電子ドラムの騒音は、窓と時間帯で下がる。振動だけは、買う前に床を1回測る

2階に電子ドラムを置いて、ヘッドホンで叩いていました。スピーカーは一度も鳴らしていないのに、隣の家から振動のことを言われました。

世の中に出ている答えは、だいたい同じです。もっと静かな機種に替える、マットを敷く、ペダルの下に防振ゴムを挟む。どれも間違ってはいませんが、敷いたうえで苦情が来た人に向けては、その先が書かれていません。

この記事が扱うのは、騒音と振動を分けて数える手順です。空気を伝わるほうは、窓を閉めて、叩く時間を昼の1時間に寄せると下がります。床を伝わるほうは、床が何ヘルツで揺れているかを一度測らないと、打つ手が決まりません。同じ振動でも、50から80ヘルツと、2から5ヘルツでは、やることが正反対になります。

目次

静音性能の75パーセントは、打撃音と振動を足した数字である

ローランドのVQD106は、従来のV-Drumsキットと比べて、打撃音と振動の発生を最大75パーセント軽減すると公称されています。当社設定条件下の測定、という但し書きが付いた数字で、私はこれを静かさの数字として読んでいました。

読み違えていたのは、そこが打撃音と振動を足したものだという点です。どちらがどれだけ下がったのかは、分けて書かれていません。振動で苦情を受けている人が知りたいのは後ろ半分ですが、この表記からその半分だけを取り出すことはできません。

パーセントの基準も公開されていません。販売店の解説記事では、別の静音部品の75パーセントをおよそ12デシベル減と換算していて、逆算すると音の圧力の比を前提にした計算になります。音のエネルギーを基準にすれば、同じ75パーセントが6デシベル減です。2倍の開きが、表記だけでは判別できません。

パッドごとのデシベルは、探しても出てこない

では実測を見ればいい、と思いました。ところが、シンバルパッド、ハイハット、リムショットの打撃音を距離つきで測った数字は、日本語でも英語でも見つかりませんでした。メッシュとゴムとシリコンをデシベルで並べたデータも、周波数ごとに分けたデータもありません。

距離が書いてある測定は、個人が公開しているものが1件だけでした。キックパッドから20センチほどの位置でスマートフォンのアプリを使ったもので、測った本人が参考値だと断っています。ローランドが公表しているVQD106の打撃音は平均で55から59デシベルほどなので、この1件とも大きくは離れていません。

私は最初、打撃音を80デシベルと置いて、そこから窓と距離を引いていきました。あとになって実測を探しにいくと、その80デシベルの出どころがありません。置き直した65から75デシベルという幅も高すぎて、土台の無い数字から引き算をしていたことになります。

窓で止まらない低音は、出す側で消せる

窓は、高い音ほどよく止めて、低い音ほど通します。だから窓を閉めても、キックの低音だけが残ります。私はここで一度、低音はしょうがない、と思いました。

向きが変わったのは、止める側と出す側を分けたときです。生のバスドラムは、皮そのものが空気を押して音になります。電子ドラムのキックパッドから出ているのは、ビーターがパッドを叩く機械の音です。機械が出している音なら、止める側ではなく出す側で小さくできます。

ビーターを軽いものに替えるか、ペダルの下にゴムを敷きます。ローランドからもそのゴムが出ています。ただしゴムは防振だけなので、床へ入る揺れには効きますが、空気へ出る打撃音は別に扱うことになります。

叩ける時間を書き出したら、買うものが減った

叩ける時間を書き出すと、朝8時30分から18時までの間で、1時間ほどでした。ドラムは8時間叩けるものではありません。

音の大きさを1日でならす計算のしかたがあります。それに当てると、1時間だけ鳴る音は、1日を通した値としてかなり下がります。ただ、この計算を生活の音に当てるのが適切かどうかまでは確かめきれていません。確かに言えるところまで戻すと、同じ大きさの音でも、続く長さが変われば受け取られ方が変わる、というところです。

