投資家が半導体株の下落を「一時的だ」と判断したときは、判断を書いたメモに、その判断を取り消す条件も一緒に書いておきます。条件を先に書いておけば、判断が正しかったかどうかを値動きとは切り分けて確かめられます。
しかし読者の中には、株価が高値から20%も下がれば判断は外れたと見るのが自然だ、と考える人もいると思います。
取り消す条件は、あとから数字で確かめられる出来事で書く
判断を書くときは、その判断を取り消す条件も同じメモに書きます。取り消す条件には、発注や価格のように、あとから数字で確かめられる出来事を選びます。
2026年7月1日、米国株式市場で半導体株が大きく売られ、マイクロン・テクノロジーの株価は10.6%下げました。売りの理由として伝えられたのは、AI関連の投資が行き過ぎているかもしれない、という懸念でした。
AIの需要が本当に減れば、数字に現れます。発注が減れば大手クラウド事業者(ハイパースケーラー)が設備投資計画を減らし、メモリが余ればメモリの契約価格が下がります。
例えば、ある投資家が7月1日の下落を一時的と見て、その日に次の2つの出来事を、判断を取り消す条件としてメモに書いておいたとします。
- 大手クラウド事業者が設備投資計画を下方修正する
- メモリの契約価格が実際に下がる
取り消す条件は、起きたら判断を変えると自分で分かる一文で書く
7月1日の2つの条件は、取り消す条件の良い例です。良い条件は、起きたら判断を変えなければならないと自分で分かる一文です。
反対に、「AIの時代が終わったら売る」という条件は、何年たっても取り消しの合図になりません。投資家が持ち続けるための言い訳として、いくらでも使えてしまいます。
7月の値下がりの大きさでは、判断が正しかったかを確かめられない
7月1日のあとも半導体株の下落は続き、フィラデルフィア半導体株指数は7月17日の終値で、6月22日の最高値から20%を超えて下げました。値動きだけを見れば、「一時的」という判断は外れたように見えます。
一方、7月1日にメモに書いた2つの出来事は、7月末の時点ではどちらも起きていません。アルファベットの4〜6月期の設備投資は前年同期の約2倍で、メタは2026年の設備投資見通しの下限を引き上げました。調査会社トレンドフォースは、7〜9月期のDRAM契約価格の上昇を予測していました。
同じ7月には、原油価格や米国の長期金利の上昇、借り入れで株を買っていた投資家の売りも重なりました。値下がりの大きさは結果の数字で、下げた原因を示しません。
株価の同じ20%の下げは、借り入れで買った株の売りでも、原油高でも、需要の本当の減少でも起こります。値動きを答え合わせに使うと、別の理由で起きた下げまでまとめて「判断が外れた」と読むことになります。株価が上がったときも、上がったことを判断が正しかった証拠にはできません。
2つの出来事が起きていないことから分かるのは、7月1日の判断が、その日に決めた基準ではまだ取り消されていない、という点までです。株価がこの先どう動くかは、条件からは読めません。
取り消す条件を書いても、持っている株の値下がりは防げない
条件を先に書く方法にも弱点があり、条件に書いた出来事が起きていなくても、投資家が持っている株の値下がりは止まりません。判断が取り消されていないことと、投資家が下落に耐えられることは別の問題です。2つを混ぜると、耐えられない額の株を、判断が取り消されていないという理由で持ち続けることになります。
よくある疑問
Q:先に書いた取り消す条件を、あとから書き換えてよいのでしょうか。
A:判断の前提そのものが変わったときは、条件を見直す必要があります。避けたいのは、値動きを見てから条件を書き換えることです。値動きに合わせて条件を動かすと、判断を確かめる手段を失います。
判断を書いたメモに、取り消す条件を書き足す
取り消す条件の書き方は、相場でも仕事でも、あなたが何かを「一時的だ」「大丈夫だ」と判断したときに使えます。条件は1つでもかまいません。
なお、この記事は特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。
あなたがいま持っている判断を書いたメモに、取り消す条件を書き足してみてはいかがでしょうか。


