「年金3割減で5万6千円」は本当か? 物価を差し引いた受取額は、将来いくらになる試算か?

2026-11-01、Xで「【速報】年金3割減へ 8万円→56000円」という投稿が広がり、「誤情報だ」と指摘する投稿も並んでいます。

この投稿のとおり、年金は3割減って5万6千円になるのでしょうか。

目次

「年金3割減で5万6千円」は誤り。受取額を3割減らす決定はない

投稿は、決定、8万円、3割の3つとも事実と違います。政府が年金を3割減らすと決めた発表はありません。2026年度の基礎年金(国民年金)の満額は、1人あたり月7万608円で、8万円ではありません(厚生労働省、2026年1月23日発表)。前の年度より1.9%引き上げられています。

比べる点投稿の内容事実
減らすことは決まったか「速報」として決定のように書いている決定はない。国の試算があるだけ
今の基礎年金(1人分・月額)8万円7万608円(2026年度の満額)
「3割」が指すもの受取額現役世代の手取りに対する割合

3割は、受取額ではなく現役の手取りに対する割合の低下である

投稿の「3割」は、国の試算の数字を受取額の話に読み替えたものです。厚生労働省が2024年7月に公表した財政検証は、年金の財政を5年に1度点検する試算です。過去30年と同じ程度の低い経済成長が続くとした「過去30年投影ケース」では、基礎年金の水準が2024年度の36.2%から2057年度に25.5%へ下がるとしています。この割合は、年金の額が、その時点の現役世代の手取り収入の何%にあたるかを示すものです。

割合なので、分母の手取りが増えると、年金の額が変わらなくても割合は下がります。たとえば、手取りが月30万円から40万円に増え、年金が月10万円のままなら、割合は約33%から25%に下がります。年金の額は1円も減っていません。

物価を差し引いた受取額は、1人あたり月約6.7万円から約5.4万円になる試算である

受取額で見ると、低い成長が続く試算でも、基礎年金の減り方は約2割です。財政検証は、将来の年金額を、物価の上がり方で2024年度の価値に直した金額でも示しています。直した金額は、今のお金でいくら分のものが買えるかを表します。過去30年投影ケースの数字は次のとおりです(日本総合研究所の財政検証の解説から)。

月額(2024年度の物価に直した額)2024年度2057年度変わり方
基礎年金(夫婦2人分)13.4万円10.7万円約2割減
基礎年金(1人分。夫婦2人分を2で割った額)約6.7万円約5.4万円約2割減
厚生年金(会社員の夫の分)9.2万円約10.4万円約1割増
モデル世帯の年金(合計)22.6万円21.1万円約7%減

1人分の基礎年金は、今の物価に直して月約5.4万円になる試算です。これは今の約6.7万円から約2割減った額で、8万円から3割減った額ではありません。

影響の大きさは、受け取る年金の組み合わせで変わります。会社員だった夫と専業主婦の妻というモデル世帯では、厚生年金が増えるため、合計の減り方は約7%です。自営業などで基礎年金だけを受け取る人には、約2割の減り方がそのまま及びます。

これは低い成長が続くとした試算です。実質で1%程度の成長が続く「成長型経済移行・継続ケース」では、基礎年金の割合の低下は2037年度の32.6%で止まる試算です。

基礎年金を底上げするかは、2029年の財政検証を見て判断される

約2割減という試算も、まだ確定した数字ではありません。2025年6月に成立した年金制度改正法の附則に、基礎年金の水準の低下が見込まれる場合は底上げの措置をとると書かれました。判断の材料になるのは、2029年に出る次の財政検証です(第一ライフ資産運用経済研究所の解説)。

底上げは、厚生年金の積立金と国の負担を使い、基礎年金を減らす調整を早く終わらせる仕組みです。過去30年投影ケースでは、基礎年金の水準の低下が約3割から約1割に抑えられる見込みとされています。ただし、底上げをするかどうかは、まだ決まっていません。

年金の数字を見たら、何の割合か、物価を差し引いた額かを確かめる

年金の「◯割減」という数字を見たときは、次の3つを確かめると、受取額の話かどうかが分かります。3つのうち1つでも分からない数字は、受取額の話として受け取らないほうが安全です。

1 何に対する割合か。現役の手取りに対する割合なら、受取額の減り方とは違います。
2 物価を差し引いた額か、そのままの額か。物価を差し引いた額でなければ、買えるものが減るかは分かりません。
3 どの経済の前提の試算か。低い成長の前提と、成長が続く前提では、減り方が大きく変わります。

自分が受け取る見込みの額は、日本年金機構のねんきんネットで確かめられます。マイナポータルと連携して利用登録をすると、これまでの加入記録をもとにした将来の見込み額を見られます。

Q:年金は将来、本当に3割減るのですか。
A:受取額が3割減ると決まった事実はありません。3割は現役の手取りに対する割合の低下です。物価を差し引いた受取額で見ると、低い成長が続く試算で基礎年金は約2割減で、2029年の財政検証を見て底上げをするかが判断されます。

次に「年金◯割減」という投稿を見かけたら、まず何に対する割合かを確かめてみてください。そのうえで、ねんきんネットで自分の見込み額を一度開き、約2割少ない額でも暮らしが組めるかを考えてみてはいかがでしょうか。

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