ゼノギアスは、1998年2月11日にスクウェアから発売されたPlayStation用のRPGです。物語は1万年にわたり、同じ人物が時代ごとに名前を変えて生まれ変わります。この記事は結末まで触れます。
しかし、解説動画を見ても要約を読んでも、誰が味方で誰が敵なのか、なぜ争っているのかがわからないまま終わってしまう方は多いのではないでしょうか。登場人物の関係と世界設定を図にすると、どうなるのでしょうか?
ゼノギアスの登場人物は、デウスを復活させたい側と止めたい側に分かれる
ゼノギアスの登場人物を、宇宙から墜落した兵器デウスを復活させたい側と、デウスを止めたい側に分けると、誰が何をしたいのかがわかります。 私も要約を読んだだけでは理解できず、図にして整理しました。

以下のとおりです。
| 側 | 人物 | 立場と目的 |
|---|---|---|
| 復活させたい側 | ミァン | デウスの半身。デウスを完全な形で復活させる |
| カレルレン | ソラリスの実権を握る人物。デウスを復活させ、ソフィアの生まれ変わりとともに神の場所へ行こうとする | |
| ラムサス | ソラリス軍の総司令官。カレルレンの指示で動く | |
| 止めたい側 | フェイ | 主人公。アベルの生まれ変わり |
| エリィ | ヒロイン。エレハイムの生まれ変わりで、ソラリスの軍人 | |
| シタン | フェイを見張る役を装いながら、フェイを導く | |
| エメラダ | 約4000年前の文明が残した、ナノマシンの生命体 | |
| バルト | アヴェ王国の正統な後継者 | |
| ビリー | 「教会」の贖罪審問官 | |
| リコ | キスレブに住む亜人で、闘技場の王者 | |
| チュチュ | ウーキィ族の少女 | |
| マリア | 空中都市シェバトの少女 | |
| 復活させたい側と止めたい側の両方に関わる人物 | グラーフ | 前世のフェイ(ラカン)から分かれた人格。フェイの父カーンの体を乗っ取り、デウスを復活させてから壊そうとする |
| 天帝カイン | ソラリスの統治者。1万年生き続け、フェイが人を導ける存在かを見極めようとする |
わかりにくい点の一つが、ミァンとエリィの関係です。2人は、もとは同じ1人から分かれた存在で、デウスが復活する直前に、ミァンはエリィの体の中で目覚めます。
ゼノギアスの世界では、人間はデウスの部品として作られた
相関図の中心にいるデウスを知ると、世界設定がわかります。ゼノギアスの世界の人間は、墜落したデウスを直すための部品として作られました。
約1万年前、恒星間移民船エルドリッジは、積んでいたデウスに制御を奪われました。艦長は船のブロックを切り離して、名もない惑星へ墜落させます。生き残った人間は、少年アベル1人だけでした。作中の暦(創始暦)は、この墜落の年を元年にしています。
デウスは、次の4つでできています。
| 部分 | 何をするか |
|---|---|
| デウス | 生体兵器で、戦闘の司令塔。自分で傷を直す |
| ゾハル | 人類の故郷の星ロスト・エルサレムで見つかった動力源 |
| カドモニ | ゾハルとデウスを制御する、生き物の脳のようなコンピューター |
| 波動存在 | 宇宙が始まる前からある高次元の存在。ゾハルの中に閉じ込められ、元の次元へ帰りたがっている |
墜落を生き延びたカドモニは、人間を生み、増やし、進化させ、最後に部品として回収する計画を始めました。最初に作られた人間が天帝カインで、管理役のガゼル法院と、人間全体の管理者ミァンがそれに続きます。
デウスは、星間戦争の時代に人類が作った惑星侵攻用の兵器である
では、そのデウスを作ったのは誰なのでしょうか。デウスを作ったのは、地球を出て宇宙に広がった人類です。
公式の設定資料集にもとづく年表では、墜落より前に使われていた暦(T.C.)で4751年にゾハル計画が始まり、4766年にデウスが完成しました。当時は、銀河連邦と移民船団が星間戦争をしていました。
デウスを作った人類がデウスに求めたのは、狙った惑星をデウスが自分の判断で動いて制圧することでした。暴走したデウスはエルドリッジを乗っ取り、行き先を人類の故郷の星ロスト・エルサレムへ変えています。
ミァンは、デウスを直すためのプログラムが人の体を持った存在である
デウスを直す役目を担ったのが、ミァンです。ミァンがデウスの復活を目指すのは、本人の望みからではなく、そのために作られた存在だからです。
ミァンが生まれたきっかけは、墜落の直前にアベルが「母に会いたい」と願ったことでした。その願いにカドモニの仕組みが反応し、最初の人造人間、オリジナル・エレハイムが作られます。墜落したあと、デウスを直す役目のプログラム「システム・ハワー」がこの体を使い、2人の分身を作りました。アベルの母代わりになるエレハイムと、デウスを直す役目を持つミァンです。ハワーは、アラビア語でイブを指す名前です。
