BPM230の16分は筋肉だけで叩けるか? 力任せでは響かない

腕の筋肉の力だけでは、BPM230の16分を1曲叩き続けられません。ここでいう筋肉だけで叩くとは、跳ね返りを使わず、手首を固めて腕の力でスティックを振る叩き方です。

しかし、速い曲が叩けないのは腕の力が足りないからで、鍛えれば叩けるようになる、と考えている方も多いのではないでしょうか。

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BPM230の16分は、片手で1秒に約7.7打になる

16分音符は1拍に4打です。BPM230は1分に230拍なので、両手では1秒に約15.3打(230×4÷60)になります。左右の手で交互に叩くと、片手は1秒に約7.7打です。

テンポごとの打数は、以下のとおりです。

テンポ(16分音符)両手の打数(1秒あたり)片手の打数(1秒あたり)
BPM160約10.7打約5.3打
BPM200約13.3打約6.7打
BPM230約15.3打約7.7打

1曲4分のあいだ16分を刻み続けるとすると、片手だけで約1,840打になります。BPM230の16分は、片手で1秒に約7.7打を、1曲のあいだ続ける速さです。

片手で1秒に7.7打は、ドラマー22人を測った研究のいちばん速い条件より速い

この7.7打を、ドラマーの手首の動きを測った2つの研究の数字と比べます。2009年に Neuroscience Letters に載った藤井進也さんらの研究は、片手でリズムを刻む動きの上限を、これまで1秒に5回から7回と考えられてきたと書いています。同じ研究で、世界最速のドラマーとして測られた奏者は、スティックで1秒に10打を叩きました。

2020年に Frontiers in Psychology に載ったBeveridgeさんらの研究は、ドラマー22人の手首の筋肉を測りました。いちばん速い条件は片手で1秒に約6.7打で、BPM200の16分と同じ速さです。この条件では、手首を曲げる筋肉と伸ばす筋肉が同時に力を出して手首が固まる状態(共収縮)が、ほかのテンポより増えました。

BPM230の16分は、この研究のいちばん速い条件より、片手で1秒に約1打多く叩く速さです。 手首を固めて腕の力で押す叩き方のまま、片手で約1,840打を続けることはできません。

上手なドラマーほど、手首が固まりにくい

Beveridgeさんらの研究では、上手なドラマーほど、手首が固まる状態が少なくなりました。上手なドラマーは、手首を曲げる筋肉と伸ばす筋肉が交互に働いていました。藤井さんらの研究の世界最速の奏者も、手首を固めずに柔らかく保って、1秒に10打を安定して叩いていました。上手なドラマーほど手首が固まりにくく、研究者らはその理由を、跳ね返りの使い方にあると考えています。

打ったあとにスティックを押さえ込むと、音が豊かに聴こえなかった

叩き方の違いは、音の響きにも出ます。2008年の学会で、Sofia Dahlさんらが、プロのドラマー1人の2種類の打ち方を比べました。1つは跳ね返りに任せる打ち方で、もう1つは打ったあとにスティックを打面の近くで止める打ち方です。

止める打ち方は、跳ね返りに任せる打ち方より、打面を押す力のピークが高くなりました。ところが、2つの音を聴き比べた8人は、跳ね返りに任せた打ち方のほうを、音が豊かだと評価しました。奏者1人と聴き手8人の小さな研究ですが、この研究では、打ったあとにスティックを押さえ込むと、打面を押す力が高くても、音は豊かに聴こえませんでした。

BPM230の16分を叩くために、叩き方を変える

叩き方を変える手順は、以下のとおりです。

  1. 叩きたい曲の片手の打数を計算する。BPM×4÷60÷2で出る。BPM230の16分なら約7.7打になる
  2. 手首を固めずに叩く
  3. 打ったあと、スティックを打面の近くで止めず、跳ね返りをそのまま次の振り上げにつなげる

BPM230の16分は、腕を鍛えるより先に、手首を柔らかく保って跳ね返りで叩く方向へ、叩き方を切り替えます。

よくある疑問

Q:ドラムに筋肉は必要ですか?

A:研究では、上手なドラマーほど手首が固まる状態が少なく、跳ね返りを使っていると考えられています。BPM230の16分のような速い曲では、腕の筋肉の力だけでは1曲を叩き続けられません。

速い曲が叩けないときは、片手の打数を計算する

速い曲が叩けないときは、腕を鍛える前に、叩きたい曲の片手の打数を計算してみてはいかがでしょうか。そのうえで、手首を柔らかく保ち、跳ね返りで叩く方向へ、叩き方を切り替えてみてください。

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