SSRIを1日飲み忘れたときに、頭の反応が遅れることがあります。脳にラグが出たような感覚です。
では、毎日飲んでいた薬を1日飲まなかっただけで、なぜ頭の働きまで変わるのでしょうか。
SSRIの飲み忘れで出る脳のラグは、離脱症状のひとつ
日本精神神経学会の一般向けの解説には、SSRIを飲んでいる人は、1回飲み忘れただけでも具合が悪くなることがあると書かれています。SSRIのひとつであるパロキセチンの添付文書にも、飲み忘れによって、めまいや知覚障害が出ることがあると書かれています。知覚障害の例として挙がっているのは、錯感覚、電気ショック様感覚、耳鳴です。
SSRIを1日飲み忘れて出る脳のラグは、薬が急に切れたときに起きる離脱症状のひとつです。
脳が薬のある状態に慣れたところで、薬が急に切れる
では、なぜ1日飲まないだけで症状が出るのでしょうか。SSRIは抗うつ薬の一種で、脳の中でセロトニンという物質を増やす薬です。
SSRIを飲み続けると、セロトニンを受け取る受容体が減る方向に脳が変わり、その状態で薬が切れてセロトニンが急に減ることが症状の原因だ、という仮説があります。
この仮説は、SSRIをやめたあとの症状について専門家がまとめた報告に書かれています(Schatzberg ら、1997年)。ただし同じ報告には、仕組みははっきり分かっていないとも書かれています。
SSRIの種類によって、飲み忘れで症状が出やすい薬と出にくい薬がある
症状の出やすさの違いが分かる試験として、SSRIを飲んでいる人の薬を5日間だけ、有効成分の入っていない偽薬に置き換えて、症状の出方を薬ごとに比べたものがあります(Michelson ら、2000年)。結果は以下のとおりです。
| SSRI | 体の中の薬の濃度が半分になるまでの時間(半減期) | 5日間偽薬に置き換えたときの結果 |
|---|---|---|
| パロキセチン | 約14時間(1回飲んだとき) | 2回目の飲み忘れのあとから、症状の数と重さが増えた |
| フルオキセチン(日本では未承認) | 1〜3日(1回飲んだとき)、4〜6日(飲み続けたとき) | 症状ははっきり増えなかった |
Michelson らの試験では、セルトラリンを偽薬に置き換えたときの症状の増え方も、パロキセチンより小さいものでした。この試験でパロキセチンの症状がはっきり増えたのは2回目の飲み忘れのあとからですが、学会の解説と添付文書は、1回の飲み忘れでも症状が出ることがあると書いています。
Michelson らは、症状の出方の違いは、薬が血液から消える速さに関係しているようだと書いています。薬が血液から早く消えるほど、飲み忘れたときに薬は急に切れることになります。
一方で、頭の中に電気が走るような感覚について投稿595件を分析した研究では、パロキセチンより半減期の長いセルトラリンを飲んでいる人からも、この感覚が多く報告されていました。研究者は、半減期のほかにも要因があるかもしれないと書いています(Papp、Onton、2018年)。
飲み忘れたときの飲み方は、薬の説明書に書かれている
パロキセチンの患者向医薬品ガイドには、飲み忘れに気がついたときはできるだけ早く1回分を飲み、次に飲む時間が近ければ1回とばすように書かれています。
パロキセチンの患者向医薬品ガイドには、2回分を一度に飲まないようにと書かれています。
ほかのSSRIを飲み忘れたときの扱いは、薬ごとの説明書(患者向医薬品ガイドやくすりのしおり)で確かめるか、薬をもらった薬局の薬剤師に聞いてください。
よくある疑問
Q:1回飲み忘れただけでも、離脱症状は出ますか。
A:出ることがあります。日本精神神経学会の解説にも、パロキセチンの添付文書にも、飲み忘れで症状が出ることがあると書かれています。気になる症状が出たら、主治医に伝えてください。
飲み忘れたときにどうするかを、主治医か薬剤師に聞いておく
脳のラグをなくしたいからといって、飲む量や飲み方を自分で変えるのは避けてください。パロキセチンの添付文書には、突然やめるのを避け、やめるときは数週間から数か月かけて減らすように書かれています。
飲み忘れたときにどうするか、どんな症状が出たら連絡するかは、主治医か薬剤師に聞いておくのが確実です。
飲み忘れたときの飲み方と、連絡が要る症状を、次の受診で主治医に聞くか、薬を受け取るときに薬剤師に聞いておいてはいかがでしょうか。







