自分が加害しているという自覚が無いのは、その人の性質だからだと言われます。自己愛が強い。支配したい。育った家庭がそうだった。長年の習慣になっている。だから治らない、というのが専門家の結論です。
ところが、その同じ人が、職場では問題を起こしていません。外では良い人で通っています。性質が理由なら相手によって切り替わらないはずなので、2つは噛み合いません。噛み合わないところを追うと、待つのをやめる以外に、こちらから打てる手はありませんでした。
治らないと言われるのに、本人は外では良い人で通っている
性質だから治らない、とよく言われます。だから、できることは証拠を残すことと、別居や離婚を考えることだ、という話になります。
ところが、その同じ人が、外では良い人で通っています。職場での評判は悪くありません。家の中だけで出るので、周りに話しても、あの人がそんなことをするはずがない、と言われます。
この2つは、並べると噛み合いません。
家では出るのに、職場では出ない
噛み合わないのは、出る場所と出ない場所があるからです。性質が理由なら、相手が変わっても出方は変わらないはずです。
ところが、家では出る人が、職場では出しません。取引先の前でも、警察官の前でも出しません。出す相手と出さない相手があるということは、誰の前なら思いどおりになって、誰の前ならならないかを、見分けているということです。
公的な資料も、性質としては扱っていません。法務総合研究所の報告は、アメリカのカリフォルニア州の理念として、DVは学習された犯罪行為であり、したがってDV加害者はその行為を変えることができる、というものを紹介しています。学習された行動なら、相手を見て使い分けられます。
責めれば相手が黙る。だから、また責める
では、家で何が起きているのか。責めると、相手が黙るか、謝るか、言うとおりにします。責めた側から見れば、言えば思いどおりになった、ということです。
思いどおりになった以上、次も同じことをします。相手が我慢するほど、それが確かなやり方になっていきます。特別なことは起きていません。うまくいったやり方を繰り返しているだけです。
うまくいっているので、本人には直す理由がない
繰り返しが、本人にどう見えているか。責めた結果は成功として返ってきているので、直す理由がどこにもありません。
同じ報告は、日本の加害者の問題点として、自分が道徳的、社会的に悪いことをしているという意識に乏しく、自己の暴力を夫婦間の正当な行為と考えている、と書いています。
自分が間違っていた、と分かるには、失敗が手元に返ってくる必要があります。思いどおりにならなかった、損をした、という形です。ところが返ってきているのは、思いどおりになった、という結果だけです。悪いことの側に分ける材料が、本人の手元に返ってきていないのです。
話し合っても、親に言っても、家の中では変わらない
そうすると、よく挙がる方法が2つとも外れます。話し合って分かってもらう方法と、誰かに間に入ってもらう方法です。
話し合っても、思いどおりになったという結果は消えません。だから、言った直後は静かになっても、家の中は元に戻ります。
親や友人に間に入ってもらう方法も、その人の前でだけ出さなくなって、いなくなれば戻る形になりやすいと思います。職場で出さないのと同じ理由です。
専門の加害者プログラムは、これとは別のものです。ただし、効果は確かではありません。新潟医療福祉学会誌に載った2021年の論文は、諸外国の先行研究について、加害者更生の参加者の再犯率の高さや、加害者更生の効果が不確定であることを挙げています。内閣府も、プログラムの受講によって目標の達成が保証されるわけではない、と書いています。
待つのをやめる、という一手しかない
相手を変えることはできません。できるのは、変わるのを待つのをやめることだけです。それを決められるのは、いま我慢している人だけで、外にいる人には決められません。
待つのをやめた先に何をするかは、状況によって違います。ただ、我慢をやめた直後は、相手にとって、思いどおりになっていたものが、ならなくなった時期にあたります。何が起きるかは相手によって違うので、一人でやることではないと思います。
配偶者からの暴力についての相談には、全国共通の電話番号があります。#8008にかけると、最寄りの都道府県の配偶者暴力相談支援センターにつながります。受付時間は機関ごとに違うので、確かめてみてください。
相手が自分で気づくことは、まず起きません。気づくには、言えば思いどおりになる、という状態が終わることが要るからです。気づいてくれるのを待っている時間を、別のことに使えないか、いちど考えてみてはいかがでしょうか。







