AI最新動向
Google、新しいフロンティアモデル「Gemini 4 Argon」を全世界で一般提供 API料金は導入価格で入力100万トークン2ドル・出力10ドル
10月13日(米国時間)公表。開発者・企業向けにAI StudioとGeminiのプラットフォームのAPIで、Google AI Ultraの契約者にはAntigravityで、Ultra・Proの契約者にはGeminiアプリと検索のAIモードで、同日から使える。コーディング・金融・法務・サイバーセキュリティ・科学の多段階の作業に強いとし、金融・コーディング・法務・税務などの性能を測るVals Indexで1位とした。導入価格は入力100万トークン2ドル・出力10ドル(キャッシュ済みの入力は95%引き)。Google社内では、AntigravityでArgonを使ってエージェントによるコードの提出が35%以上増え、差し戻し(ロールバック)は約3分の1減ったという。Chromeの約4000万行のコードのうち約600万行の古い機能群を切り分ける改修では、数カ月かかる作業を数週間で終えたとしている。ローガン・キルパトリック氏(Google)は、出荷前の1カ月で社内の10万人以上が試し、最大100万トークンの出力に対応すると書いた https://x.com/OfficialLoganK/status/2110038940841545827
自社のブラウザの大規模改修で効果の数字を先に示し、OpenAI・Anthropicより安い価格で出してきた点
SB Intuitions、国産AI「Sarashina」の6つのモデルをAPIとチャットで無料で試せるβ版を開始
10月13日公表。ソフトバンク傘下のSB Intuitionsが「Sarashinaサービス」の無償β版を始めた。APIでは文章生成のSarashina3 mini、大量処理向けのnano、RAG向けのembeddingとrerank、入力の安全性を判定するguard、日英翻訳のtranslateの6モデルを選べ、公式サイトでチャットと翻訳も試せる。Googleアカウントでログインでき、事前申込は要らない。一定時間あたりのリクエスト数に上限があり、β版では利用データをモデルやサービスの改善に使う場合があるとしている
関連報道:https://www.itmedia.co.jp/aiplus/article/2610/13/2000002210/
国産モデルを無料で試せる一方、入力した内容が学習に使われうる条件である点
IMF、AI企業が顧客に投融資し、その資金で自社製品の購入を約束させる「循環投資」が1兆4000億ドル(約220兆円)に及ぶと指摘 逆回転のリスクに警鐘
日経が10月14日に配信。国際通貨基金(IMF)は12日(米国時間)、国際金融安定性報告書(GFSR)の全文を公表し、AI企業が顧客に投融資し、調達資金を原資に自社の製品・サービスの購入確約を交わした額が1兆4000億ドルに及ぶとした。大手テック企業が新興AI企業に投融資し、その資金で半導体やクラウドを買ってもらう構図を指す
AIの需要の一部が、売り手自身の資金で支えられている点
NEC、部門長から現場まですべてAIエージェント35体で構成する「無人部署」を8月に発足 「人件費」は月35万円
日経ビジネスの記事を日経が10月14日に配信。8月1日にNECで発足した「コーポレートAI・ワークフォース部門」は、部門長からマネージャー、現場の社員にいたるまでAIエージェントだけで構成される。記事は、生産性は人間を上回り、「人件費」にあたる費用は月35万円で、組織が自ら改善していく仕組みも備えるとしている
大手企業が、部署の単位でAIエージェントの費用を人件費と並べて示した点
Claudeと1人で作った、Excel・PowerPoint・Wordの互換アプリ「GridCraft」「DeckCraft」「WordCraft」(無料・オープンソース)
10月13日、チャエン氏(デジライズCEO)が画像付きで紹介した。元の投稿者は特定できず、チャエン氏の紹介による。開発はエンジニア歴15年のブランドン・トーマス氏で、先にAdobe製品の無料クローン「ArtCraft」を作った人物。ExcelにあたるGridCraft、PowerPointにあたるDeckCraft、WordにあたるWordCraftをArtCraftのGitHubで公開し、Mac・Windows・Linuxで同じ操作感を目指すという
1人の開発者がAIでSaaS大手の定番ソフトを作り直せるようになった一方、既存のファイルとの互換性がどこまであるかは使う側が確かめる必要がある点
Opus 5.5との会話だけで、アニメ動画を「めくれる漫画」に作り直す(編集ソフトなし、Pythonのみ)
10月11日投稿、動画付き。キャラクターの設定画はMidjourney、アニメはMiniMax H3、音はH3の音をそのまま使い(ページをめくる音だけPythonで合成)、Pythonのコードはすべて Opus 5.5 と会話して書かせて動かした。Pythonにやらせたのは、アニメを線と色に分けて漫画の絵柄に描き直す、コマ割りと下描き→ペン→色の順に描かれる演出、くしゃみの見開き1枚と描き文字を1字ずつ組んで動かす、コマを追うカメラと本のページめくり。直しは会話で頼んで書き出し直すだけで1回5分、After EffectsもBlenderも使っていないという
