中間管理職はAIに仕事を奪われるのか?管理職のポストの数はどうなるか

AIで中間管理職の仕事がすべてなくなることはありませんが、管理職のポストの数は減る可能性が高いと考えられます。日本の管理職の多くは自分でも資料作成や案件を担当していて、生成AIで代わりにできるのは、こうした作業だからです。作業をAIで済ませられるようになると、判断・調整・責任を担う管理職は、1人で今より多くの部下を受け持てます。

しかし、よく見かけるのは「事務的な管理業務はAIに代替されても、部下の動機づけや部門間の調整は人に残る」という説明です。この説明は、日本の管理職が実際にどの仕事に時間を使っているかを踏まえているのでしょうか。

この記事では、調査データをもとに、管理職のポストが減る理由と、減る時期を左右する条件を順に整理します。

目次

日本の管理職の約9割は自分でも現場の業務を担当している

リクルートワークス研究所が2019年3月に管理職2,183人に行った調査では、87.3%がプレイングマネジャーでした。プレイング業務をしていない管理職は12.7%にとどまります。

日本の管理職の大半は、自分の担当業務と締め切りを持ちながら、その合間に部下の育成や評価をしています。日本の管理職の多くは、管理と現場の業務を1人で兼ねています。

海外の議論でいう「マネジャー」は、部下の育成・評価・調整を専任で担う人を指すことが多いと思います。この前提の違いを考えずに海外の議論を当てはめると、結論が日本の実態と合わなくなります。

生成AIで代わりにできるのは文章・資料・集計の作業である

生成AIが得意なのは、文章の作成、表の作成、資料の下書き、長い情報の要約です。管理業務のうちAIに置き換えやすいとされる進捗の集計、報告書の作成、議事録の要約、数値の可視化も、同じ種類の作業です。

一方で、部下の評価を最終的に決めること、対立する社員の間に入って話をまとめること、決裁して結果に責任を持つことは、当面は人が担います。これらは判断を伴う仕事だからです。

ここまでは一般的な説明と同じです。違いが出るのは、AIで代わりにできる作業に、管理職がプレイヤーとして担当している業務も含まれる点です。プレイングマネジャーの場合、作業をAIで済ませられるようになると、残るのは今の仕事のごく一部です。

判断・調整・責任だけを担う管理職は少ない人数で足りる

作業をAIで済ませた後に管理職に残るのは、判断・調整・責任の3つです。この3つだけを担う管理職は、1人で今より多くの部下を受け持てます。

進捗の確認や資料の作成、数字の集計に時間を取られなくなるからです。仮に1人が受け持つ部下が10人から30人に増えれば、必要な管理職の数は3分の1になります。

Gartnerは2024年10月、2026年までに20%の組織がAIを使って組織の階層を減らし、その組織では現在の中間管理職のポジションの半数以上がなくなると予測しました。この予測が示すのは、管理職の役割は残っても、今と同じ人数を置く必要がなくなるという見通しです。管理職という役割は残り、管理職の人数が減ると考えられます。

課長の給与は残業代を含めた非管理職より高いとは限らない

産業能率大学総合研究所が2023年7月に行った第7回「上場企業の課長に関する実態調査」は、従業員300人以上の上場企業で部下を持つ課長809人が対象です。所属する組織の課長の賃金について、「課長の給与は、残業代を加算した非管理職よりも高い水準にある」にあてはまると答えた課長は37.6%でした。

残業代を加えた非管理職より課長の給与が低いと答えた課長も、20%弱いました。管理職になると収入が減ることがあるという話は、以前から言われてきました。

報酬の面で魅力の小さいポストは、会社が数を減らそうとしたときに、反対する人が少なくなります。そのポストに就きたい、守りたいと考える人が少ないからです。報酬面の魅力が小さい管理職のポストほど、組織を見直すときに減らす案が通りやすくなると思います。

管理職を減らす判断は競合との差が業績に出たときに通りやすい

AIで作業を代わりにできるようになっても、すぐに管理職が減るわけではありません。日本企業は雇用を守る慣行が強く、社内の合意にも時間がかかるため、自分から人員を減らすことは少ないと思います。

