KD-222とKD-200の違いは、音ではなく踏み心地に出る

20インチと22インチのキックパッドが、手元に2台あります。片方を手放すことにしました。せっかく残すなら、音の良いほうを残したい。そう考えるのは自然なことだと思います。予算に上限がないときほど、この問いは厄介になります。金額で決められないぶん、判断の材料を音そのものに求めることになるからです。

調べれば、答えらしきものはすぐ出てきます。22インチのほうが大きいので本物のバスドラムに近い。新しいモデルのほうがトリガーの性能が上がっている。だから大きくて新しいほうを残せばいい、と。

この記事が立てる問いは、その手前にあります。そもそもキックパッドに、音の良し悪しはあるのでしょうか。

目次

20インチと22インチで、音源に届く信号は変わらない

最初に構造を確認しておきます。電子ドラムのパッドは、それ自体が音を出す装置ではありません。

パッドの中に入っているのはセンサーです。センサーが打撃を検出し、その強さの情報を音源モジュールへ送ります。実際に鳴っているのは、音源モジュールの中に収められたサンプルのほうです。

だから同じ音源モジュールで鳴らす限り、パッドを替えても音色は動きません。20インチだから軽い音になる、22インチだから太い音になる。そういうことは起きないのです。パッドの口径は、スピーカーから出てくる音の周波数に一切関係していません。

パソコンのソフト音源で鳴らす場合も、構造は同じである

パッドからの情報をモジュールではなくパソコンのソフト音源で受ける構成でも、この話は変わりません。むしろパッドと音の距離は遠くなります。パッドが渡しているのは、どのくらいの強さで叩かれたかという数値だけだからです。

その数値をどんな音に変換するかは、受け取った側が決めています。だからソフト音源の設定を触らずにパッドだけを替えても、出てくる音は同じままです。ここを取り違えると、音源側で解決すべき不満を、パッドの買い替えで解こうとすることになります。

二つのパッドの違いは、口径とシェルの仕上げと重さだけである

では仕様の上で、この2台は何が違うのでしょうか。KD-200-MSは20インチ径で深さが16インチ、KD-222は22インチ径で深さが18インチです。脚を収納した状態の重量は10.9キロと12.4キロ、奥行きは633ミリと680ミリになります。

どちらもウッドシェルで、打面には生ドラムと同じ張り方のヘッドが使われています。そのヘッドの側にセンサーが組み込まれる方式です。メッシュヘッドではありません。

私は当初、片方をメッシュ式だと思い込んでいました。調べ直すと、どちらもメッシュではありませんでした。見た目が生ドラムに寄っているぶん、記憶のほうが勝手に補正していたのだと思います。

メーカー自身が、世代差を性能の差として説明していない

ローランドは、KD-222と前世代のKD-220について、違いを4つしか挙げていません。シェルの仕上げ、パーツの外観、寸法、重量です。

トリガーの方式や検出精度の世代差には、一言も触れていません。世代が新しいから拾いが良くなった、という説明を、メーカー自身がしていないわけです。ここは、買い替えを検討するときに効いてくる情報だと思います。

ビーターは、毎回ほぼ同じ場所を叩いている

ここからは私の解釈です。測定したわけではありませんので、そのつもりで読んでください。

パッドの違いが演奏に出るとしたら、それは拾いのばらつきとして出るはずです。同じ強さで叩いたのに、返ってくる音量が揃わない。その揺れが、演奏の粒立ちを壊していきます。

ところがキックでは、この揺れが起きにくくなっています。ビーターは毎回ほぼ同じ場所を、ほぼ同じ軌道で叩くからです。センサーが場所によって反応を変えるとしても、その場所を毎回外さないのであれば、差は現れません。20インチでも22インチでも、ビーターが当たる一点はヘッドの中心の近くにあります。

ペダルの機構が、打点を一点に固定している

足でペダルを踏む動作は、手でスティックを振る動作より自由度が低くなっています。ビーターの軌道はペダルの機構に固定されていて、演奏者が変えられるのは踏む強さと速さだけです。打点を意図的にずらすこともできません。だから同じ場所ばかりを叩くことになります。

パッドの差の出方は、手で叩く部位とは違う

タムやスネアは事情が違います。手で叩く部位では、打点も強さもばらつくからです。

中央を叩くこともあれば、端に寄ることもある。強打からゴーストノートまで、幅も広い。だからセンサーが場所ごとに反応を変えると、そのばらつきがそのまま演奏に乗ってきます。

