2026年9月28日、アメリカ国防総省は、人事データを管理する部署のシステムが不正アクセスを受け、約300万人分の個人情報が見られていたと発表しました。見られていたのは、社会保障番号と、名前や生年月日、軍での職種などを組み合わせた記録です。
しかし、誰がアクセスしたのかは、発表の時点でまだ明らかにされていません。
発表と報道から分かっているのは、どのシステムが狙われたか、何が漏れたか、国防総省がどう対応したかの3つです。そのうえで、分かっていないことが3つ残っています。
国防総省の人事データを管理するシステムが、2025年10月から不正アクセスを受けていた
不正アクセスを受けたのは、国防総省の国防人員データセンター(DMDC)という部署のシステムです。DMDCは、現役の兵士、予備役、職員、契約社員、退役軍人、軍人の家族まで、6,000万件を超える人事の記録を持っています。 国防総省の身分証を持つ人の本人確認も、この部署が受け持っています。
国防総省の担当者はABC Newsに、「2025年10月から2026年7月まで、少数の権限のない利用者が個人情報にアクセスしていた。発見後、ただちに弱点を修正した」と説明しました。
アメリカの連邦政府関係のニュースを扱うFederal News Networkによると、弱点はファイルを共有する仕組みにあり、2026年7月16日に見つかって、その場で塞がれました。
漏れたのは約300万人分の社会保障番号で、名前や生年月日などと組になっていた
では、何が漏れたのでしょうか。対象者に届いた通知の手紙によると、漏れた情報には、社会保障番号と、少なくとも1つの別の情報が含まれていました。 別の情報は、名前、生年月日、連絡先、性別、人種、軍での職種のいずれかです。
イギリスのニュースサイトIBTimes UKは、この手紙を引用して、アクセスされたのは暗号化されていないファイルが置かれたサーバーだったと伝えています。暗号化とは、特定の鍵が無いと中身を読めない形に変えておくことです。暗号化されていなかったので、アクセスした人はファイルの中身をそのまま読めたはずです。
ABC Newsによると、対象は存命の人が276万人、亡くなった人が29万4千人で、合わせて300万人を超えます。
社会保障番号は、アメリカでお金を借りるときや口座を開くときの本人確認に使われる
では、社会保障番号が漏れると、本人は何に困るのでしょうか。社会保障番号は、アメリカの社会保障局が、働く人や年金を受け取る人に発行する9桁の番号です。この番号は、税金や年金の手続きだけでなく、お金を借りるときや口座を開くときの本人確認にも使われています。
アメリカの連邦取引委員会(FTC)は、個人情報を盗んだ人がその人の名前でできることとして、新しいクレジットカードを作る、電気やガスの契約を結ぶ、税金の還付金を受け取る、を挙げています。
今回は、社会保障番号が名前や生年月日と組になって見られていました。番号だけが漏れた場合より、本人になりすますのに使いやすい組み合わせだと思います。
国防総省は対象者に手紙を送り、1年間の信用情報の監視を無料で提供した
国防総省は、対象者に通知の手紙を送りました。IBTimes UKによると、手紙の日付は2026年9月18日です。
対象者は、1年間の信用情報の監視と、なりすまし被害にあったときの、被害を元に戻す手続きの支援を、無料で受けられます。 Federal News Networkによると、この監視は、個人情報の保護を請け負う会社IDXが担います。信用情報の監視とは、本人の名前で新しい借り入れやカードの申し込みがあったときに、本人へ知らせる仕組みです。
国防総省は、発表の時点で、漏れた情報が悪用された証拠は見つかっていないと説明しています。
まだ分かっていないのは、誰がアクセスしたのか、なぜファイルが暗号化されていなかったのか
一方で、IBTimes UKは、国防総省がまだ答えていない点を3つ挙げています。
誰がファイルを見たのか。なぜ社会保障番号が暗号化されないまま置かれていたのか。なぜ弱点が見つかってから通知の手紙まで2ヶ月かかったのか。 この3つは、発表の時点で明らかにされていません。
よくある疑問
Q:日本に住んでいる人も対象になりますか。
A:対象は、DMDCに記録がある人です。日本に住んでいても、米軍で働いていた人や、軍人の家族として登録されていた人は、記録がある可能性があります。対象者には国防総省から通知の手紙が届いているので、手紙が届いたかどうかで確かめられます。
対象者への通知の手紙は、不正アクセスが始まってから約1年後に出された
不正アクセスが始まったのは2025年10月で、対象者への手紙の日付は2026年9月18日です。そのあいだの約1年、対象者は自分の情報が見られていたことを知らされていませんでした。 信用情報の監視が始まるのは、そのあとです。
もし自分の情報を預けている先から、1年前から見られていたと知らされたら、まず何を確かめるでしょうか。
