自分より優秀な部下を100人持つ感覚でAIエージェントを使うとき、自分がやることは2つです。
しかし、100人の部下が出してくる仕事は、誰が確認するのでしょうか。
AIのほうが自分より仕事ができると考えて任せる
AIエージェントは、渡された目的に向けて、自分で調べ、判断し、作業を最後まで進めます。1回聞いて1回答えるチャットとは違い、途中で道具を使い、結果を見て次の手を決めます。
このAIエージェントを部下として使うなら、最初に、AIのほうが自分より仕事がうまいと考えます。AIエージェントは人より記憶力がよく、センスもよいからです。自分のほうがうまいと思って任せると、出てきたものを全部自分で直すことになり、部下が増えるほど自分の手が詰まります。
100人分の確認は、課長・部長の役をするAIエージェントにさせる
部下が100人いると、出てくる仕事を自分1人では確認しきれません。人の組織なら、担当が作ったものを課長が確認し、課長が通したものを部長が確認します。AIエージェントでも同じ形にして、仕事をするエージェントとは別に、課長・部長の役をするAIエージェントを置きます。
1つのチームの部下を5人とすると、担当100人には課長が20人、その上に部長が4人つきます。自分の下に並ぶのは、部長の4人だけです。

役を分けたら、持たせるスキルも役ごとに分けます。スキルとは、AIエージェントに渡しておく仕事の手順書のことです。部長の役には部長としてのスキル、課長の役には課長としてのスキル、担当には手元の作業のスキルを揃えます。
役とスキルの分け方は以下のとおりです。
| 役 | やること | 持たせるスキル | 出したものの行き先 |
|---|---|---|---|
| 担当のAIエージェント | 仕事をする | 手元の作業の手順(例:お詫びのメールの書き方) | 課長の役をするAIエージェント |
| 課長の役をするAIエージェント | 担当が出したものを確認し、合格か差し戻しかを決める | 確認のしかたと、合格・差し戻しの基準 | 合格なら部長の役へ、差し戻しなら担当へ |
| 部長の役をするAIエージェント | 課長が合格にしたものが、仕事の目的に合っているかを確認する | 仕事の目的と、それに合っているかの見方 | 合格なら自分へ、差し戻しなら課長の役へ |
| 自分 | 部長が合格にしたものを読む | 持たない。確認役に指示を出し、視座のズレを教える側 | 直したところは、理由と一緒に確認役へ教える |
確認役には「前提どおりにできている」と判断するな、と指示する
課長の役をするAIエージェントには、「前提どおりにできている」と判断して合格にするな、と指示します。担当のAIエージェントは、渡された前提のまま仕上げます。前提が間違っていれば、間違ったまま上手に仕上がります。確認役が同じ前提を見て「前提どおりにできている」と判断すれば、その間違いはそのまま自分のところまで届きます。
課長の役をするAIエージェントへの指示は、たとえば次のように書きます。
- 「前提どおりにできている」と判断して合格にしない
- 合格か差し戻しかで迷ったものは、差し戻す
- 差し戻すときは、理由を1行添えて担当に返す
- 合格にしたものには、どこを確かめたかを1行添えて部長の役に渡す
確かめた場所が1行ずつ書き添えられて届くので、自分は、課長の役をするAIエージェントがどこを確かめたのかを先に読み、そのあとで仕事そのものを読めます。
課長の視点で、確認役に視座のズレを教えていく
確認役のAIエージェントには、自分が課長の視点に立って、確認のしかたを学習させます。確認役が合格にしたものを自分が読み、自分なら直すと思ったところが、確認役と自分の視座のズレです。そのズレを、直した理由と一緒に1つずつ教えていくのは、人の課長を育てるのと同じです。人の課長と違うのは、AIエージェントは人より記憶力がよく、教えたことを次の確認にも使う点です。
たとえば、担当のAIエージェントが、納期に遅れたことを取引先にお詫びするメールを作ったとします。課長の役は、敬語と誤字を確かめて合格にしました。自分が読むと、相手がいちばん知りたいのは、いつ届くのかでした。そこで、新しい納期を1段落目に書くよう直し、課長の役をするAIエージェントに「お詫びのメールは、相手がいちばん知りたいことに1段落目で答えているかを見る」と教えます。
よくある疑問
Q:確認役も同じAIなら、担当と同じところで見落としませんか。
A:そのための指示が、「前提どおりにできている」と判断して合格にするな、です。担当が前提のまま仕上げたものを、確認役が前提のまま合格にしないように、この一文を入れておきます。
Q:課長の役と部長の役のAIエージェントを、最初から両方作る必要がありますか。
A:いいえ。最初は課長の役を1つ置けば足ります。担当のエージェントが増え、課長の役が合格にしたものを読む量が自分の手に余るようになったら、その上に部長の役を置きます。
まずは確認役のAIエージェントを1つ作る
自分より優秀な部下を100人持つ感覚でAIエージェントを使うとは、仕事も確認もAIエージェントに任せ、自分は指示を出すことと、確認役との視座のズレを教えていくことの2つを受け持つことです。いま自分1人で確認している仕事を1つ選び、そこに課長の役をするAIエージェントを置いてみてはいかがでしょうか。
