摂取カロリーが少ないのに痩せないのはなぜか。1,200kcalと申告した10人を測った結果

摂取カロリーを1日1,200kcalまで落としているのに、体重が何か月も動かない。こういうとき、原因は代謝が落ちたことだと説明されます。食べる量を減らしすぎたので、体が省エネの状態に入っている、という説明です。

しかし、まさにその状態の人だけを集めて、消費量を実際に測った研究があります。結果は逆でした。消費量は正常で、減っていたのは申告のほうでした。

何を測ってどういう数字が出たのか、そのうえで自分の場合はどこを見ればいいのかを、順に書きます。

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1日1,200kcalしか食べていないと申告した10人の消費量は、正常だった

1992年に、まさにこの状態の人だけを集めた研究が出ています。コロンビア大学の肥満研究センターが、治療に来た肥満の人224人をふるいにかけました(Lichtman SW ほか、New England Journal of Medicine 1992年327巻1893-1898ページ)。対象になったのは、3日間の記録で1日1,200kcal未満、6か月間は体重が3kgの幅の中、減量食で痩せなかった経験がある、の3つに当たった10人です。

研究チームは、この10人が14日間に使ったエネルギーの総量を、二重標識水という方法で測りました。

結果は、代謝は正常でした。安静時の代謝率も1日の総消費量も、体組成から予測される値との差が5%以内です。総消費量はむしろ予測より平均4%高く、予測を大きく下回った人は10人に一人もいませんでした。

この10人が実際に食べていた量は、申告した量の2倍だった

消費量が正常なら、残るのは摂取量です。同じ14日間の食事記録と、二重標識水で測った消費量を突き合わせました。

この10人が申告した量は1日1,028kcalで、実際に食べていた量は1日2,081kcalでした。差は1日1,053kcalです。個人ごとに見ると、平均で47%少なく申告していました。

運動で使った分は、逆方向にずれていました。申告は1日1,022kcalで、実際は1日771kcalです。摂取を少なく、消費を多く見積もる。この2つが同じ方向に効くので、自分が思っている差し引きと、体の中で起きている差し引きが離れていきます。

1日1,053kcalは、体重が動かないことの説明として足ります。1日1,200kcalで体重が動かない、という状態そのものが成り立っていなかったことになります。

この10人は、甲状腺の薬を使っている割合が他の肥満の人より高く、自分が太っている原因を遺伝と代謝だと考えていました。食べ過ぎのせいだとは考えていません。

この10人は、量を正しく見て、翌日に少なく答えた

研究チームは、この10人が意図的に嘘をついたとは見ていません。痩せないと訴えていない人たちにも同じ傾向があり、この10人は時間のかかる面倒な検査に自分から参加していて、結果を伝えられたときに動揺していたからです。

では、どこでずれたのか。研究チームは、食べ物の量を目で見積もる精度も測っています。標準的な食品を見せて、大きさや重さを当ててもらう検査です。この10人の精度は正確で、比べた側の人たちと差がありませんでした。

ずれたのは思い出すところです。決まった条件で昼食を食べてもらい、翌日に電話で何をどれだけ食べたか聞く検査では、この10人は実際より約20%少なく答えました。目の前の皿は正しく見えていて、それを翌日に言葉にするときに、量が減ります。

これは34年前の10人だけの話ではありません。2025年に、同じことが調査全体の規模で測り直されています。英国と米国の国民栄養調査、合わせて18,567人の申告を消費量の予測式に当てたところ、成立しない範囲に入った申告が27.4%ありました(Bajunaid R ほか、Nature Food 2025年6巻58-71ページ)。BMIが高い人ほどずれは大きく、記録の日数を増やして平均をとっても、成立する割合は改善しませんでした。

自分がいま実際に食べている量は、体重の動きから逆算できる

食べたものを数え直しても、数えているのは申告値なので、はじめと同じ数字に行き着きます。かわりに使えるのが、この研究が採った考え方です。体重が動いていない期間は、食べた量と使った量が釣り合っています。だから、その期間に実際に食べていた量は、その期間の消費量と同じです。

やることは3つです。いまの食べ方を変えないまま、2週間から4週間、毎朝同じ条件で体重を測ります。起きてトイレに行ったあと、同じ服装で測ります。次に、1週間ごとの平均を出します。日ごとの数字は水分で1kg前後動くので、1日の値では判断しません。そして、週の平均が動いているかを見ます。

平均が減っているなら、いまの食べ方ですでに赤字になっています。この場合、逆算は要りません。そのまま続けます。

平均が動いていないなら、いま食べている量が、自分の維持カロリーです。1日1,200kcalと記録していて体重が動いていないなら、実際に食べている量は1日1,200kcalより多いことになります。

そのうえで減らすなら、いま食べている量を出発点にして、そこから減らします。申告値から減らしても、実際に口に入る量は動きません。そして、ここから極端に減らす必要はありません。上の10人は1日2,081kcal食べていたので、実際の量から少し削るだけで赤字になります。

先に逆算をやる。それでも動かないなら、医療の話になる

代謝が原因ではないと書きましたが、無条件ではありません。この論文自身が、体重が落ちない生理的な理由を3つ挙げています。体重を減らしている途中で体に水分がたまると、脂肪が減っていても体重が最大16日間動かないことがあります。数週間の減量が続いたあとは、消費量そのものが下がります。診断されていない甲状腺の病気がある場合と、消費を下げる薬を飲んでいる場合も、体重の減りは遅くなります。

だから、代謝ではないと言えるのは、体重が数か月にわたって動いていない人についてです。上の逆算を2週間から4週間やって、実際に食べている量が分かり、そこから減らしても動かないなら、そこで医療機関に相談する話になります。順番を先にすると、検査を受けても異常が見つからないまま、申告のずれだけが残ります。

よくある疑問

Q:食事記録アプリを使っています。それでもずれますか。

A:ずれます。上の研究で精度が落ちたのは、食べたものを思い出すところでした。量を目で見積もる精度は正確でした。アプリは思い出す手間を減らしますが、入力しなかった分は残りません。2025年の調査でも、記録の日数を増やして平均をとって、成立する割合は改善しませんでした。

Q:基礎代謝の計算式で出した数字を、維持カロリーとして使えますか。

A:目安にはなります。ただ、2025年の予測式でも、予測と実測の差は平均で1割ほど残りました。体重の動きから出したほうが、自分の数字に近くなります。

Q:体重が2週間動かないのは、停滞期ではないのですか。

A:停滞期と、最初から赤字になっていない状態は、体重の動きだけでは見分けがつきません。見分けるには、減っていた期間があったかどうかを見ます。減りはじめてから止まったなら停滞期です。最初から動いていないなら、まだ赤字になっていません。

Q:運動を増やせば解決しますか。

A:上の10人は、運動で使った分を個人平均51%多く見積もっていました。運動を増やすこと自体に問題はありませんが、増やした分を見積もりで数えると、同じずれがもう一度入ります。

体重が動かない期間が何か月も続いているなら、まずは食べ方を変えずに、朝の体重を2週間測ってみてはいかがでしょうか。

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