「他人を非難する快感」の正体とは?ネットで攻撃的になるのがやめられないのはなぜか?

他人を非難したくなるのは、非難すると自分のほうが正しくて優れていると感じられ、その感覚が報酬になるからです。ネット上では、攻撃的な投稿に「いいね」や拡散が返ってくることも、その繰り返しを後押しします。

しかし、意志が弱いわけでも性格が悪いわけでもないなら、なぜ自己嫌悪を感じながら、他人を非難することをやめられないのでしょうか。

この記事では、攻撃が報酬になる仕組み、自分の嫌な面を相手の中に見てしまう心の働き、やめたいときにできることを、この順に説明します。

目次

他人を批判すると、優越感と正しさの確認が得られる

他人の失敗や欠点を指摘すると、「自分はあの人とは違う」と感じられて、一時的に自分の評価が上がったように思えます。この優越感が、批判を繰り返す理由の一つです。

自己肯定感が低いときほど、この手軽な比較に頼りやすいと思います。ただし、批判で得られる優越感は長続きしません。感じるたびに他人との比較に頼ることになり、自分の評価を他人との差でしか測れなくなります。

ネットでは攻撃すると反応が返ってくるので、攻撃を繰り返しやすくなる

他人を罰したり批判したりする行為と、脳の報酬に関わる領域の活動が結び付くことは、実験で示されています。ネットでは、そこに「いいね」や拡散という反応が加わります。

2004年にスイスのド・ケルバンらが『Science』に発表した実験では、不公平な相手に罰を与えると決めるとき、報酬に関わる脳の線条体が活動しました。ただし、これは参加者が金銭をやり取りする実験室のゲームで、ネット上の投稿を調べたものではありません。ドーパミンの放出を測ったものでもありません。

イェール大学のブレイディとクロケットらは、ネット上の怒りの表現を2021年に『Science Advances』で報告しています。約7,300人の1,270万件のツイートを調べたところ、怒りを表した投稿に「いいね」やリツイートが多く付いた人ほど、その後も怒りを表す投稿を増やしました。実験でも、反応という報酬が怒りの表現を増やすことが示されています。

この2つの研究から、攻撃が報酬になり、反応によって習慣になる流れは説明できます。ただし、攻撃している最中の脳で何が起きているかは、人を対象にした研究ではまだ確かめられていません。

認めたくない自分の一面を、相手に見て攻撃することがある

人は、自分が認めたくない性質を他人の中に見つけて、攻撃することがあります。心理学ではこの働きを「投影」と呼び、自分を守るための防衛機制の一つとして説明します。

ユング心理学では、自分で認めたくない抑圧された面を「影(シャドウ)」と呼びます。たとえば、自分の中の怠惰さを認めたくない人は、他人の気の緩みが許せなくなります。相手を批判すれば、自分の怠惰さと向き合う苦痛を避けられます。

自分の嫌な面を相手に見る働きは、攻撃の理由の一つとして考えられています。すべての誹謗中傷がこれで説明できるわけではありません。

「有名税」は、攻撃を正当化する理由にならない

「有名人なら批判されても仕方ない」という考えは、個人の尊厳を傷つける行為を正当化しません。有名であることは、人格への攻撃を受け入れる理由になりません。

有名税という言葉に同調すると、自分の攻撃を「許されている行為」と思い込みやすくなります。そう思い込むと、攻撃したくなったときに自分を止める理由がなくなります。

攻撃をやめたいときにできる3つのこと

攻撃をやめたいときは、自分の傾向を記録する、怒りを観察する、相手の立場を想像する、の3つを試せます。自分を責めずに、自分の反応を観察することから始めます。

1. 自分がどんなときに攻撃的になるかを記録する

どんな相手に、どんな状況で攻撃的になるかを書き留めます。記録を見返すと、自分の劣等感や認めたくない面に気づくことがあります。

自分だけで振り返るのが難しいときは、心理療法やカウンセリングを利用できます。専門家との対話で、自分では気づきにくい心の動きを整理できます。

2. 怒りを感じていることを観察する

マインドフルネス瞑想には、攻撃行動を減らす効果を示した実験があります。2018年に『Mindfulness』誌に載ったデステノらの研究では、3週間毎日瞑想した人は、挑発を受けたときの攻撃的な行動が、対照グループより減りました。

衝動が出てきたら、「自分は今、怒りを感じている」と言葉にして、投稿する前に一度やめます。

3. 相手の背景を想像する

批判したくなった相手が、どんな事情があり、どんな人生を生きているかを想像します。小説や映画で自分とは違う人の人生に触れることも、相手の立場を想像する練習になります。

次に攻撃したくなったときは、投稿する前に記録してみてはどうでしょうか

他人を非難したくなる気持ちは、優越感という報酬と、ネットで返ってくる反応が合わさって、何度も起こります。自分を責め続けても、この仕組みは変わりません。次に攻撃したくなったときは、投稿する前に、相手とそのときの気持ちを書き留めてみてはいかがでしょうか。

誹謗中傷を受けて苦しいときは、自分一人で悩み続けないでください。投稿の画面を保存したうえで、友人や家族のほか、法務省の「人権相談」や総務省が支援する「違法・有害情報相談センター」に相談できます。

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