AI最新動向
10月19日(米国時間)、OpenAIが研究記事として公表した(Xでの告知は10月20日7時30分JST https://x.com/OpenAI/status/2112310345863930168 )。COBOLはオンラインバンキングの40%超、対面のクレジットカード取引の80%、ATM取引の95%を支え、Fortranは天気予報や原子炉の安全解析に使われているとした。20の言語でSQLite互換のデータベースを一から作らせる評価「MultiLangBench」では、GPT-6 Astraの平均合格率が87.4%(GPT-5.6 Solは26.8%)、GPT-6 Lunaは40.3%で推定API費用は約78%低い。既存のCOBOLプログラムを動作を変えずに別の言語へ移す評価では、GPT-6.1 Solが推論の手間を小さくした設定で86.6%(GPT-5.6 Solは5.4%)、費用は39%少なく、手間を大きくすると97.9%に達した
古い基幹システムの保守・移行を、資料も作った人もいない状態からAIに任せられるかどうか
Meta、手元のMacやPCで動く30Bのオープンウェイトモデル「Muse Glimmer」の技術レポートを公開 エージェントの作業向け
10月20日4時33分(JST)、AI at Metaが投稿。4ビット精度にすれば、消費者向けのGPUを1枚積んだMacまたはPCで実用的な速さで動き、道具の使用と多段階の計画で同じ規模のオープンモデルを上回るとした。レポートではモデルの構造、蒸留の手順、量子化などを説明している。
業務データを外に出さずに、手元の機械でエージェントを動かす選択肢が広がる点
Perplexity、AIエージェント「Perplexity Computer」をMacの中だけで動かせるように モデルもエージェントもMac上で動き、機密データをクラウドに送らない
10月21日0時48分(JST)、Perplexityが投稿。Macのアプリやローカルのファイルと連携して作業する。手元の作業には自社でQwen 3.8を追加学習した「PPLX Pro」を使い、Computerのクレジットを消費しない。複雑な作業は「Hybrid」でクラウドのモデルとMac上のモデルに分け、機密データを手元に残せる。Pro・Max・Enterpriseの契約者向けで、Apple siliconのMacで使え、36GBのユニファイドメモリを推奨している
顧客情報を扱う作業でも、外部に送らずにエージェントを使える構成が製品として出てきた点
Mistral AI、音声モデル「Voxtral 3」と音声エージェントAPIを公開 文字起こし、35超の言語の音声合成、30分の録音から声を再現
10月21日1時(JST)、Mistral AIが投稿。文字起こしの「Voxtral Small Transcribe 3」は多言語の文字起こし、話者の区別、文脈に合わせた語の補正ができ、話し手が話し終えたことを検知して、エージェントが待たずに応答できる。音声合成の「Voxtral Mini TTS 3」は35超の言語と50超の方言に対応し、会話から感情・速さ・強調を読み取るほか、[emotion=sad][pace=slow]のようなタグで行ごとに指定できる。「Pro Voice」では最大30分の録音から本人の声を再現する
電話の一次受付を音声エージェントで組む部品が、文字起こしから声まで1社でそろった点
OpenAI、APIのプロンプトキャッシュを12時間保持できるように 一日中動くエージェントの費用を下げる
10月21日2時56分(JST)、OpenAI Developersが投稿。共有の指示・道具・文脈を長くキャッシュに置き、リクエストの間が何時間空いても安いキャッシュ入力の料金で済む。既定の30分と12時間を選べ、1つのリクエストの中で、共有の指示は12時間、新しい会話は30分と混ぜて使える
常駐型のエージェントを動かすときの費用の前提が変わる点
Anthropic、社内の研究用モデルにサソリの神経毒に結合するタンパク質を設計させ、211件を実験、17件が基準を満たす 投資調査会社と組んだ非専門家の取り組み
10月20日(米国時間)、Anthropicが科学ブログで公表した(Xでの告知は10月21日1時18分JST https://x.com/AnthropicAI/status/2112579251555721573 )。金融の投資調査会社Citrini Researchが「AIがあれば意欲のある非専門家が人の健康の本物の課題に取り組めるか」と持ちかけたのがきっかけ。社内の研究用モデルが「Claude Science」の中で64時間ほぼ自律で動き、30万件超の設計を作り、211件をAdaptyv BioとTwist Bioscienceが実験で確かめたところ、17件が基準を満たした。メキシコ・北アフリカ・中東のサソリの毒素には結合し、ブラジルの種の毒素には結合しなかった。211件の設計とデータはすべて公開する。サソリに刺される人は年120万人以上、死者は3250人超で、治療薬の開発費を回収しにくい「顧みられない熱帯病」とされている。AI動向の論者アンドリュー・カラン氏は、35ページのプロンプトでClaudeが300のサブエージェントを生み、候補31.8万件から211件を選んだと紹介した https://x.com/AndrewCurran_/status/2112581387056554402
