半導体株の下落が一時的かどうかは、値動きを見ても決まらない

持っている半導体株が下がり続けている。解説はいくつも出ていて、どれも理由をきちんと並べてくれる。読めば納得はするのですが、売るのか持ち続けるのかは、結局のところ自分で決めるしかありません。

世の中に流通している答えは、だいたい3つです。急上昇したあとのスピード調整である。中国のメモリ勢が台頭して供給過剰の不安が出た。レバレッジをかけた投機の巻き戻しが起きている。どれも当たっていると思います。

この記事が立てる問いは違います。その解説を読んで「一時的だ」と判断したとして、その判断が正しかったかどうかを、あとから何で確かめるのでしょうか。

目次

7月1日に売られたのは、半導体だけだった

2026年7月1日、半導体の指数が大きく下げました。この下落を、私は一時的な調整だと判定しています。

根拠にしたのは下落率ではなく、何が売られていないかのほうでした。

AIへの需要そのものが疑われたのなら、需要を作っている側も一緒に売られるはずです。クラウドを売る会社、広告で稼ぐ会社、AIを載せたサービスを持つ会社。そこが無傷のまま半導体だけが売られるなら、疑われているのは需要ではなく、供給側の織り込みだけということになります。

7月をひと月通しても、この形は変わりませんでした。S&P500種株価指数の7月初来の下落は1.2%、ダウ工業株30種平均は0.2%にとどまっています。マグニフィセント7指数でも2.2%でした。同じ期間に、フィラデルフィア半導体株指数は18.9%下げています。

同じ月に、S&P500の等ウェイト指数はむしろ0.8%上昇しました。株式市場の全体が崩れたわけではありません。半導体だけが、はっきりと売られています。

一時的という判定には、それを取り消す条件が付いていた

判定を出したとき、私はもう一つ書いています。この判定を取り消す条件です。

書いたのは2つで、ハイパースケーラーの設備投資計画が下方修正されること、そしてメモリの契約価格が実際に反落することです。

理由は単純で、7月1日に売り材料とされたものが、どれも事実ではなく話だったからです。計算資源が余るかもしれない。設備投資は過剰かもしれない。どちらも「かもしれない」の形をしています。

需要が本当に減ったのなら、それは話ではなく数字として出てきます。発注が減れば設備投資の計画が削られ、モノが余れば契約価格が下がる。だからこの2つを、判定を取り消す合図として先に決めました。

7月17日、半導体の指数は高値から20.2%下げた

そのあと何が起きたかというと、判定とは逆の方向に、下落はさらに深くなりました。

フィラデルフィア半導体株指数は、6月22日につけた高値から7月17日にかけて20.2%下げています。下落率が20%を超えると、テクニカルには弱気相場入りの目安とされる水準です。

同じ期間に、韓国総合株価指数は25.2%、日経半導体株指数は31.1%下げています。日経平均株価も11.4%下げました。

数字だけを見れば、一時的という判定は外れたように見えます。

取り消す条件は、どちらも起きていない

ところが、先に決めた2つは、どちらも起きていません。

ハイパースケーラーの設備投資は、四半期あたり2,500億ドル前後の規模まで拡大しています。伸び率は当面、前年比で80%から110%を維持する見通しです。下方修正は出ていません。

メモリの側では、中国のCXMTとYMTCが台頭し、供給過剰と価格下落への不安が広がりました。ただしここで起きたのは不安であって、契約価格が反落したという事実ではありません。

決算の側も崩れていません。6月後半以降、マイクロンもTSMCもASMLも好決算を出しています。それでも株価は戻りませんでした。野村證券もこの局面について、業績自体は堅調な中でのポジション調整の側面が強い、と書いています。

下げを深くしたのは、7月1日には見ていなかった材料だった

ではなぜ、20%も下げたのでしょうか。効いたのは、AI投資が過剰かどうかとは関係のない材料でした。

一つは原油です。米イランの和平協議がとん挫し、7月20日には紅海の封鎖が発表されました。WTI原油価格は1バレル60ドル台から反転して、90ドル台を突破しています。

