顧客データが10万件あると、スプレッドシートはそろそろ限界だと思われるかもしれません。
実際に数えると、10万件は列が30本でも300万セルです。Googleの公式ヘルプが書いている上限は1,000万セルなので、3割しか使っていません。
移すかどうかは、件数では決まりません。見る順は4つあります。セル数、行の増え方、データの使い方、そして言葉の定義です。
自分のシートのセル数を、列数×行数で出す
上限と比べる前に、自分のシートがいま何セル使っているかを出します。スプレッドシートのセル数は、使っている列の数に行の数を掛けると出ます。顧客データが10万件で、列が30本なら300万セルです。
列の数は、A列から値が入っている最後の列までを数えます。行の数は、見出しの行を除いた件数です。1つのファイルに複数のシートがあるなら、シートごとに出して足します。上限はファイル単位なので、シートを分けても合計で数えられます。
出したセル数を、1,000万セルと比べる
自分のセル数が出たら、上限と比べます。Googleの公式ヘルプは、1ファイルの上限を1,000万セル、18,278列と書いています。300万セルなら、上限の3割です。
上限は引き上げられる予定です。Googleは2026年4月22日に、上限を2,000万セルへ倍にすると発表しました。ベータに登録した組織から順に適用されるので、登録していない組織は1,000万セルのままです。
自分のシートで、行が毎月何行増えるかを見る
上限との差が分かったら、その残りを何か月で使い切るかを出します。上限に届く日は、毎月何行増えるかで決まります。いまの件数では決まりません。
顧客が10万件で止まっているシートは、上限に届きません。届くのは、反響や来店の記録のように毎月行が足されるシートです。列が30本で毎月3,000行増えるなら、1か月あたり9万セルです。300万セルから1,000万セルまでの残りは700万セルなので、700万を9万で割ると77か月、つまり6年5か月になります。
自分のシートで同じ計算をして、上限に届く月数が数年より先なら、いま置き場を動かす理由はありません。
移すかどうかを、顧客データの使い方で決める
数年で上限に届くと出たシートでも、移す先がBigQueryだとは決まりません。BigQueryは全件を集計するのが速い代わりに、1件を引く操作と1件を書き換える操作が遅く、スキャンした量で課金されます。
顧客データを主に1件ずつ読み書きするために使っているなら、BigQueryは合いません。「この人の情報を出す」「この人の担当者を変える」が主な使い方なら、行き先はCloud SQLのような普通のデータベースか、いま使っている業務システムの中になります。全件を集計して傾向を見るのが主な使い方なら、BigQueryが合います。
BigQueryの料金は、この判断を変えません。保存は月10ギビバイトまで無料で、クエリは月1テビバイトまで無料です。1行を1キロバイトとしても、顧客10万件で100メガバイトなので、どちらの無料枠にも届きません。
BigQueryにデータセットを作るなら、場所を東京で指定する
BigQueryを使うと決めたら、最初の1回で間違えてはいけない設定が1つあります。BigQueryのデータセットは、作るときに場所が決まり、あとから変えられません。場所を指定しないままだと、データは米国のマルチリージョンに置かれます。顧客データを入れるなら、asia-northeast1を指定します。間違えたときは、別の場所へコピーするか、作り直すことになります。
反響数と粗利の定義を、1枚に書き出して揃える
置き場が決まっても、言葉の定義は決まっていません。反響数、来店数、契約、粗利。この4つが各シートで同じ意味かを、1枚に書き出して確かめます。
同じ言葉を部門ごとに違う意味で使ったままデータを渡すと、受け取った人は、作った人の意図と違う意味でその数字を読みます。IPAは『データの共通理解推進ガイド』で、用語が揃っていない状態では「スムーズな顧客対応ができないなど、業務やサービスに支障が出る」と書いています。
書き出す表には、言葉、数える単位、数える期間、入力する人、の4列を作ります。反響数なら、電話とメールとフォームを合わせるのか分けるのか。同じ人から2回来たら1件か2件か。粗利なら、広告費を引くのか引かないのか。拠点ごとに答えが違っていたら、どちらを採るかをその場で決めて、表に書きます。
表を作る前は、同じ問いに違う数字が返ってきて、どれを採るかを決めるやりとりが起きます。表を1枚作ると、それが減ります。列の意味が決まる前にデータセットを作ると、決まったあとに作り直すことになるので、その作業も消えます。
上限に届く前に、自分がやることは4つある
置き場を変えても、言葉の意味は人が決めない限り決まりません。だから、やることは4つの順に並びます。1つ目は、自分のシートのセル数を出して、上限までの月数を出すことです。2つ目は、その月数が数年より先なら、置き場を動かさないことです。3つ目は、動かさないあいだに、反響数と粗利の定義を1枚に決めることです。4つ目は、定義が決まってから置き場を選ぶことです。
BigQueryのようなツールが要るのは、次の2つが両方とも当てはまるときだけです。1つは、上限の1,000万セルに2年以内に届くと計算で出たことです。列が30本なら33万行にあたります。もう1つは、そのデータの主な使い方が全件の集計であることです。1件ずつ引く使い方が主なら、当てはまりません。片方だけなら、まだ要りません。
自分のシートを1つ開いて、反響数を誰がどう数えているかを確かめてみてはいかがでしょうか。拠点ごとに答えが違っていたら、その言葉が最初に決めるところになります。