ローランドがタムパッドの説明でヘッド全面の均一な反応を前に出しているのは、この事情があるからです。上位のPDA100-MSは、新しく開発したセンサーによってホットスポットをなくしたと説明されています。

判断の基準は、カタログではなく自分の叩き方に置く

ただし、ここに落とし穴があります。同じ対策は、下位のパッドの説明にも書いてあるのです。PD-10Hも、ピエゾをずらして配置することでホットスポットを抑えると説明されています。カタログの文言だけを並べても、上位と下位を区別することはできません。

そこで残る基準は、自分がその部位をどう叩いているか、になります。どれだけばらついた位置と強さで叩いているか。ばらつく部位ほどパッドの差が出て、ばらつかない部位ほど出ません。

キックは、最もばらつかない部位です。足でビーターを振る動作は、手で全面を叩く動作より自由度が低いからです。だからキックパッドは、演奏情報の解像度という点で最も差がつきにくい場所になります。

22インチが変えるのは、音ではなく脚の沈み方である

では2インチの差は、何を変えているのでしょうか。変わるのは、踏んだときの手応えのほうです。

ヘッドの面積が広くなれば、同じ力で踏んだときの沈み込み方が変わります。深さも16インチと18インチで違うので、シェルの中に入っている空気の量も変わります。ローランドはKD-200-MSについて、ビーターが当たるたびにシェル内の空気圧を精密に排気していると説明しています。生のバスドラムに近いペダルの感触を作るための設計です。

つまり口径と深さは、音のためではなく足の感触のために置かれた数値だということになります。ここも解釈になりますが、沈み込み方が変われば、ダブルを踏んだときの粒の揃い方や、弱く踏んだときのコントロールも変わってくるはずです。そしてその変化は、人によって良いほうにも悪いほうにも転びます。

22インチを選ぶコストを、正直に書いておく

大きいほうが表現に有利だと読める書き方をしてきましたが、公平を期すために逆側も書きます。

22インチのシェルは、単純に場所を取ります。奥行きが5センチ近く増えるぶん、セット全体が前へ張り出します。重さも1.5キロ増えるので、位置を動かすたびの負担は変わってきます。他のパッドやスタンドの配置を組み直すことになる場合もあります。

そして踏み心地の変化は、必ずしも良い方向とは限りません。生のバスドラムに近づくということは、跳ね返りが弱くなり、沈み込みが深くなるということでもあります。速いダブルを踏む人にとっては、この深さが邪魔になることがあります。本物に近いという説明は正しくても、本物に近いことが自分の演奏に有利だとは限りません。

よくある疑問

Q:KD-222とKD-200では、どちらのほうが音が良いのでしょうか。

A:同じ音源モジュールで鳴らす限り、どちらでも音色は変わりません。電子ドラムの音を作っているのは音源モジュールの中のサンプルであり、パッドは打撃を検出して情報を送る役割だからです。口径の違いが変えるのは、出てくる音ではなく、踏んだときの沈み込みと跳ね返りのほうになります。したがって、音の良し悪しでどちらかを選ぶ必要はありません。

Q:22インチのほうが、トリガーの性能は上なのでしょうか。

A:メーカーはそのようには説明していません。ローランドが前世代との違いとして挙げているのは、シェルの仕上げ、パーツの外観、寸法、重量の4点だけです。どちらもヘッドの側にセンサーを組み込む同じ方式で、打面も生ドラムと同じ張り方のヘッドになっています。拾いの精度で選び分ける材料は、公表されている情報の中には見当たりません。

売るほうを決めるのは、金額ではなく自分の脚である

音の良いほうを残す。この方針は、キックパッドについては成立しません。音を作っているのがパッドではない以上、パッドの側に音の良し悪しは存在しないからです。

そして踏み心地には、上位も下位もありません。22インチが柔らかく沈み、20インチが中間の硬さを持つ。どちらが良いかを決めるのは、カタログでもメーカーでもなく、実際に踏んでいる自分の脚です。これは、お金では解けない種類の問いだと思います。予算をいくら積んでも、自分の脚がどちらを気持ちよく感じるかは、誰も代わりに答えてくれません。

むしろ、上位のほうが良いはずだという前提があると、身体が出している答えのほうを疑ってしまいます。もし両方が手元にあるなら、それは恵まれた状況です。1週間ずつ交互に踏んでみて、弱く踏んだときの音量が素直に出るほう、ダブルの粒が揃うほうを残す。それだけで判断はつくのではないでしょうか。

あなたの脚は、どちらのほうが素直に動きますか。

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