ミァンは人間を育て、デウスを直すのに要る部品を集めます。死ぬと世界のどこかの女性の中で目覚め、記憶を引き継ぎます。約4000年前のゼボイム文明では、当時の人類は部品として欠陥が多すぎると判断し、核戦争を起こして文明をやり直させています。
フェイとエリィは、1万年のあいだ生まれ変わりを繰り返している
ミァンが人類を育てているあいだ、主人公とヒロインも生まれ変わりを繰り返していました。フェイとエリィは、時代ごとに名前を変えて生まれ変わり、出会うたびに惹かれ合います。

以下のとおりです。
| 時代 | いつ | 主人公 | ヒロイン | 何が起きたか |
|---|---|---|---|---|
| 原初の時代 | 約1万年前 | アベル | エレハイム | カインがアベルを殺そうとし、エレハイムがかばって命を落とす |
| ゼボイム | 約4000年前 | 医者のキム | 看護師のエレハイム | 2人の遺伝子から娘のエメラダが生まれる。ミァンが核戦争を起こし、文明は海に沈む |
| ソラリス戦役 | 約500年前 | 画家のラカン | 教母のソフィア | ソフィアが戦いで命を落とし、ラカンはゾハルとの不完全な接触からグラーフを生む |
| 本編 | 現代 | フェイ | エリィ | デウスを倒し、2人で生きて帰る |
ソラリス戦役でソフィアを慕っていたのがカレルレンです。カレルレンは500年の延命を経て、本編ではソラリスの実権を握っています。
デウスの復活に関わる人物は、最後に目指すものがそれぞれ違う
年表で見たとおり、デウスに関わった経緯は人物ごとにばらばらです。わかりにくさの理由の一つは、デウスの復活に関わる人物どうしが、目指すものが違うまま協力していることです。
以下のとおりです。
| 人物 | 最後に目指すもの |
|---|---|
| ミァン | デウスを完全な形で復活させる |
| カレルレン | デウスを復活させたうえで、波動存在とともに高次元へ行く |
| グラーフ | 波動存在と完全に接触して力を得て、デウスを復活させてから壊す |
| 天帝カイン | 人がデウスから離れて生きられるかを見極める |
カインは、ソラリスの統治者でありながら、部下のシタンをフェイのもとへ送り、フェイが人を導ける存在かを見極めさせていました。
物語の土台にある「偽物の神」という着想は、1世紀のグノーシス主義に見られる
ここまでの相関図と世界設定には、もとになった考え方があります。ゼノギアスの土台には、「世界と人間を作った神は偽物で、本物の神は閉じ込められている」という考え方があると思います。
この考え方は、グノーシス主義に見られます。グノーシス主義は1世紀に起こり、2〜3世紀に最も広まりました。物質の世界は格の低い造物主(デミウルゴス)が作ったもので、人間の本当の自分は体の中に閉じ込められている、と考えます。ゼノギアスでは、偽物の神がデウス、閉じ込められた本物の神が波動存在に当たると考えられます。
シナリオを書いた田中香さんは、物語の中心にある問いを「私たちはどこから来たのか、私たちは何者か、私たちはどこへ行くのか」だと語っています。監督の高橋哲哉さんと共通して関心を持っていたものとして、ニーチェ、フロイト、ユング、映画『THX 1138』『ソイレント・グリーン』が挙げられています。
アーサー・C・クラークが1953年に発表した小説『幼年期の終り』も、人類より上の存在が人類を管理し、次の段階へ導く話です。その管理者の名前は、ゼノギアスの登場人物と同じカレルレンです。
よくある疑問
Q:ゼノギアスの物語が、ほかのSFより難しいのはなぜですか?
A:元になった考え方が1つではないからです。グノーシス主義、ユダヤ教の神秘思想、フロイトやユングの心理学、ニーチェの哲学が同時に重なっています。そのうえ、同じ2人が時代ごとに名前を変えて生まれ変わり、主人公の中には人格が3つあります。相関図と年表で、まず立場と時代を分けて見ると追いやすくなります。
Q:ゼノギアスの物語は、ゲームの中で全部描かれていますか?
A:描かれていません。ゼノギアスは全6部の物語の第5部として作られていて、それより前の歴史は設定資料集『ゼノギアス パーフェクトワークス』にまとめられています。
相関図と年表を手元に置いて、もう一度物語をたどる
相関図で人物の立場を、年表で生まれ変わりの流れを知っておくと、ゼノギアスの物語は追いやすくなります。 解説動画やゲームをもう一度たどるときに、2つの図を手元に置いて見比べてみてはいかがでしょうか。