うまくいったとき、自分の力でやり遂げたと思いたくなるのは、誰にでもあることです。
それでも謙虚でなければいけないのは、なぜなのでしょうか?
謙虚でなければいけないのは、次もうまくいくかを見誤らないため
うまくいった理由から、自分の力ではない部分を分けておかないと、次に同じことができるかを見誤ります。
うまくいった理由には、自分の判断と、自分が作っていない条件の2つが含まれています。たとえば、人気のIP(キャラクターや作品)を使った企画が当たったとき、当たった理由には、企画の判断と、そのIPが最初から持っていた人気の両方が入っています。
2つを分けずに全部を自分の力だと思い込むと、人気のIPが無い企画でも同じように当たると見積もります。謙虚さとは、この見積もりを正しく保つための姿勢だと思います。
人は、うまくいったことを自分の力のおかげだと考えやすい
人は、うまくいった結果は自分の力に、うまくいかなかった結果は周りの事情に結び付けやすいことが分かっています。
この傾向は、心理学では自己奉仕バイアスと呼ばれます。フロリダ大学のShepperdらが2008年にこの傾向を整理した論文(Social and Personality Psychology Compass 2巻2号)では、望ましい結果の責任は自分で引き受け、望ましくない結果の責任は外に向ける傾向として説明されています。
結果が良いと、判断まで良かったように見える
結果は、判断が良かったかどうかの評価も変えます。同じ情報で同じ判断をしても、結果が良かったときのほうが、判断が良かったと評価されます。
ペンシルベニア大学のBaronとHersheyは1988年、医療の選択や賭けについて、他人が下した判断を学生に評価させました(Journal of Personality and Social Psychology 54巻4号)。2人が学生に「判断した人と同じ情報を持っている」と伝えても、学生は、結果が良かった場合のほうを、判断の質も判断した人の能力も高く評価しました。結果で判断を評価すべきではないと答えた学生も、評価は結果に引っ張られていました。
自分の判断を振り返るときも、同じことが起きているはずです。うまくいった時点で、判断の中身まで正しかったように見えてしまうのだと思います。
誰もが、自分の見たいものを見る
2つの研究から考えると、人は結果を見たあとで、自分が見たい理由を選んでいるのだと思います。自分はすごいと思いたい人には、うまくいった理由のうち、自分の判断の部分が目に入りやすくなると思います。
人気のIPを使った企画なら、IPが最初から持っていた人気は自分の手柄にならないので、目に入りにくくなります。周りの人からほめられると、見たい理由のほうがさらに確かなものに思えてきます。
物事を始める前に、なぜうまくいくと思うかを書き残す
ここまでの傾向は、心がけだけでは抑えにくいものです。そこで、あとから書き換えられない記録を残します。物事を始める前に、なぜうまくいくと思うかを書き、結果が出たあとに照らし合わせます。
書くのは次の3つです。
- うまくいくと思う理由(例:この商品は、共働きの家庭が困っている平日の夕食の準備に合っている)
- うまくいかないとしたら、その原因
- 自分が作っていない条件(例:人気のIPを使える、人通りの多い場所に出せる、季節の需要が重なっている)
結果が出たあとで理由を書くと、結果に合わせて理由を作り直してしまいます。だから、始める前に書きます。
結果が出たら、その結果を、前に書いた理由と照らし合わせます。以下のとおりです。
| 結果 | 前に書いた理由との関係 | 次にやること |
|---|---|---|
| うまくいった | 書いた理由どおりに進んだ | 3つ目に書いた条件がそろっていたかも確かめてから、同じ判断を次も使う |
| 書いた理由とは別の要因で進んだ | その要因を、自分が作っていない条件として書き足す。次も同じ結果になるとは見込まない | |
| うまくいかなかった | 書いた理由どおりに進めた | 理由のどこが外れていたかを見直す |
| 書いた理由とは別の要因で進んだ | その要因を、2つ目の「うまくいかないとしたら、その原因」に書き足す |
次に何かを始めるとき、自分が作っていない条件を書き出してみてはいかがでしょうか。






