ドラムスローンが沈むのは、キーロックが浮いているからである。だから、締め直す前に、いちばん下まで下げる

新品のドラムスローンをもらいました。TAMAのHT130です。高さを決めて、座りました。座っている最中に、椅子がゆっくり沈んでいきます。

私が疑ったのは2つで、設定のミスか、自分の体重かでした。ドラムスローンが沈むという悩みに世の中でよく返ってくる答えも、だいたいこの2つの延長にあります。もっと強く締めるか、買い替えるかです。

沈んでいた原因は、締め方でも体重でもありませんでした。中間パイプに最初から通っている部品を、私が別の用途の部品だと読み違えていました。その部品の正しい位置は、いちばん下です。部品の名前と、下げる位置と、下げ切ったかどうかの見分け方を書きます。

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体重73kgの使用者も、椅子が沈むと書いている

沈む椅子に座っていると、自分の体重を先に疑いたくなります。ただ、その順番で疑うと外れます。

TAMAはHT130の耐荷重を公表していません。公式サイトにも取扱説明書にも、荷重の数値は載っていません。

かわりの手がかりが、海外の小売店に付いたレビューです。SweetwaterのHT130のレビューには、195ポンド(約88kg)の使用者が沈むと書いた投稿があります。160ポンド(約73kg)の使用者が、ロックを全部かけても下がりすぎると書いた投稿もあります。73kgでも起きているなら、これは体重で分かれている現象ではありません。

HT130は、ねじを回して高さを決める方式ではない

ドラムスローンの高さの決め方には、座面を回してねじを上下させる方式と、パイプを挟んで止める方式があります。

HT130は後者で、上段パイプをダイキャストジョイントに差し込み、T型ボルトで挟んで締めます。zZoundsの製品説明は、この機種についてパイプを挟むクランプの接触面積を広げ、従来のノブ型ボルトを人間工学的なウイングボルトに置き換えた、と書いています。

ここが見落としやすいところで、挟んで止める方式では、高さを保っているのは摩擦です。ねじ山のように、下から荷重を受け止めているものがありません。挟む力が足りなければ、その分だけ上段パイプは滑ります。

取扱説明書には、キーロックの役目が沈み防止と書いてある

HT130の中間パイプには、リング状の部品が最初から通っています。TAMAの取扱説明書は、これをキーロックと呼びます。

説明書の説明文は1文です。「キーロックは上段パイプとダイキャストジョイントとの固定力を高め、演奏中に高さが下がるトラブルを防ぎます」。演奏中に高さが下がるのを防ぐ、と書いてあります。沈み防止が、この部品の本来の役目です。

だから、買い足す部品ではありません。HT130には最初から付いています。同じ部品は星野楽器のパーツリストにML222NTという品番で載っていて、名称はメモリーロック(22.2mm)です。取扱説明書ではキーロック、パーツリストではメモリーロック。呼び名が2つあるので、調べるときは両方の語で当てたほうが早く着きます。

キーロックには刻みがあるので、上とはめ込む部品に見える

私がやっていたのは、キーロックを上のほうに置いたまま締めることでした。下げていませんでした。

そう置いた理由は、部品の見た目です。キーロックの外周には細かい刻みが入っていて、滑り止めのローレット加工ですが、噛み合わせの溝にも見えます。はめ込みができる刻みがあったので、私はこれを上の部分と接続する部品だと思ってしまいました。上のシート側と組み合わさるものだと読んでいたので、下げるという発想がそもそも出てきません。

これは下でロックするのだ、と分かったのは、そのあとでした。最初に立てた問いは設定のミスか体重かでしたが、正解はそのどちらでもありません。設定はしていて、体重も範囲内で、それでも沈んでいました。答えは、部品が何をするものかを取り違えていた、です。二択のどちらにも入っていませんでした。

キーロックは、ダイキャストジョイントに隙間ゼロで密着させる

やることは1つで、キーロックを、ダイキャストジョイントの上端に密着するところまで下げてから締めます。

位置は、T型ボルトが付いているダイキャストジョイントのすぐ上です。キーロックを固定しているのは角頭ボルトで、品番はMS620SH、M6の20mmです。角頭なので手では回りません。取扱説明書も「角頭ボルト(C)を付属のチューニング・キーで緩め」と書いています。

説明書の高さ調整の手順は7段あります。5段目でT型ボルトを緩めて高さを決め、締めて固定します。6段目が「角頭ボルト(C)を緩めたあと、ダイキャストジョイントの位置までキーロックを下げ、角頭ボルト(C)をしっかりと締めて固定します」です。高さを変えるたびに、この2段を繰り返します。

見分けるのは隙間です。締めたあと、キーロックとダイキャストジョイントのあいだに隙間が残っていないかを、指で触って確かめます。1mmの隙間が残っていれば、その1mm分の下がりしろが残ります。これは説明書に書いてある話ではなく、部品の並びから言える理屈です。ゼロにできていれば、上段パイプはそれ以上下がれません。

下げても直らない個体はある

この手順で全部が止まる、とは書けません。

先ほどのSweetwaterのレビューでは、160ポンドの使用者がロックを全部かけても下がりすぎると書いています。ロックをかけた状態でも下がる、という報告です。この記事の手順が効くのは、キーロックが浮いている場合だけです。

キーロックが密着していて、それでも沈むなら、原因は別のところにあります。パイプを挟んでいる部分の状態や、ボルトそのものの状態です。そこまで来たら、購入した販売店に相談する段になります。新品でその状態なら、初期不良として見てもらう筋があります。

工場出荷時にキーロックがどの位置で梱包されているかは、私の個体でしか見ていません。他の個体でも同じとは限りません。

高さを決め直す前に、キーロックがどこにいるかを見る

沈む椅子を前にすると、締め方のほうを変えたくなります。強く締める、締め直す、工具を替える。どれも、部品が正しい位置にいることを前提にした対処です。私の場合は、その前提のほうが崩れていました。部品はあったのに、役目を取り違えていたので、置く場所が違っていました。

まず、キーロックがどこにいるかだけを見てください。高さを決め直すのは、そのあとでも間に合うはずです。

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