若者がお酒を飲まなくなったのは、刺激を得る先がスマホに変わったからだと思います。人に必要な刺激を、昔はタバコとお酒から得ていました。いまは、それをスマホから得ています。
しかし、若者のアルコール離れの理由としてよく挙げられるのは、健康意識の高まりです。若者は本当に、健康のためにお酒をやめたのでしょうか。
20代男性で飲酒の習慣がある人の割合は、1990年の約3割から2023年には1割未満になった
厚生労働省の調査では、週3日以上、1回に日本酒1合以上を飲む人を「飲酒習慣のある人」としています。国民栄養調査では、1990年の20代男性の31.4%がこれに当たりました。
同じ定義で見ると、2023年の20代男性で飲酒の習慣がある人の割合は7.3%で、1990年の4分の1以下です。女性は5.2%でした(国民健康・栄養調査をもとにしたニッセイ基礎研究所の集計)。
若者が健康志向なら、運動の習慣がある20代も多いはず
若者がお酒を飲まなくなった背景として、健康意識や予防医学への関心の高まりがよく紹介されてきました。飲めるのにあえて飲まない「ソーバーキュリアス」という言葉も、この説明と一緒に広まりました。健康のためにお酒を控えているなら、運動のようなほかの生活習慣にも、それが表れるはずです。
ところが、運動の習慣がある人の割合を年代別に比べると、20代は低いほうです。令和5年国民健康・栄養調査で、1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上続けている人の割合は次のとおりです。
| 年代 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 20代 | 26.5% | 14.5% |
| 70歳以上 | 46.5% | 36.5% |
運動の習慣がある人の割合は、20代より70歳以上のほうが高いです。健康のためにお酒をやめた、という説明は、このデータと合いません。
お酒から得ていた刺激を、スマホから得るようになった
20代でお酒を飲む人が減った時期に、20代がインターネットを使う時間が大きく増えました。総務省の「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」で、20代が平日1日にインターネットとテレビに使う時間は次のとおりです。
| 20代・平日1日あたり | 2013年 | 2024年 |
|---|---|---|
| インターネット | 136.7分 | 257.2分 |
| テレビ(リアルタイム) | 127.2分 | 52.6分 |
2013年の数値は平成25年調査、2024年の数値は令和6年度調査から取りました。インターネットに使う時間は、11年で2倍近くになりました。
米国でも、若者の飲酒が減り、オンラインで過ごす時間が増えたことが報告されています。Twenge と Park の研究(2017年発表)は、13〜19歳の約830万人分の調査をまとめ、飲酒や親のいない外出が減っていると示しました。そのうえで、オンラインで過ごす時間が増えたことと関係している可能性を挙げています。
人には刺激が必要なので、若者の依存先はなくなっていない
人は何かしらの刺激を必要とし、その刺激を得られるものに頼ります。この記事では、頼る先を依存先と呼びます。上の世代にとって、依存先はタバコとお酒でした。
総務省の平成25年調査では、2013年の時点で20代の87.9%がスマホを使っていました。いまの20代は、その頃、小学生から高校生でした。ゲーム、SNS、動画で刺激を得る習慣は、お酒が飲める20歳より前に出来上がっていたのだと思います。
若者の依存先はすでにスマホだったので、20歳になっても依存先はお酒に移りませんでした。若者の依存先はなくなっておらず、お酒とタバコからスマホに変わりました。
お酒は理性で減らせても、スマホには抗えない
お酒を飲むと、お金が減り、翌日に体調を崩します。損が分かりやすいものは、理性で減らせます。若者がお酒を減らせたのは、この損を分かっていたからだと思います。
スマホで動画を1本見ても、何を失ったかは分かりにくいです。失うのは時間で、それも後になって気づきます。だから、スマホには理性で抗えません。
若者がお酒から離れても、刺激を求めることは変わらない
若者のアルコール離れの理由は、健康志向とは別のところにあります。人に必要な刺激を得る先が、お酒とタバコからスマホに変わりました。依存先はなくなっておらず、スマホには理性で抗えません。
あなたが1日のうちでいちばん長く刺激を受けているものは、何でしょうか。