人員構成を見直す判断が通りやすいのは、同じ品質の商品やサービスをより安く速く提供する競合が現れ、その差が業績に表れたときだと思います。業績の差は数字で示されるため、社内で反対しにくいからです。

管理職がいつ減るかは、AIの性能よりも、自分の会社の業績と競争の状況で決まると考えられます。

この記事の見方には弱い点が3つある

この記事の見方には、データの古さ、代替の遅さ、仕事量の増加という3つの弱い点があります。それぞれ次のとおりです。

  1. 約9割がプレイングマネジャーだという数字は2019年の調査で、生成AIが仕事で使われるようになる前のものです。その後、管理職の働き方が変わっている可能性があります。
  2. 先の産業能率大学の2023年の調査で、コロナ禍前(2019年)と比べて「AIに仕事が代替されている」にあてはまると答えた課長は11.4%で、調査項目の中で最も低い割合でした。AIによる作業の代替は、まだ始まったばかりです。
  3. 作業が速くなると、仕事の量が増えることがあります。資料が10分で作れるなら、これまで作らなかった資料も作るようになり、作業の時間も人数も減らない可能性があります。

それでもこの記事の見方を取るのは、社内で仕事の量が増えても、増えた仕事を持たずに安く提供する競合が現れれば、その差が業績に表れるからです。社内で仕事が増えて管理職の数が保たれても、競合との差が業績に出れば、見直しの判断は避けられないと思います。

自分の立場は3つの観点で確かめられる

自分のポストがどれだけ影響を受けるかは、時間の使い方、競争相手、会社の過去の対応の3つで確かめられます。並べると次のとおりです。

  1. 自分の時間のうち、資料作成や案件対応などの作業が何割を占めるか。1週間記録すれば分かります。この割合が高いほど、AIで代わりにできる仕事が多くなります。
  2. 自分の会社がどこと競争しているか。国内の同業他社とだけ競っているなら、各社が横並びで動くため、変化はゆっくりになると思います。海外の企業や、別の業界から参入した企業と競っているなら、業績の差が早く表れやすくなります。
  3. 自分の会社がこれまで雇用を守ってきたか。人員を減らさずに事業を畳んだことや、赤字の部門を何年も抱えていたことがある会社は、次も雇用を守ろうとすると思います。ただし、それも競合との差が業績に表れるまでの話です。

そのうえで、判断・調整・責任のうち、自分が実際に担っているものはどれかを確かめます。作業のほかに判断・調整・責任をほとんど担っていない場合、そのポストを置く理由は弱くなります。

よくある疑問

Q:AIが進化すると、中間管理職は本当にいらなくなるのですか。

A:職種としては残りますが、人数は減る可能性が高いと考えられます。日本の管理職の多くが担っている現場の作業を、AIで代わりにできるようになるからです。判断・調整・責任を担う役割は残っても、1人で受け持てる部下が増えるため、今と同じ人数は必要なくなります。

Q:管理職として生き残るには、何を身につければよいのでしょうか。

A:身につけるスキルを考える前に、自分の時間配分を確かめることをおすすめします。作業の時間が8割を占めているなら、会社がその人に作業を割り当てている状態です。個人の学び直しで解決できる部分と、組織の設計で解決する部分を分けて考えると、負担が少なくて済みます。

Q:いつ頃、その変化は来ますか。

A:時期を左右するのは、AIの性能よりも会社の業績です。同じ品質のものを安く提供する競合が現れ、業績に差が出たときが変わり目になると考えられます。そのため、業界や会社によって数年から十年以上の差が出ると思います。

1週間の時間の使い方を記録すると自分の立場が分かる

新しいAIモデルが出るたびに自分の職がなくなるかを考えても、答えは出ません。AIの性能の向上と、会社が雇用をどうするかの判断は、別の要因で決まるからです。

会社が組織を変えるのは、競合との差が業績に表れたときが多いと思います。確かめたいのは、今週自分が作業に何時間使ったか、その作業に会社がいくら払っているか、自分の会社がどの競合に差をつけられはじめているかの3点です。

まずは1週間、自分の時間を「作業」と「判断・調整・責任」に分けて記録してみてはいかがでしょうか。

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