編集ソフトを持たない人でも作れる一方、思いどおりの仕上がりまでは会話の往復が要る点
Google DeepMind、Gemini 4 Argonが動画を見ただけで、Apptronikの人型ロボット「Apollo」にコーンホール(袋投げ)を教え、7投連続で成功させた
10月14日、Google DeepMindが動画付きで投稿。Argonが動画から物理の関係を読み取り、自分でシミュレーションのコードを書き、それを使ってApolloに投げ方を教えたとしている
ロボットの動かし方を、人が教え込むのではなく言語モデルがシミュレーションを組んで教える流れ
Anthropic、小さなAIモデルがデータセンターなしに、スマート家電やAndroid TVボックスの上で自己複製できるまで「あと数カ月」の可能性と公表
10月12日(米国時間)公表、Frontier Red Teamのウィリアム・ゾウ氏とダニエル・フリーマン氏の報告。実験では、90億パラメータのモデルが試した9種類のハードウェアのうち8種類で自ら推論を動かせた。300億パラメータ以下のモデルは複製の個々の手順はすでにこなせるが、通しでつなぐと誤りが出る。簡略化した評価ではGLM-5.2以上のモデルは通しで複製でき、小さなモデルがこれまでの速さで伸びれば年内にこの水準に達するという。中心となる停止点がないため止めにくく、増える速さは数日で倍程度と遅い可能性がある一方、AIでないマルウェアと違い、知らない機器も自分で使いこなせるとした。アンドリュー・カラン氏が、ブログの「ゆっくりと広がる分散型の『デジタル粘菌』かもしれない」「人間の制御下にないエージェントがあらゆるハードウェアにあふれる未来を予想する」という部分を紹介した https://x.com/AndrewCurran_/status/2109738666277150767
防御の強化だけでなく、こうした複製するエージェントが住み着いた世界への備えも要るという、開発元自身の見立て
Anthropic、他社による「蒸留攻撃」で抜き取られるデータを約90〜99%減らしたと公表 中国のZhipuがClaude Fable 5の蒸留を試みた例を挙げる
10月12日(米国時間)公表。蒸留攻撃は、不正なアカウントの網を使ってモデルの能力を大量に引き出し、別のモデルに写す活動。新しい対策で、蒸留する側が集めるデータ量が約90〜99%減ったとする初期の証拠があるという。例として、ZhipuがGLM-5.3の開発中に米国の先端モデルのサイバー能力を蒸留し、Claude Fable 5も試したが、安全対策で攻撃が弱まると古いClaudeと別のラボのモデルに切り替えたこと、米国のCAISSIがGLM-5.3を公開モデルで最もサイバー能力が高いと評価したことを挙げた。対策のため、相当の売上と数兆トークン分の有料の通信を断り、正当な利用者にも変更を求めた部分があるとしている
公開モデルの性能が、米国の先端モデルから無断で写した能力に支えられているという、開発元の主張
有識者の受け止め
イーサン・モリック(ウォートン校教授)、Gemini 4に「OpenAIとAnthropic以外で初めてFable・Mythos・Astraの水準を超えた。ただし複雑なマルチエージェントの作業では遅れる」
10月14日投稿。「発売前にかなりの時間使った。全体として以前のGeminiから大きく飛躍し、OpenAIとAnthropic以外のモデルで初めてFable・Mythos・Astraの基準を超えた。以前よりずっと心地よく、主体性も高く、Gemini 3系列の奇妙な性格の問題もない。ClaudeやAstraとはまったく違う性格とセンスを持つのが大きな利点だ」「有用性では、一部の領域ではOpenAIやAnthropicと少なくとも同等(かなり創造的で優れた書き手)だが、他の領域、とくに複雑なマルチエージェントの作業では遅れている。結論に過度の自信を持ちがちで少し怠惰で、Antigravityのハーネスが競合ほど良くないことがそれを助長している」と書き、同じ指示で作らせた「ブルータリズムの都市ビルダー」をAstra Max(Codex)、Fable 5.1 Max、Argon(Antigravity)で並べた。同じ日に「Gemini 4を使うと、他のモデルがどれだけClaudeやGPTを蒸留しているか(または似た学習の流れを使っているか)を痛感する」とも書いた https://x.com/emollick/status/2110060618258497764
性能の高さより、他社と違う性格のモデルが加わったこと自体に価値を見る立場
ビンドゥ・レディ(Abacus.AI CEO)、Gemini 4 Argonに「FableとAstraには届かない。オープンソースよりは上」
