電子ドラムの音が部屋の外へ出ていく道は、2つあります。床を伝わる道と、空気を伝わる道です。
しかし、製品ページに並ぶ「静音性」「静粛性」という言葉は、この2つの道を分けていません。だから、床に敷くものを買えば、叩く音まで小さくなると思ってしまうのではないでしょうか。
私は2階に電子ドラムを置いていて、隣の家から振動のことで声がかかったことがあります。声がかかったあとに探したのですが、ノイズイーターを敷く前と後をデシベルで測った公開データは、日本語でも英語でも見つかりませんでした。だからこの記事が答えるのは、ローランドのノイズ・イーターNE-10と、V-Drums Quiet Design用のNEQ-Kが、2つの道のどちらを塞いでいるのかです。
ノイズイーターが減らすのは、床へ入る振動です
NE-10がうたっているのは、階下への騒音を約75パーセント軽減することです。階下、つまり床を通った先の話です。ペダルの下に挟んで、踏み込んだ衝撃を床へ渡さないようにします。
約75パーセントという数字には、同じ部屋の空気へ出ていく音が入っていません。ビーターがパッドを打つ音も、スティックがパッドに当たる音も、床を通らずに部屋の中へ広がります。
NEQ-Kは、NE-10をKDQ-8の寸法に合わせたものです
NEQ-Kは、KDQ-8以外のキックパッドには使えません。ローランドのサポートに、サイズが違うため互換性がない、と書かれています。
寸法を並べると、NE-10が幅210ミリ、奥行き540ミリ、高さ30ミリで2.8キロ。NEQ-Kが幅175ミリ、奥行き450ミリ、高さ31ミリで1.8キロです。高さはほぼ同じで、縦と横が一回り小さく、1キロ軽くなっています。
ハイハットのFD-9とFD-8には、NEQ-Kと同じ寸法のNEQ-Hがあります。KD-10やKT-10には、従来どおりNE-10です。
防振の仕組みが新しくなったという記載は、製品ページにもサポートにもありません。V-Drums Quiet Designで変わったのは、その上に載るパッドの側です。ローランドはVQD106について、打撃音と振動の発生を最大75パーセント軽減すると公称しています。
ペダルの下を塞いでも、スタンドの脚から床へ入ります
ローランドは、スタンドの脚用にNE-1という別の部品を出しています。NE-1の製品ページには、ペダル部にはNE-10が別に必要です、と書かれています。1つでは足りないことを、公式が書いている形です。
海外の掲示板にも同じ話が出ています。中古でNE-10を手に入れた人が、すぐそばの床でも振動を感じないと書いたうえで、床に触れている他のスタンドの分は別に用意することになる、と続けています。
空気に出た音は、囲うしか止まりません
パッドを叩く音そのものは、床に何を敷いても減りません。OTODASUのような組立式の簡易防音室は、この音を箱で囲うものです。簡易防音室のほうは、床へ入る振動には効きません。
ノイズイーターと簡易防音室を両方置いている人がいます。両方置くのは、別々の道を1つずつ塞ぐためです。
買う前に決めるのは、苦情がどちらから来たかです
階下から言われたなら床、同じ階や同じ家の中から言われたなら空気です。どちらの道かが決まると、買うものは1つに絞れます。
まだ声がかかっていない場合は、住まいの形で見当がつきます。集合住宅の2階以上なら、まず床です。戸建てで隣家が近い場合は、壁と窓を通る空気の道が先に問題になります。
製品を見るときは、それが床とペダルの間に入るものか、部屋を囲うものかを見ます。静音や静粛という言葉は、その区別を書いていません。
よくある疑問
Q:ノイズイーターを敷けば、夜も叩けますか。
A:床へ入る振動は減りますが、パッドの音は部屋に残ります。同じ家で寝ている人に届く音は変わりません。夜に叩けるかどうかは、部屋の側で決まります。
Q:厚いカーペットを重ねるのでは代わりになりませんか。
A:カーペットを二つ折りにしたら踏み込みの音が収まった、という書き込みは複数あります。ただし、ノイズイーターと同じ条件で並べて測ったデータは見つかりませんでした。効いたという報告と、効きが同じだという証拠は別のものです。
買うものを決める前に、声がかかったのがどこからだったかを思い出してみてはいかがでしょうか。


