将来のために今の時間を使うことは、多くの場面で正しいとされています。資格の勉強も、貯金も、仕事の効率を上げる工夫も、将来のための時間です。
しかし、将来のために今を犠牲にし続けると、いつまでたっても今を生きる日が来ません。そこから抜け出すには、どうすればよいのでしょうか?
将来のために今を犠牲にしてしまうのは、やっている最中の意識が将来に向いているから
将来のために今を犠牲にしてしまうのは、何かをやっている最中に、意識が将来に向いているからです。 意識が将来にあるあいだ、今の時間は、将来を組み立てるための部品になります。
ゼノギアスというゲームでは、人間は、墜落した兵器を直すための部品として作られました。私は、この物語を他人事と思えませんでした。私は、設計する側(アーキテクト)に価値があると思っていましたし、休みの日まで将来の部品にしていました。今を将来の部品にするのは、倒錯です。
私はドラムを叩きますが、基礎練習をしているときはしんどいことがあります。うまくなった将来の自分に、意識がいっているからかもしれません。
将来のための作業でも、没頭しているあいだは今にいる
では、将来の役に立たないことをすれば、抜け出せるのでしょうか。将来のための作業でも、没頭しているあいだは、意識は将来に向いていません。
私が今にいられたと感じるのは、たとえばドラムを叩いているときや、AIエージェントを作っているときです。AIエージェントは仕事の効率を上げるために作るので、将来のための作業です。それでも、作ることにハマっているあいだは、将来のことを考えていません。
何をしているかより、何を考えているかのほうが大きいことは、研究でも示されています。心理学者のキリングスワースとギルバートが2010年に学術誌 Science に発表した研究では、人の幸福度は、何をしているかよりも、今していることとは別のことを考えているかどうかで、よく説明できました。別のことを考えていた割合は、起きている時間のおよそ半分でした。
没頭できるのは、利益のことを考えていないとき
では、どうすれば没頭できるのでしょうか。没頭できるのは、利益のことを考えていないときです。 利益のことを考えるのは、将来のことを考えることだからです。将来の利益を考えながらやる作業は、楽しくありません。
研究でも、似たことが示されています。心理学者のレッパーらが1973年に学術誌 Journal of Personality and Social Psychology に発表した研究では、絵を描くのが好きな幼児に、描いたらご褒美をあげると先に伝えました。すると、あとで自由に過ごす時間に、絵を描かなくなりました。ご褒美を先に伝えずに、描いたあとで渡した子どもには、この変化は見られませんでした。
抜け出すには、将来の役に立つかを考えずにやっている時間を、自分の作業の中から見つける
次は、自分の作業の中から、没頭している時間を見つけます。抜け出すには、将来の役に立つかどうかを考えずにやっている時間を、自分がすでにやっている作業の中から見つけ、その体感を持つことです。 その体感は、役に立たないことをしているときに限らず、何かに没頭しているときに生まれます。
やることは次の3つです。
- 最近やった作業を、「しんどかった」と「ハマっていた」に分けて書き出す
- 「しんどかった」作業の最中に、意識がどの将来や利益に向いていたかを1行で書く(うまくなった自分など)
- 「ハマっていた」作業を、役に立つかどうかで削らない
よくある疑問
Q:将来の役に立たないことを始めれば、抜け出せますか?
A:役に立たないことでも、うまくなった将来を考えながらやれば、その時間は将来の部品になります。反対に、効率を上げるための作業でも、没頭しているあいだは今にいます。
今に戻れるかは、作業の中身よりも意識の向きで決まる
今に戻れるかどうかは、作業が将来の役に立つかよりも、やっている最中の意識が今にあるかで決まります。
最近しんどかった作業と、ハマっていた作業を、1つずつ書き出してみてはいかがでしょうか。