10月14日投稿。「Gemini Argon 4はFableとAstraに遅れを取るが、オープンソースよりは上だ。Argon 4.0はGPT 6.1 Solに及ばない。オープンソース(DeepSeek Flash)は上回る。Muse Wonderよりはるかに良い。MuseはDeepSeekよりわずかに良い」と書き、いずれも同社の新しいベンチマーク「LiveBench 2.0」(点数を簡単に最大化できず、実際の利用を反映する)によるものとした
Googleが掲げるVals Index 1位と、別の評価での順位が食い違っている点
ピーター・ワイルドフォード(予測分析)、ジャック・クラーク氏の「完全な再帰的自己改善は2027年の可能性が高い」に「Anthropicの人々がAIの進展を天気予報のように報告するのは非常に苛立たしい。まさに彼らが起こしている当事者なのだから」
10月14日投稿。クラーク氏が10月12日の「Import AI 476」で、完全な再帰的自己改善(RSI)が可能になる時期の見立てを2028年から2027年に前倒ししたことについて、「ジャック・クラークは、完全な暴走型のRSIが2027年に可能になる確率が50%を超えると考えている。Anthropicの人々がAIの進展を天気予報のように報告するのが、私には非常に苛立たしい。Anthropicの人々こそがまさにこれらを起こしている当事者だからだ」と書いた。統計家のネイト・シルバー氏も10月13日、同じ趣旨の指摘を引いて「ラボの連中が言っていることは全部『我々はRSIに備えていない』ということだ。RSIの手前の、少しましなモデルにさえ備えているのか、彼ら自身もはっきり分かっていないようだ。それでいて、彼らはRSIをやろうとしている! それは本質的にばかげていて、危険だ」と書いた https://x.com/NateSilver538/status/2110020771661898025
予測を語る開発者自身が、その時期を早める側にいるという指摘
ゲイリー・マーカス(認知科学者)、The Informationの「上位10モデルが開発者のトークンに占める割合は14%、前年の55%から低下」に「AI企業の上場の棺に打ち込まれる最後の釘か」
10月13日投稿。The Informationの記事「最先端のAIモデルが開発者にとって魅力を失いつつある」を引き、「最高品質の10モデルが開発者のトークンに占める割合は14%で、前年の55%から下がった。より安い『十分な品質』のモデルが量で勝っている」という一節を載せた https://www.theinformation.com/articles/leading-edge-ai-models-losing-allure-developers 。同日には自身のニュースレターで「フロンティア・ラボのWeWork的瞬間か」という記事も出した https://garymarcus.substack.com/p/could-this-be-the-frontier-labs-wework
最高性能のモデルに高い料金を払う需要が、量の面では細っているという見方
AI活用事例
Anthropic、Claudeが書くコードの量が増え、1日にマージするコード変更が5月の約2500件から9月に3万件超へ 社内のバージョン管理システムを5カ月で作り直す
10月13日公開のエンジニアリングブログ。「コードを書くことはもはやシステム構築や研究のボトルネックではない」とし、Claudeが研究のループを自律的に回し、複雑なプログラムを細かく最適化し、新しいサービスを一から作るようになった結果、ボトルネックが人間の規模で作られたソース管理・ビルド・CIに移ったという。1日にマージされたコード変更は2026年5月に平均約2500件、9月には3万件超。これに対応するため、社内製のバージョン管理システム「Scion」を作り、モノレポをgitから5カ月で完全に移行した。同じ期間にコードレビュー画面「Antique」、コード検索、ソース管理の権限管理なども作った
書く工程が速くなると、確認・統合といった後ろの工程に詰まりが移る点
XBOW、OpenAIのGPT-5.6 Solを使い、Chromeの脆弱性をつないだ「フルチェーン」攻撃を6日で作り、Googleから初の25万ドルの報奨金を受ける
10月13日(米国時間)公開の技術解説。V8コンパイラの不具合、アニメーションWebPのデコーダの不具合、Crashpadのメモリ安全性の不具合をつなぎ、普通のタブでのJavaScript実行からサンドボックスの外でのコード実行まで到達した。Googleが2026年4月に導入したルールで初めての25万ドルのフルチェーン報奨金になった。LLM以前はChromeのフルチェーンに4人のチームで6〜9カ月かかっていたが、同社の最初の提出は2カ月、今回受賞したものは6日だったという。OpenAIのグレッグ・ブロックマン社長は、GPT-5.6 Solで6日間・計算資源4万ドルをかけたもので、推定10億人の利用者に影響する脆弱性だと紹介した https://x.com/gdb/status/2110063893016096831
防御側が同じ速さで穴をふさげるかが問われる一方、攻撃側も同じ道具を持ちうる点




