固定給30万円でも、最低賃金を下回ることがある?自社が割れているかをどう判定するか?

月給30万円を払っていれば最低賃金を下回りようがない、と思われるかもしれません。

しかし、最低賃金と比べるのは基本給です。通勤手当も、割増賃金も、固定残業代も、計算から外れます。固定残業代を厚くしている会社ほど、外れる額が大きくなります。

自社の時間額が最低賃金を下回るかどうかは、基本給の額と、年間休日の日数と、事業場のある都道府県の3つで決まります。

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固定残業代を、月給から外す

まず、月給の総額から、最低賃金の計算に入れない賃金を差し引きます。固定残業代は時間外労働の手当なので、差し引く側に入ります。みなし残業代と呼んでいる場合も同じです。

ほかに差し引くのは、精皆勤手当、通勤手当、家族手当、結婚手当のように臨時に支払われる賃金、賞与のように1か月を超える期間ごとに支払われる賃金です。愛知労働局は、時間外労働と休日労働と深夜労働の手当と合わせて、4種類を挙げています。

月給30万円のうち固定残業代が96,000円なら、残るのは204,000円です。残った204,000円が、最低賃金と比べる額になります。

年間休日から、1か月平均所定労働時間を出す

差し引きが終わったら、次は、割るのに使う時間数を出します。1か月平均所定労働時間は、365日から年間休日日数を引き、1日の所定労働時間を掛けて、12で割った数です。

年間休日115日、1日8時間の会社なら、365日から115日を引いて250日です。250日に8時間を掛けると2,000時間で、12で割って166.67時間になります。年間休日が105日なら173.33時間になり、同じ基本給でも時間あたりの額は下がります。

残った基本給を、その時間数で割る

2つの数字が揃ったので、割ります。204,000円を166.67時間で割ると、1時間あたり1,224円です。

厚生労働省が示している月給制の換算方法も、月給を1か月平均所定労働時間で割る、という形です。

出た時間額を、事業場がある都道府県の最低賃金と比べる

時間額が出たら、どの都道府県の額と比べるかを決めます。基準になるのは、判定する社員が働いている事業場の場所です。東京の拠点で働く社員なら、本店がどこにあっても東京都の額で判定します。

2026年10月1日から、東京都の最低賃金は1,280円になります。神奈川県は1,279円、埼玉県は1,196円、千葉県は1,195円で、いずれも同じ日からです。

さきほどの1,224円は、東京都の1,280円を下回っています。年間休日115日で1日8時間の会社が東京都で足りるようにするには、基本給が213,333円必要です。

固定残業代そのものが下限を満たしているかも確かめる

基本給が足りていても、確かめることがもう1つあります。固定残業代は、その時間数に見合う割増賃金の額を下回れません。基本給を1か月平均所定労働時間で割った時間額に、割増率の1.25を掛け、固定残業時間を掛けた額が必要です。

基本給213,333円、1か月平均所定労働時間166.67時間で、固定残業時間を60時間としているなら、固定残業代は96,000円必要です。基本給と足すと309,333円になり、月給30万円には収まりません。

私も、自社の中途採用の求人で、現行の額で計算した条件が最低賃金を下回ると指摘されました。示された直し方は、年間休日を1日増やす案と、基本給を1,000円上げる案の2つです。どちらも現行の額で計算されていたので、10月1日には届きません。固定残業時間を60時間から45時間に下げ、基本給224,000円、固定残業代76,000円としたところ、時間あたりは1,344円になりました。月給30万円と年間休日115日は変えていません。

最低賃金を下回っていたら、2026年9月中に直す

比べた結果が下回っていたなら、直すのは2026年9月中です。10月1日を過ぎてから直すと、その日から直した日までの差額を、遡って払うことになります。

最低賃金に満たない賃金を定めた部分は無効になり、最低賃金と同じ額を定めたものとして扱われます。支払わなかった場合は、50万円以下の罰金の対象になります。どちらも最低賃金法に書かれています。

在籍している社員の賃金を直すには、会社は就業規則と賃金規程を変更し、本人に書面で通知することになります。10月1日から適用するなら、9月中に手続きを終えることになります。掲載中の求人票も、同じ日までに直しておくことになります。

来年の引き上げを吸収できる基本給にしておく

直し終えたあと、会社が決めることがもう1つあります。最低賃金は毎年10月に改定されるので、改定後の額にぎりぎりで合わせた設計は、翌年また下回ります。今年の引き上げ額は、東京都で54円でした。

今回直すときに、来年の引き上げを吸収できる基本給にしておいてはいかがでしょうか。自社の設計が通るかどうかの個別の判断は、所轄の労働局や社会保険労務士に確認してみてください。

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