社長の器以上に会社は大きくならないのはなぜか?

「社長の器以上に会社は大きくならない」は人格の話として語られることの多い言葉ですが、器の大きさは決定権がどこに置かれているかで決まります。人事と資源配分の権限が社長1人に集まっている限り、社長1人が処理できる量が会社の大きさの上限になります。

しかし、会社が大きくなれば判断は部長や課長に任されていくと考える方も多いと思います。実際には、人が増えて決裁規程が整っても、社長の判断を待つ状態が続く会社があります。

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100人以下の会社では、業績のほとんどを社長の戦略が決める

ランチェスター経営株式会社は、従業員100人以下の会社では業績の96%以上が社長の戦略実力で決まるとしています。100人を超える会社で社長の決める割合がどうなるかは、同社の数字からは分かりません。ここから先は筆者の解釈です。

数百人を超える会社では、社長は日々の判断を部長や課長に任せる

100人以下の会社と比べて、数百人を超える会社でまず変わるのは、社長が自分の目で見られる範囲です。商談、採用面接、案件の受注といった日々の判断は、部長や課長に任されます。

100人までの会社なら、どの顧客に会い、誰を採用し、どの案件を受けるかを社長が自分で決められます。96%という数字が成り立つのは、社長が全部を見られる規模だからだと思います。

会社が大きくなったぶん、社長の影響力も薄まったと考えがちです。減ったのは社長が自分の手でやる仕事の量で、社長が決めている割合とは分けて考える必要があります。

現場を任せる人と使える資源を決めているのは社長

日々の判断が部長や課長に任されても、部長や課長を選んだのは社長です。誰を昇格させ、誰にどの部門を任せ、誰を外すかという人事の決定は、会社が大きくなっても社長の手元に残ります。

取締役会が承認する形をとる会社でも、人事の原案を作るのは社長です。どの事業に人とお金を多く配り、どの事業から引くか、撤退をいつ決めるかという資源配分も、戦略の側の決定として社長に残ります。

現場の判断は組織が下していても、判断を下す人と、その人が使える資源を決めたのは社長です。中間層の質が問題だと言われるとき、中間層を選んで配置した人をたどると社長に行き着きます。

会社が大きくなっても、社長が決めている割合は掛け算で高いまま残る

人事と資源配分を社長が決めているなら、社長が決めている割合は、資源配分を含む戦略を握る度合いと、幹部の人事を握る度合いの掛け算で表せます。社長の割合を社長と部長・課長の判断の足し算で考えると、人が増えるほど薄まりますが、掛け算では、戦略と人事の両方を高く握っている限り、会社が大きくなっても社長1人が決める割合は高いまま残ります。

仮の数字で例を置くと、戦略と人事をそれぞれ0.9の度合いで握る社長は、0.9×0.9で会社の決定の81%を下していることになります。

社長が会長に退いても、決める権限が移らなければ承継は進まない

社長が会長に退いても、決める権限を移さない限り、社長が決めていた割合は会長の側に残ります。会長に退く場面で起きることは、大きく分けて2つです。

  1. 戦略は会長が握り続け、新社長は執行に専念する
  2. 戦略を決める権限そのものを新社長へ移す

1つ目の形では、決める権限が会長の側に残ったままなので、会社が伸びる上限も当面は変わりません。会長が判断できなくなったり亡くなったりしたとき、誰も引き継いでいないので、代わりに決められる人がいなくなります。

2つ目の形では、会社が伸びる上限は、権限を移した日から新社長の判断で新しく決まります。前任者と同じ判断力を後任者が持っている保証はないので、上限はたいてい下がります。それでも、下がった上限は次の誰かが上げ直せるので、2つ目の形のほうが会社は続きます。

会社が伸びる上限の下がり幅を小さくする方法の1つは、前任者が判断した理由を、会社の判断基準として言葉にしておくことです。なぜ撤退したのか、なぜ抜擢したのかの理由が書いてあれば、後任者は同じ問いを自分で立てられます。

社長が決めるのは会社が伸びる上限で、現場が積み上げた価値も会社の実力に入る

社長が決めているのは会社がどこまで伸びるかの上限で、上限の下で現場が積み上げた価値も会社の実力に入ります。原因をすべて社長に帰す見方には、次の3つの限界があります。

  1. 問題をすべて社長に帰すと、現場が改善を提案する動機が下がる
  2. 社長が決める割合は決算書に載らず、外から確かめる方法がない
  3. 長年の顧客との関係や現場が改良した手順など、社長の決定と別に積み上がる価値がある

よくある疑問

Q:社長がすべて決めている状態は、権限委譲で解消できますか。

A:決裁権限規程を整えれば、金額の小さい判断は現場に移せます。ただし、誰に権限を持たせるかを決めるのは社長なので、人事と資源配分の権限は社長に残ります。社長が決める割合を動かすには、人事と資源配分の権限を移す必要があります。

Q:社外取締役を入れれば、社長への集中は和らぎますか。

A:社外取締役を入れると、取締役会の決議には影響が出ます。社外取締役の選任にも社長の意向が働くことが多いので、入れるだけでは足りず、選ぶ人を変える必要があります。

Q:承継が進んでいるかどうかは、どう見ればよいですか。

A:新しい体制になってから、前任者が反対しそうな決定が1つでも通ったかを見ます。通っていなければ、決める権限はまだ前任者の側にあると考えられます。

社長がいない1週間に止まる案件の数が、社長の決めている割合を示す

社長が決めている割合は、社長が不在の1週間に止まる案件の数で確かめられます。1週間のあいだに前に進む案件と止まる案件を、数えてみてください。

止まった案件ごとに理由を見ると、人事の問題か、資源配分の問題か、本来は現場で決まるはずのものかが分かります。止まる案件の数が年ごとに減っていれば、決める権限は社長1人から分かれ始めています。

人格を変えるより、権限の置き場所を変えるほうが現実的です。あなたの会社では、社長がいない1週間に、いくつの案件が止まりますか。

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