時間を決めると、買うものが減りました。静音ビーターのKT-10は持っていましたが、ふみ心地がぜんぜん違うので、そのままでは練習になりません。ところが18時以降は叩かないと決めた時点で夜がなくなり、KT-10は箱に戻してよいことになりました。内窓を足す話も、そこで止まっています。

時間の区切りも数値も、自治体の条例によって違います。ある自治体の数字を全国共通の決まりとして読むと外れるので、住んでいる自治体のものを一度見ておいてください。

隣まで10メートルあって、それでも言われたのは振動だった

空気を伝わる音は、距離で落ちます。隣の家まではおよそ10メートルあり、窓は閉めていました。音はヘッドホンで聞いているので、スピーカーからは何も出ていません。それでも来た苦情は、騒音ではなく振動のことでした。

残っているのは、床を伝わるほうです。2階の床から柱と基礎を通って地面へ入り、地面から隣の家の床へ上がります。ここは機種の静音性能とは別のところで決まります。

比べる相手も変えました。何デシベルなら大丈夫か、ではなく、その家がすでに受け入れているできごとと比べます。地盤が軟らかいので、道路で車のドアが閉まると家がドーンと揺れます。トラックが入れない道なので、そのドーンは2時間に1回くらいです。

2時間に1回のドーンと、1時間続くドンドンは、大きさが同じでも別のものです。人が気にするのは、大きさよりも、回数と続く長さのほうです。基準を絶対的なデシベルからこのドーンに置き換えたところで、話が前に進みました。

50から80ヘルツと、2から5ヘルツでは、打つ手が正反対になる

キックを踏むと、床には2つの揺れが同時に入ります。ビーターがパッドを叩いた打撃の揺れと、体重が乗って抜けていく、もっとゆっくりした揺れです。前者はおおよそ50から80ヘルツ、後者は2から5ヘルツのあたりに出ます。

高いほうは、距離で落ちます。地面を伝わる揺れは周波数が高いほど早く弱まるので、10メートルも離れれば目に見えて減ります。防振台やゴムも効きます。ばねやゴムは、速い揺れを吸うのが得意だからです。

低いほうは、そうなりません。10メートル離れても、ほとんど減らないとされています。防振台も効きにくくなり、ゆっくりした揺れに対しては台ごと持ち上がって下りるだけになります。ここを下げる手は、機材ではなく踏み方の側にしかありません。体重をどう乗せて、どう抜くかです。

買う前に、床にスマホを置いてキックを1回測る

どちらが出ているかは、測れば分かります。スマートフォンには加速度計が入っていて、加速度の大きさと周波数を表示するアプリが、無料のものも含めて出ています。床に直接置いて、キックを何回か踏むだけです。

ピークが50から80ヘルツのあたりに出るなら、防振台やゴムで受け止める方向です。2から5ヘルツのあたりに出るなら機材を足しても下がらないので、踏み方の側へ手を移すことになります。

先に測ると、買うものが変わります。VQD106は30万円ほどしますが、測るのは一度で、費用はかかりません。静音性能の比較を並べている時間も、ここで終わります。

減らしたかったのは、音ではなかった

最後に、もう一度ひっくり返ったところがあります。ここまで騒音と振動の話をしてきましたが、そもそも引っかかっていたのは音ではありませんでした。歩いて10分のスタジオへ通う、その手間のほうです。毎日叩いているので、往復の時間が積み上がっていきます。だから問いは、家で叩ける状態にするためにどこまで払うか、に変わります。静音性能の比較は、その問いの手前にあります。

静かな機種を並べる手が止まらないなら、並べるのを一度やめて、床にスマホを置いてみてはいかがでしょうか。ピークがどこに出るかが分かれば、次に見るのが防振台なのか、自分の踏み方なのかが決まります。近所とのやりとりがすでに始まっているのであれば、数字を出す前に、自治体の生活環境の窓口に相談先を尋ねておくと、話の進め方が変わってきます。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次