ベンダーが作ったAIエージェントが使われなくなるのは、現場から見ると、外から渡された新しいやり方だからだと考えます。
価値のあるエージェントなら、合わないところが出ても、外注してでも直して使い続けるはずです。それでも現場が元のやり方に戻ってしまうのは、なぜでしょうか。
Gartnerは、ベンダーが客先で作ったAIエージェントを、2028年までに企業の7割が使わなくなると予測している
2026年9月29日、調査会社のGartnerがプレスリリースを出しました。ベンダーの技術者が客先に入り、顧客と一緒にAIエージェントを作って動かす形について、2028年までに企業の70%がそのエージェントの利用をやめる、という予測です。
Gartnerが挙げた理由は、費用が増え続けることと、企業が自分たちでエージェントを改良し続けられないことの2つです。この70%は2028年に向けた予測で、傾向を示した数字です。ただ、現場が価値を感じているエージェントなら、費用がかかっても、外注してでも直して使い続けるはずです。費用や改良の話になる前に、現場が元のやり方に戻ってしまうことが先に起きていると考えます。
日本的組織では、業務の進め方は現場の人同士の調整で決まる
日本の雇用は、労働法学者の濱口桂一郎氏によって「職務の定めのない雇用契約」と整理されています。日本労働研究雑誌の2022年特別号でも、この整理が紹介されています。
職務が契約で決まっていないので、誰がどの手順で何をするかは、現場の人どうしが話し合って決めます。例外が出たときの処理も、担当者どうしの「この場合はこうしよう」という取り決めで回っています。
日本的組織で実際に使われる業務の進め方は、現場の人どうしが話し合って決めたものだと思います。
ベンダーが作ったAIエージェントの使い方は、現場の人どうしが話し合って決めたものではない
ベンダーに頼むとき、エージェントの要件を決めるのは、経営や導入の担当者です。ベンダーは業務を聞き取って作りますが、現場の担当者は、できあがったものを利用者として渡されます。
使い始めると、聞き取りに入っていなかった例外が出てきます。そのとき現場の担当者は、エージェントを直す依頼を出すより先に、慣れた元のやり方で目の前の案件を処理します。元のやり方なら、担当者どうしの取り決めがそのまま使えるからです。
現場がエージェントの価値を感じる前に、元のやり方で処理する件数が増えていき、エージェントは使われなくなります。直す価値があると現場が感じていないので、外注して直す話にもなりません。
元のやり方に戻らないために、現場の担当者が作る段階から入る
現場が元のやり方に戻るのを防ぐには、エージェントの使い方を、現場の人どうしが話し合って決めたやり方にすることだと考えます。
要件を決める打ち合わせに、現場の担当者を入れる
エージェントに任せたい業務の担当者を1人選び、ベンダーとの最初の打ち合わせから同席してもらいます。その担当者に、1件の処理を最初から最後まで話してもらい、「取引先から急ぎの依頼が来たら、先に電話で確かめる」のような例外の取り決めも出してもらいます。
現場の担当者が要件を決める側に入ると、エージェントは現場の取り決めを含んだやり方になります。
作っている途中で、現場の担当者が実際の案件で試す
完成を待たずに、担当者が毎週の実際の案件でエージェントを使い、合わなかったところをその週のうちにベンダーへ伝えて直してもらいます。Gartnerも、ベンダーの技術者を社内の業務担当者や利用者と一緒に働かせ、仕事が実際にどう進んでいるかをエージェントに反映させるよう勧めています。
現場の担当者が試し、合わないところを直してもらったエージェントは、現場にとって自分たちで決めたやり方になります。
よくある疑問
Q:AIエージェントの導入に失敗しないためには、ベンダーに頼まずに社内で作るべきなのでしょうか。
A:分かれ目になるのは、現場の担当者が作る段階から入っているかどうかだと考えます。社内で作る場合も、情報システムの担当者だけで作れば、同じように現場が元のやり方に戻ると思います。
現場が元のやり方に戻っているなら、担当者が作る段階に入っていたかを見る
現場が元のやり方に戻り、使われていないAIエージェントがあれば、その業務の担当者が作る段階に入っていたかを確かめてみてはいかがでしょうか。