もう一つは金利で、7月14日に発表された6月のCPIは下振れたにもかかわらず、FRB高官からはタカ派の発言が増えました。米10年債利回りは4.5%を超え、4.7%前後まで上がっています。FF金利先物は、2026年末にかけて1.7回から1.8回分の利上げを織り込みました。

そしてレバレッジがあります。韓国では、個別銘柄の値動きを増幅するレバレッジ型ETFに資金が集中し、日本でもメモリ企業1社にレバレッジをかけた信用買いが殺到していました。上がるときも下がるときも、この構造は値幅を大きくします。

どれも、AIの需要が減ったという話ではありません。7月1日に私が見ていた問いの、外側から来たものです。

値動きは、判定を採点する道具にならない

ここが、今回いちばん残ったことです。

一時的か構造転換かを判定するとき、判定の対象は下落率ではありません。下落率というのは結果として出てくる数字であって、原因の側にあるものではないからです。

半導体の指数が20%下げたという事実は、需要が減ったことも、減っていないことも証明しません。同じ20%が、ポジションの巻き戻しでも、原油高でも、本物の需要の毀損でも起こります。原因の違う3つが、画面の上では同じ形に見えます。

だから値動きを答え合わせに使うと、まったく別の理由で起きた下落を、全部まとめて「判定が外れた」と読むことになります。逆も同じです。上がったから正しかった、とも言えません。

公平を期すために、この方法の弱点も書きます

取り消す条件を先に書くやり方には、はっきりした弱点が2つあります。

一つ目は、条件が甘いと永久に取り消されないままになることです。

たとえば「AIの時代が終わったら売る」。一見すると条件の形をしていますが、実際には何も起きなくても成立し続けるので、持ち続けるための言い訳としていくらでも使えてしまいます。

だから条件は、自分が痛い形で書く必要があります。実際に起きたら判定を変えなければならない、と自分で分かっている一文であること。逃げ道が用意されている条件は、条件として働きません。

二つ目は、条件が起きていなくても、資産が減っている事実のほうは変わらないことです。判定が保たれることと、下落に耐えられることはまったく別の話です。ここを混ぜると、耐えられない額を持ったまま理屈だけで踏みとどまることになります。

よくある疑問

Q:半導体株が20%下がったのに、なぜ一時的という判定を変えないのでしょうか。

A:判定を取り消す条件を先に決めてあり、その2つがどちらも起きていないからです。決めたのは、ハイパースケーラーの設備投資計画が下方修正されることと、メモリの契約価格が反落することでした。7月末の時点で設備投資は前年比80%から110%の伸びを維持する見通しであり、メモリについても価格下落への不安は広がりましたが、契約価格が反落したという事実は出ていません。下落率そのものは、この2つのどちらでもありません。

Q:では、いつ判定を変えるのでしょうか。

A:決めた条件が起きたときです。そのために条件を先に書いています。ただし条件は一度書いたら固定というものではなく、前提そのものが変わったときには条件のほうを見直す必要があります。守りたいのは一つだけで、値動きを見てから条件を書き換えないことです。

判断基準は、判定を書いたその場で取り消す条件も書くこと

ここまでが、この記事で渡したい判断基準です。

やることは一つだけです。相場でも仕事でも、何かを一時的だ、大丈夫だと判断したら、その判断を書いた場所に、それを取り消す条件も一緒に書いておく。条件は一つでかまいません。

これを書いておかないと、判定の採点は自動的に値動きへ委ねられ、下がれば外れた、上がれば当たった、と読むしかなくなります。実際には、下がった理由が判定とまったく関係ないことは、しょっちゅうあります。

条件を先に書くことの効果は、当てる確率が上がることではなく、当たったのか外れたのかを自分で確かめられるようになることです。この2つは、まるで別のものです。

なお、この記事は特定の売買を勧めるものではありません。ここで書いたのは、自分の判断をあとから検証するための一つの方法です。

あなたがいま持っている判断には、それを取り消す条件が書いてありますか。

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