専門家でない組織でも、AIに長時間任せて実験まで回せる段階に来た点
OpenAI、創薬の進行管理プラットフォームのOrchestra Bioを買収 生命科学向けの「Rosalind」と統合
10月20日、OpenAIが公表した。Orchestra Bioは、製薬・バイオの開発チームが社内の部署と外部の協力先にまたがる試験や作業の進み具合を、人とAIエージェントで追う仕組みを提供している。新薬は標的の発見から米国での承認まで平均10〜15年かかるとし、生物・化学の推論を助けるGPT-Rosalind、実験の計画と結果の分析を助けるRosalind Workbenchと合わせ、研究の発見を試験・判断・次の手順につなぐエージェントを作るとした。買収額は公表されていない
モデルの提供元が、業界ごとの業務の進行管理そのものを取り込み始めた点
OpenAIの元最高研究責任者ボブ・マグリュー氏のArda、評価額15億ドルで2億3000万ドルを調達 製造エンジニア向けのエージェント
AI動向の論者アンドリュー・カラン氏が10月20日23時2分(JST)に投稿した。マグリュー氏は、自社のエージェントは「ClaudeやCursorがプログラマーにしていることを、製造エンジニアにする」もので、すでに防衛企業のAndurilが使っていると述べたという。Arda自身の発表は確認していない。
コーディングで先に起きた置き換えを、製造の設計・技術の仕事へ広げる投資
Claudeに15分おきに全セッションを見回らせ、名前の先頭の絵文字で「誰の番か」を示させる無料のスキル「claude-session-triage」
作者のチャエン氏(デジライズCEO)が10月19日8時56分(JST)に、Claude Codeのセッションを15〜20個同時に回せている理由として公開を告知した https://x.com/masahirochaen/status/2111969604360880253 。Claudeデスクトップアプリ(Codeタブ)の定期実行に載せると、Claudeが各セッションの最後のやり取りを読み、⏳作業中・👀確認中(デプロイやレビューの結果待ち)・📤送信待ち(下書きができて送るだけ)・🔴要確認(質問・承認待ち・エラー)・✅完了の5つのどれかを名前の先頭に付け直す。🔴と📤のセッションごとに何をすればよいかを1枚のMarkdownにまとめ、23時30分以降の回だけ✅のセッションをアーカイブする。迷ったら🔴にする設計
並行で回すエージェントが増えるほど、人が見るべきものを選び出す仕組みが要る点
デジタル庁、政府職員約18万人を対象にAIエージェントの利用環境の提供を開始 安全のためのルール「源内基準」も公表
10月20日、デジタル庁が公表した。政府職員向けの生成AI環境「ガバメントAI 源内」で、対話で手軽にエージェントを作って動かせる「エージェントチャット」を同日から各府省庁に順次導入し、コードの生成・修正、ファイル操作、コマンド実行、テストを自律的に進めるAIコーディングエージェントに相当する「源内工房」を12月ごろまでに導入する。同庁の調査では、この水準の環境を専門職員に限らず一般の職員が日常業務で使える政府共通基盤として約18万人規模で導入するのは世界初だという。「源内基準」は利用者・管理者・開発者の立場ごとに責務と遵守事項を定め、AIセーフティ・インスティテュート(AISI)の協力を得てまとめた。関連報道:https://www.itmedia.co.jp/news/article/2610/20/2000002428/
一般の職員にエージェントを作らせる前提で、使う人・管理する人・作る人の責任を分けて書いた点
OpenAI、対中国のAI半導体の輸出規制を支持する働きかけをやめたとPoliticoが報道 規制に反対するNvidiaとトランプ政権の路線に近づく
Politicoが10月20日に報じた。OpenAIは昨年の多くの期間、Nvidiaなど米国の半導体企業による中国への先端プロセッサの販売を厳しく制限するよう求めていたが、議会スタッフとロビイストによると、その主張をやめたという。年末のレームダック会期で国防予算の法案に新たな半導体規制を加えるかが争点になるなかで、議会の対中強硬派は有力な業界の味方を失った。ロビイストの1人は「彼らはメッセージを受け取った。今は大統領に逆らう意欲はない」と語った。OpenAIの広報は議員や政権との面会についての質問に答えず、Nvidiaはコメントを控えた
