ドラムマシンで鳴らせるのに、なぜ人がドラムを叩くのか?打ち込みと生ドラムの違い

ドラムの音は、ドラムマシンや打ち込みでも鳴らせます。人が叩いたときのわずかなタイミングのずれも、打ち込みで作れます。

それでも人がドラムを叩く意味は何なのでしょうか?

目次

人がドラムを叩く意味は、叩く身体の動きを見せることにある

人が叩くと、叩いている身体の動きが客席に見えます。音のほうは、人が叩いたドラムと同じものを打ち込みでも作れます。

人が叩いたときのずれや揺れは、打ち込みでも作れます。音楽制作ソフトには、打ち込んだリズムにわざとずれを加える機能が付いています。

どんなずれなら人が叩いたように聴こえるのかも、研究で分かっています。ヘニッヒらは、人の演奏のずれが、前後の拍とゆるやかにつながりながら揺れる性質を持つことを示しました(PLoS ONE、2011年)。この性質のずれは計算で作れるので、人が叩いたように聴こえるリズムは打ち込みでも作れます。

人が叩いた演奏をずれも含めて録音すれば、その録音を何度でも同じように流せます。音だけを比べるなら、人が叩く理由は残りません。

人は演奏を聴いているつもりで、演奏する人の動きを見ている

ハーバード大学のツァイは、クラシック音楽の国際コンクールで最後に残った3人の演奏を、音だけ、無音の映像だけ、映像と音の3通りで見せ、実際の優勝者を当てさせました(米国科学アカデミー紀要、2013年)。参加者の大半は「判断でいちばん大事なのは音だ」と答えていました。

ところが、音楽の経験がほとんどない参加者が音だけを聴いて優勝者を当てた割合は25.5%で、3人の候補から当てずっぽうで選んだ場合を下回りました。無音の映像だけを見て当てた割合は52.5%です。演奏者の姿を動く輪郭線だけにした映像でも、当てずっぽうより高い割合で当たりました。

この研究が調べたのはクラシックのコンクールの審査で、ドラムの演奏ではありません。それでも、音が大事だと答える人が、実際には演奏する人の動きを見ていることを示しています。人は演奏を、演奏する身体の動きで受け取っています。

ドラムは、叩く人の身体の動きがそのまま見える楽器である

ドラマーは、両手両足を使い、腕を振り下ろして音を出します。客席から見ると、腕の振りも上体のひねりも、そのまま目に入ります。

野球でも、結果より身体の動きが記憶に残ることがあります。神戸新聞は長嶋茂雄さんを振り返る社説で、「ヘルメットを飛ばすほどのスイング」を挙げています。エンタメとは、そういう身体の動きを見せることだと私は考えています。

ドラムの演奏を観る人は、音を聴きながら、ドラマーの身体の動きを見ています。

タムを低く置くと、混合叩きで動く腕が客席から見える

叩く身体を見せるために、私はタムをかなり低く置いています。客席から、へそのあたりから上が見えます。

この配置でタムの混合叩きをすると、腕の動きが客席から見えて、かっこよく見えます。プロのドラマーはハイハットの細かな刻みにすごさを感じますが、素人のリスナーは、意外とタムの混合叩きを好み、そこで歓声が上がります。

メインのハイハットを右側に置き、身体全体を見せる

私はメインのハイハットとして、右側にリモートハイハットを置いています。右側に置くことで、身体全体を見せて叩けます。左側のハイハットは補助です。

私は、客席から身体全体が見えるようにセットを組んでいます。

音で差がつかないから、人が叩く意味は身体性に集まる

ドラムの音は打ち込みで作れ、人が叩いたずれも作れます。だから人がドラムを叩く意味は、叩いている身体性を見せることに集まります。私がセットを組むときに見ているのも、客席から身体全体が見えるかどうかです。

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