防振・防音に優れたローランドKDQ-8は返しが少ないが、返しを使わないトレーニングのメリットもある。

KDQ-8を踏むと、それまでのキックパッドより反応が悪いと感じます。感度を上げても、返ってくる感触は戻りません。

原因は打面です。衝撃を吸うように作られていて、その分だけビーターが返りません。

買っていいかを先に書きます。夜に叩きたいなら、買う価値があります。そのうえで、返しが少ないことには使い道があります。1942年にバディ・リッチが枕を勧めたのと同じ訓練が、足に起きます。

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KDQ-8の音が小さく感じるのは、打面が衝撃を吸っているから

KDQ-8の打面は、高密度の多層クッションの上に2枚のメッシュを張った構造です。フレームは共振を抑える多孔フローティング構造で、脚は半球状のゴムです。専用のボール・ビーターKDB-Qが付属します。ローランドはこの設計について、打撃音と振動の発生を従来のV-Drumsより最大75パーセント軽減すると公称しています。当社設定条件下の測定、という但し書きが付いています。

衝撃を吸うということは、ビーターへ返す力が減るということです。打面が返してこないので、踏んだ足に戻ってくるものが少なくなります。

この症状は、音源側の設定で答えられていることが多いです。Sensitivityという項目で感度を上げる、Curveという項目をLOUD1やLOUD2にして叩く強さによる音量変化を少なくする。どれも音源が出す値なので、鳴る音は大きくなります。ただし足に返ってくる感触は変わりません。設定で変えられるのは出力で、打面が返す力ではないからです。

KDQ-8で返らないぶん、ビーターを戻すのが足首の仕事になる

打面が返してこないと、ビーターは当たった位置で止まります。次の一打を出すには、足首を引き上げて自分で戻すことになります。

返しに乗せて2打目を出す逃げ道が無いので、ダブルの2打目も自分で踏むことになります。踏み込んでも戻ってこないので、抜くタイミングも自分で作ることになります。ミュートを詰めた生のバスドラムや、ヘッドを緩く張ったキットでは、返しは同じように減ります。返しを当てにした踏み方だけで速度を出していると、そこで同じ速度が出ません。

手では、これが80年以上前から練習法として使われています。1942年6月、バディ・リッチはヘンリー・アドラーとの連名記事で、練習パッドをいくら叩いても技術が伸びない理由を書いています。まず腕の動きを完全に無くすこと、次にバウンスを完全に無くすこと。そのために、跳ね返りの無いパッドとして枕を使うことを勧めています。同じ記事は、指でスティックをしっかり握るようにとも書いています。跳ね返りが無い面では、指を閉じて持ち上げる動作が次の一打を作るからです。ものをつまむ動きに近い形です。

ただし、熟練ドラマーはリバウンドを効率よく使っている

KDQ-8で叩けることが、そのまま上手さの証明になるわけではありません。反対を向く報告があります。

ドレスデンの音楽家医学研究所などのグループが、熟練ドラマー11名とアマチュア11名を、3次元モーション・キャプチャと筋電で記録しています(Beveridge ら、2020年、Frontiers in Psychology 11巻1360)。結果は、熟練度が高いほど、手首の曲げる筋と伸ばす筋を同時に縮める動きが少ないというものでした。そのうえで熟練者には曲げる側の優位が見られ、著者らはこれをリバウンドのより効率的な使用を示唆するもの、としています。

つまり、返しが無い面で1打ずつ出せることと、返しがある面でそれを効率よく使えることは、別の能力です。1942年の記事が消そうとしたのは、バウンスに頼って腕を振る動きのほうでした。返しのある面だけで練習していると、前者だけが育ちません。

KDQ-8は、返しのあるパッドと踏み分ける

KDQ-8だけに寄せる必要はありません。返しのある面と無い面では、育つものが違うからです。

私はKDQ-8と、生ドラムに近い返しが来るKD-222を両方持っていて、常用をどちらにするかで迷っていました。KD-222は22インチ×18インチの深胴ウッド・シェルで、ビーターが当たるたびにシェル内の空気が抜けます。すでに販売は終わっているので、いま同じ役をさせるなら、メッシュを張るタイプのフルサイズのキックパッドになります。

決め方はこうします。速さを出したい日は返しのあるパッド、動作を作り直したい日はKDQ-8。夜に叩くならKDQ-8。そして、KDQ-8で出せるようになった速度が、返しのあるパッドでも出るかをときどき確かめます。KDQ-8でしか出ないなら、その打面に最適化しただけです。

よくある疑問

Q:KDQ-8にすれば、集合住宅で夜も叩けますか。

A:床へ伝わる振動は減りますが、パッドを打つ音は部屋に残ります。同じ家の中にいる人へ届く音は変わりません。階下への振動を止めたいなら、ペダルの下に敷くノイズ・イーターが別に要ります。KDQ-8にはNEQ-Kが対応します。KD-222には、ペダル用のNE-10と、スタンドの脚用のNE-1の2点が指定されています。

Q:値段に見合いますか。

A:静かさをどれだけ必要としているかで変わります。海外の掲示板には、価格が高すぎるという声と、店で試した他のキックより明らかに静かだったという声が並んでいます。踏み心地は数字で公開されていないので、店頭で踏んでみるほうが早いです。

Q:感度を上げれば打感も戻りますか。

A:戻りません。感度やCurveで変わるのは音源が出す音量です。打面が返す力は、設定の外にあります。

返しが少ないことを欠点として数えていたなら、一度、その打面で1打ずつ踏み直してみてはいかがでしょうか。返ってこない面で同じ速度が出せるかどうかで、いま何に頼って踏んでいるかが分かります。

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