Facebook広告を始めるとき、最初に手間取るのは広告の中身ではありません。アカウントの構造です。
ページ、ビジネスポートフォリオ、広告アカウント、ピクセル。似た名前のものが並び、どれを誰が作るべきかが分かりにくくなっています。代理店に依頼する場合は、準備ごと任せたほうが早いのも事実です。
ただ、任せ方を間違えると、あとから自社に取り戻せなくなるものがあります。この記事では、出稿までに必要な準備と、代理店に権限を渡すときの注意点をまとめます。
広告を出すのに何が必要か
必要なものは5つあります。
1つ目は、Facebookの個人アカウントです。ページを作るために要ります。
2つ目は、Facebookページです。広告のリンク先が自社サイトであっても、出稿にはページが必要になります。広告の配信元として使われるためです。
3つ目は、ビジネスポートフォリオです。以前はビジネスマネージャと呼ばれていた、会社単位の管理の器にあたります。ページや広告アカウントを、この下にぶら下げて管理します。
4つ目は、広告アカウントです。実際に広告を作り、費用が発生する単位です。
5つ目は、データセットです。旧称はピクセルで、コンバージョンの計測とリターゲティング用リストの蓄積に使います。Google広告やYahoo!広告でいうタグにあたるものです。
Instagramにも配信するならInstagramアカウントを、ECならカタログを、あわせてビジネスポートフォリオに追加します。
なぜ個人アカウントのまま始めてはいけないのか
Facebookページは、個人のアカウントだけでも作れます。作れてしまうので、そのまま運用が始まることがよくあります。
この状態では、ページの所有者は会社ではありません。ページを作った個人です。会社の側から権限を付け替える手段がなく、その人が辞めたときに取り戻す方法が事実上なくなります。
代理店から権限の申請が届いたときにも影響します。ページがどのビジネスポートフォリオにも属していない場合、承認の画面はビジネス設定のリクエスト一覧に出てきません。ページを開いて設定に進み、ページ設定からページアクセスを選び、処理待ちのアクセスリクエストの欄で承認することになります。
先にビジネスポートフォリオを作り、その下にページを置いてから始めるほうが、後の手戻りがありません。
アセットの所有者は、あとから変更できない
ここが最も重要な注意点です。
広告アカウント、ページ、Instagramアカウント、データセット、カタログ。これらのビジネスアセットの所有者は、作成したユーザーが所属するビジネスポートフォリオになります。そして一度決まった所有者は、原則として変更できません。
例外はページとカタログの2つだけです。この2つは所有者を移せますが、広告アカウントとデータセットは移せません。
つまり、代理店に広告アカウントの作成を任せると、その広告アカウントは代理店の資産になります。運用を自社に戻したいときも、別の代理店に移したいときも、アカウントごと移管することはできません。
権限をもらえば運用を続けること自体は可能です。ただし、代理店が所有するアカウントを別の会社がそのまま使う形には、所有者側の同意が要ります。断られる可能性も見込んでおいてください。
だから、広告アカウントとデータセットは自社のビジネスポートフォリオで作ります。ここだけは代理店に任せないほうが安全です。
支払い情報は、代理店ではなく自社で登録する
広告費の支払い方法も、自社の広告アカウントに自社の決済手段を登録します。
代理店に登録してもらうと、代理店を変えたあとも以前の代理店の側から引き落とされ続けたり、支払い情報を自社で変更できなくなったりすることがあります。
運用を全面的に依頼する場合でも、支払い情報だけは自社で握っておくことをお勧めします。
代理店には、ユーザーではなくパートナーとして権限を渡す
権限の渡し方には2通りあります。担当者個人をユーザーとして招待する方法と、代理店の会社をパートナーとして追加する方法です。
代理店に依頼するなら、パートナーを選んでください。
ユーザー招待では、その担当者個人に権限が付きます。担当が代わるたびに割り当て直しが必要になります。辞めた人の権限が残ったままになったり、引き継ぎ漏れで誰も操作できなくなったりする原因にもなります。
パートナーなら、会社と会社の関係として権限が付きます。相手側で担当者が代わっても、こちらの設定を触る必要はありません。契約が終わったときも、パートナーを削除するだけで権限が一括で切れます。
