アメリカは、神の国を作ろうとしたピューリタン(清教徒)が始めた国です。前の記事では、そのアメリカが、AIをきっかけに、神を探す国から「神を作り、神になろうとする国」へ変わり始めたと書きました。では、ピューリタンの国がアメリカだとしたら、日本はどうなのでしょうか。
日本には、神の国を作ろうとして海を渡り、国を始めた人たちはいません。それでも日本は、新しいテクノロジーを使いこなしてきました。日本は、新しいテクノロジーにどう向き合ってきたのでしょうか。
日本は、八百万の神が道具の中にもいる国である
アメリカがピューリタンの国だとしたら、日本は八百万の神がいる国だと私は考えています。
ピューリタンが信じる神はひとつで、人と世界の外にいます。日本の神は数が決まっておらず、山や川の内側にも、人が作った道具の内側にもいると考えられてきました。
道具に魂が宿るという考えは、言い伝えにも行事にも残っています。国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースには、道具が100年たつと精霊を得るという「付喪神」の伝承が記録されています。浅草寺では毎年2月8日に、折れた針や錆びた針をやわらかい豆腐やこんにゃくに刺し、針に感謝する針供養会が開かれています。日本では、神は道具の中にもすでにいるものでした。
だから日本は、新たなものを生み出すより、目の前の道具を作り替えてきた
神が身の回りにすでにいるなら、神に近づくための道具を作る理由がありません。そのため日本で新たなものを生み出すのは難しいと、私は考えています。
アメリカには、神に近づくための道具を作り、その先で神になろうとする構造があります。前の記事で書いたように、コンピューター、インターネット、SNS、スマートフォン、AIを生み出し、世界に広めてきたのはアメリカです。日本は、外から来た道具を受け入れ、自分たちの使い方に作り替えてきました。
なぜなら、日本では道具を作り替えることが、その中にいる神と向き合うことだからです。道具を磨き続けることが神と向き合う過程なので、日本は目の前にあるものを改善し続けられます。農業では、蚕の育て方と蚕の種が日本で改良され、フランスから入れた富岡製糸場の機械と組み合わされました。製造業では、種子島に伝わった鉄砲を、伝来から8か月で日本で作れるものにしました。
外から来た道具を作り替えた例を、時代ごとに3つ並べると、以下のとおりです。
| 比べる点 | 鉄砲 | 製糸の機械 | トランジスタ |
|---|---|---|---|
| 日本に来た年 | 1543年 | 1872年 | 1954年 |
| どこから来たか | ポルトガル人 | フランス | アメリカ |
| 日本が作り替えた形 | 伝来から8か月で国産にした | 日本で改良された養蚕と組み合わせた | 補聴器などに使われていた部品で、家庭向けのラジオを作った |
出典は、鉄砲については鹿児島県、製糸の機械については国土交通省の観光資源解説データベース、トランジスタについては発明協会「戦後日本のイノベーション100選」です。
日本は、ロボットを一緒に暮らす相手として扱ってきた
日本は、人が作った機械も、心や魂があるものとして扱ってきました。
1952年に連載が始まった手塚治虫の『鉄腕アトム』で、アトムは泣いたり笑ったり、正義のために怒ったりするロボットとして描かれました。小学校に通い、妹と両親もいます(手塚治虫公式サイト)。
ソニーの犬型ロボットAIBOは、寺で住職に供養されています。修理を手がけるア・ファンは、献体として寄付されたAIBOを住職に供養してもらっており、千葉県いすみ市の光福寺では約10年間で約900体を供養しました(ア・ファン)。
日本は、生成AIも少し遅れて受け入れている
日本は、AIも外から受け入れています。 総務省の情報通信白書(令和7年版)で、生成AIを使ったことがあると答えた人の割合は、以下のとおりです。
| 国 | 2023年度の調査 | 2024年度の調査 |
|---|---|---|
| 日本 | 9.1% | 26.7% |
| アメリカ | 46.3% | 68.8% |
| ドイツ | 34.6% | 59.2% |
| 中国 | 56.3% | 81.2% |
日本の国会も、AIを受け入れて使う方向で法律を作りました。2025年6月4日に公布され、同年9月1日に全面施行された「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)」は、AIのイノベーションを促進しながらリスクに対応する形をとっています(内閣府)。
日本は、AIとも作り替えて磨き込むことで向き合う
アメリカは、AIをきっかけに「神を作り、神になろうとする国」へ変わり始めたと私は考えています。日本は、外から来たAIを受け入れ、目の前の仕事や暮らしに合わせて作り替え、磨き込むことで神と向き合うと考えます。 鉄砲や製糸の機械やトランジスタと同じように、道具を作り替えることが、神との対話であり、神との一体化を実現する方法なのです。
生成AIを使ったことがある人の割合は、日本がアメリカより低くなっています。それでも、受け入れたあとに磨き込むのが日本のやり方です。日本は、目の前にあるAIを、どう作り替えていくでしょうか。







