噂話とは、その場にいない人について話すことです。噂話は、集団の絆を保つ働きを持つと論じられる一方、頻繁に噂話をする人物は、実験で好かれにくいと評価されました。
しかし、噂話は思考の癖まで変えるのでしょうか。この点は、噂話を対象にした研究では確かめられていません。
この記事では、噂話に惹かれる3つの背景、人間関係と思考への影響、噂話から距離を置く3つの方法を順に並べます。
噂話に惹かれる理由の3つの説明
噂話に惹かれる背景として、集団の絆を保つ働き、他者との比較、集団の情報から外れる不安の3つの説明があります。このうち、絆を保つ働きは、進化の視点から論じられています。
仲間とのつながりを保つ働き
ダンバーは2004年の論文(Review of General Psychology)で、噂話は、霊長類の毛づくろいから続く、絆を保つ仕組みだと論じました。毛づくろいは信頼と義務を土台にしますが、ほぼ1対1の活動で、使える時間にも上限があります。言葉なら、複数の人に同時に話しかけられます。
ダンバーは、観察研究で自由な会話の約65%が社会的な話題だったことを挙げ、噂話が社会的なつながりを保つ働きを持つと論じました。ここでの噂話は、社会的な話題の会話を広く指しています。
他人と比べる心理
ウェルトとサロベイは2004年の論文で、すべての噂話に社会的比較が含まれると論じました。他者の欠点や失敗を話題にすると、自分が安全な位置にいると感じて、短期的に安心できるという説明もあります。
ただ、他者との比較で得た安心は、外部の状況に左右されて安定しにくいと思います。
自分だけ知らない不安
噂話は、集団の中で何が起きているかを知る手段でもあります。ダンバーは、言葉によって、社会的なネットワークの中で起きていることを把握し続けられると論じています。
自分だけが知らない情報があると孤立への不安が生まれ、この「知っておきたい」という欲求が、内容の真偽を確かめる前に人を情報へ向かわせるという説明もあります。
噂話の影響:実験で示されたことと、説明にとどまること
実験で示されているのは、噂話をよくする人物が好かれにくいと評価されたことです。思考への影響は、説明として語られている段階です。
人間関係:噂話をする人は好かれにくいと評価された
サリー・ファーリーの2011年の実験(European Journal of Social Psychology)では、128人の参加者が、他人について話す機会の多い人物、または少ない人物を思い浮かべて評価しました。参加者は主に女子学生でした。
噂話の多い人物は、少ない人物より好感度が低く、社会的な力も小さいと評価され、他人を悪く言う機会の多い人物がもっとも低く評価されました。この実験が測ったのは、参加者が思い浮かべた人物の好感度と社会的な力で、信頼は測られていません。
別の研究では、他人の特徴を語った人について、聞き手がその特徴を語り手のものと見なしやすいことが示されています(スコウロンスキーら、1998年、Journal of Personality and Social Psychology)。写真と短い文、または俳優の映像を使った4つの実験です。
噂話に同調する人は、参加者相互の信頼を損なうという説明があります。同調する様子を見た人が、自分のいない場でも話題にされるかもしれないと考えても、不思議ではないと思います。
思考:噂話が悪い情報への偏りを強めるという説明
バウマイスターらは2001年のレビュー(Review of General Psychology)で、心理学の幅広い領域で、否定的な出来事や情報は、肯定的なものより強く影響すると結論しました。
他者の欠点や失敗の話題に繰り返し触れると、この偏りが強まり、否定的な面ばかりに注意が向く癖ができるという説明があります。この点は、噂話を対象にした研究では確かめられていません。
時間の使い方:自分の活動に使える時間が減る
他者の成功や失敗の情報を聞くのは受け身の時間で、自分で何かをつくる時間とは別の使い方です。その分、自分の目標や活動に使える時間は短くなり、自分の価値基準で動く時間も少なくなると思います。
噂話の場でできる3つの対応
噂話の場でできる対応は、話題を変える、その場を離れる、同調せず中立に返す、の3つです。どれも、相手を責めずに、自分は噂話に加わらない選び方です。
話題を変える
噂話を正面から止める必要はありません。「そういえば、〇〇のプロジェクトは進んでいますか?」と仕事の話題を出す、「最近読んだ本で興味深いものがあって」と別のテーマを出すなど、会話の向きを変えます。
その場を離れる
話題を変えにくいときは、席を立ちます。「すみません、少し電話をかけてきます」「飲み物を補充してきます」と言えば、噂話に触れる時間を短くできます。
同調せず、中立に返す
同意を求められても、感情的に同調しなくて構いません。「そうなんですね」「私はその件について詳しくないので」と返せば、参加しない意思を穏やかに示せます。相手を評価せず、自分は加わらない姿勢を保ちます。
噂話に使っていた時間を、何に使いますか
噂話に使っていた時間とエネルギーを、自分の目標や活動に回してみてはいかがでしょうか。