手順はこうです。ビジネス設定の左メニューからパートナーを開き、追加を選んで、パートナーにあなたのアセットへのアクセスを許可、を選びます。次の画面で代理店のビジネスIDを入力します。IDは代理店の担当者に確認してください。
渡してよい権限と、渡してはいけない権限
パートナーを追加すると、アセットごとに権限の範囲を選ぶ画面が開きます。
広告アカウントには、キャンペーンを管理、を付けます。広告の作成、編集、パフォーマンスの確認ができる範囲です。支払い情報へのアクセスは含まれません。
ページには、広告、を付けます。ページを広告の配信元として使うために必要な権限で、インサイトの閲覧も一緒に付きます。Instagramアカウントも同じく、広告、です。
データセットには、イベントデータセットを管理、を付けます。コンバージョンの設定まで任せる場合の範囲です。数値の確認だけでよければ、表示の権限にとどめます。
渡してはいけないものもあります。
広告アカウントを管理、という権限は、キャンペーンを管理と名前が似ていますが別物です。支払い方法の管理や、ほかのユーザーへの権限変更までできてしまいます。
ビジネスポートフォリオ全体の管理者アクセスや全権限も渡しません。財務アナリスト、財務エディターといった財務の役割も、広告運用には不要です。
判断の軸は一つです。その権限がなくても広告を出せるなら、渡さない。あとから足すのは簡単ですが、渡しすぎた権限は気づかれないまま残ります。
権限が承認されないときに確認すること
設定したのに相手が操作できない、という連絡が来ることがあります。原因はだいたい決まっています。
1つ目は、相手の個人Facebookアカウントで二段階認証が有効になっていないことです。この状態だと、招待を受け取っても承認できません。招待を送る前に、二段階認証を有効にしておいてもらうよう伝えておくと早く済みます。
2つ目は、招待の期限切れです。招待リンクには有効期限があり、一般に30日とされています。過ぎていたら再送します。
3つ目は、承認する側の権限不足です。ページの管理者権限を持たないアカウントでログインしていると、承認のボタン自体が表示されません。承認作業はPCから行ってください。
契約が終わったら、パートナーを削除する
運用の契約が終わったら、その日のうちに権限を外します。
ビジネス設定のパートナーの一覧から該当する代理店を選び、削除します。これで、そのポートフォリオ配下のアセットへのアクセスがまとめて切れます。
一部の業務だけ継続する場合は、削除ではなく範囲を絞ります。アセットを共有する画面から、不要になったアセットの割り当てを外してください。
半年に一度ほど、パートナーの一覧を開いて、心当たりのない会社が残っていないかを見ておくとよいと思います。権限を付与した日と範囲を記録しておけば、この確認は数分で終わります。
よくある疑問
Q:すでに代理店が作った広告アカウントで運用しています。自社に移せますか。
A:広告アカウントの所有者は変更できないため、アカウントごと移すことはできません。自社のビジネスポートフォリオで新しい広告アカウントを作り、そちらへ切り替える形になります。過去の配信実績や機械学習の蓄積は引き継げないので、切り替えの時期は慎重に決めてください。
Q:Facebookページが担当者個人の所有になっています。どうすればよいですか。
A:ページとカタログは例外的に所有者を変更できます。ページの管理者権限を持つアカウントから、自社のビジネスポートフォリオに追加してください。この操作はページの管理者本人にしかできないため、その担当者が在籍しているうちに進めるのが確実です。
Q:ビジネスポートフォリオは、部門ごとに分けたほうがよいですか。
A:分けると、アセットの共有やパートナーの設定を部門ごとに行うことになり、管理の手間が増えます。会社単位で1つにまとめ、権限の範囲で使い分けるほうが扱いやすくなります。
準備の順番を間違えなければ、後の手戻りはほとんどない
整理すると、順番はこうなります。
ビジネスポートフォリオを会社名義で作る。その下にFacebookページとInstagramアカウントを追加する。広告アカウントとデータセットを自社で作る。支払い情報を自社で登録する。最後に、代理店をパートナーとして追加し、必要な範囲だけ権限を渡す。
この順で進めておけば、代理店を変えるときも、運用を自社に戻すときも、アセットは手元に残ります。逆に、代理店に準備ごと任せると、最初の数日は楽になる代わりに、あとで戻せないものが生まれます。
すでに運用が始まっている場合は、まず所有者の欄を確認してみてはいかがでしょうか。ビジネス設定から各アセットを開けば、誰が所有しているかが表示されます。ページとカタログだけは、今からでも自社に移せます。