安全と国益を掲げてきた開発元が、政権との関係を優先して政策の立場を変えたという見方
有識者の受け止め
ズヴィ・モウショウィッツ(AI論評家)、OpenAIが輸出規制の支持をやめたとの報道に「勝者は中国とNvidiaだ」
10月21日1時5分(JST)投稿。シンクタンクの研究者サミュエル・ハモンド氏の「OpenAIはNvidiaをなだめるためにAI半導体規制の支持から手を引いたようだ。米国のAIの覇権と国家安全保障の両方に悪い」という投稿を引き、「OpenAIは輸出規制を支持しないことで、米国の利益、安全対策、最先端の開発のペースを調整する取り組み、そしてOpenAI自身の直接の利益を犠牲にしている。勝者は中国とNvidiaだ。もし私がOpenAIにいたら、これについてとても厳しい質問をしているだろう」と書いた
規制を求めるかどうかが、AI企業の安全への姿勢を測る物差しとして見られている点
イーサン・モリック(ウォートン校教授)、新刊の発売に合わせ「指数関数の上の30カ月」 GPT-4を超えるモデルは180、うち19はスマホで動く
10月21日0時57分(JST)、自身のニュースレターで公開。新刊『Co-Existence』の発売日に、前作から30カ月の変化を図にまとめた。図は、Claude ProjectsでOpus 5.5に作らせた。1つの「指揮役」のエージェントが必要に応じて別のエージェントを立ち上げて指示する仕組みで、「数行の提案を渡しただけで、何時間もかかるはずの作業(調べもの、グラフ、レイアウト、画像、出典のすべて)を数分でやった」「人のチームなら怒り出すような『もっと良くして』という反応にも応え、私の計算の誤りまで見つけた」と書いた。2023年初めから2024年初めまではGPT-4が唯一の最高のモデルだったが、その後はAnthropic・Google・OpenAIの20のモデルが入れ替わりで首位に立ち、GPT-4の公開時より優れたモデルは180あり、うち多くはオープンウェイトで、19はスマートフォンで動くという。1回の指示でAIがこなせる人の作業の量を測るMETRの指標は、GPT-4の公開から測定の終わりまでに8回倍増したとした。10月20日8時58分(JST)のXでは、新しいClaude Projectsを「マルチエージェントの作業のための優れた画面だ」と評した https://x.com/emollick/status/2112332499917681028
対話で1手ずつ指示する使い方から、指揮役のAIに任せる使い方へ移ったという実感
ゲイリー・マーカス(認知科学者)、「需要より計算資源のほうが多い」とのアナリストの発言に「AIの収益だけでは費用を正当化できないと2023年8月から言ってきた」
10月20日8時56分(JST)投稿。米CNBCの記者カール・キンタニラ氏が、調査会社ガートナーのアナリストがCNBCに語った「現在、私たちは需要より多くの計算能力を持っており、フリーミアムで大量のトークンと処理能力が無料で配られている。AI競争の誰もが最後まで残る位置を争っている」という発言を紹介した投稿を引き、「2023年8月から私が言ってきたこと:AIの収益だけでは、その費用を正当化するのに足りない。これまでのところ、数字は私を否定していない」と書いた。
計算資源への巨額の投資を、利用料の収益で回収できるかどうか
AI活用事例
江戸川区、生成AIを研修を受けた職員1271人が使い、年3万5494時間の業務を削減と試算 最低賃金換算で約4351万円、ROIは1136%
ITmedia ビジネスオンラインが10月20日に報じた。8月26〜27日の「AI博覧会 Summer 2026」で、江戸川区経営企画部DX推進課の渡辺良光課長が講演した内容による。2021年4月のAI議事録作成から始め、児童相談所の相談支援、火災の煙の検出、2023年7月から庁内で生成AIを使い、2024年2月に区の公式サイトに生成AIの検索を入れた。2026年4月に「江戸川区のAI活用に関する基本方針」を策定した。削減時間は生成AIの利用状況から試算したもので、東京都の最低賃金で換算すると約4351万円になる。渡辺氏は「まずはAIにある程度ベースを考えてもらい、そこから職員が実情や考えを反映させて完成させていく。そうした仕事のやり方に変わってきた」と話した。区の公表資料は確認できず、ITmedia系以外の報道も見つからなかった
効果を、研修を受けて使った人の数と時間で数えている点。ツールを配っただけの人は数に入っていない


