます。同じ自動化という言葉でも、この2つは向きが逆になります。
認知のタイムラグそのものを測った数字は手元になく、根拠は実感だけです。ただ、設計を分けてから、あとで読み直す時間は減りました。
よくある疑問
Q:1件あたりの時間を測り直せば、正確に出せるのではないでしょうか。
A:これから発生する分は測れます。手作業に戻して測ることはできないので、過去の分は見積りのままです。測れる分だけを測って、残りは見積りだと書き分けておくと、あとから直せます。
Q:自動化を作った本人が数えると、大きめに出てしまいませんか。
A:出ます。だから合計を労働時間に当てます。作った本人でも、自分が1日に何時間働いているかは分かるので、そこだけは水増しできません。
数え直すのは、月に一度で足りる
回数は記録から出るので、月ごとに変わるのは1件あたりの見積りだけです。見積りを1つ直したら、合計をもう一度労働時間に当てて、それで終わりです。
いま動いている自動化を1つ選んで、その結果を最後に読むのが誰かを決めてみてはいかがでしょうか。読むのが自分なら、動かす時刻を、自分がその件に触っている瞬間に寄せられます。誰も読まないなら、時刻は何時でもかまいません。


