JTCは「Japanese Traditional Company」の略で、日本の伝統的な大企業を指すネットスラングです。年功序列、終身雇用、新卒一括採用、稟議による遅い意思決定といった特徴を持つ会社が、この言葉で語られます。その土台にあるのが、職務を決めずに新卒を採用して定年まで雇う「メンバーシップ型雇用」です。
しかし、「自分の会社はJTCなのか」と気になっても、JTCかどうかを決める基準は定まっていません。「伝統的」の定義が決まっていないためで、この言葉は自分の会社を自虐的に語る場面でよく使われます。
この記事では、JTCの特徴、言葉が広まった経緯、メンバーシップ型とジョブ型の違い、JTCの強みと弱み、若手のキャリア戦略を順に説明します。
JTCは日本の伝統的な大企業を指す言葉
JTCは、終身雇用や年功序列が残る日本の大企業を、外資系企業やWeb系のスタートアップと比べて話すときに使われます。「伝統的」に明確な定義はなく、使う人によって指す範囲が変わります。
JTCという言葉が指す特徴
この言葉が指す特徴は、年功序列、終身雇用、新卒一括採用、遅い意思決定、上意下達の5つに整理できます。
- 年功序列:勤続年数に応じて役職や給与が上がる。
- 終身雇用:新卒で入社した社員を定年まで雇う前提がある。
- 新卒一括採用:毎年決まった時期に、新卒の学生をまとめて採用する。
- 遅い意思決定:稟議のように、複数の階層の承認を経て物事が進む。
- 上意下達:上の階層が決めたことが下に伝わる。
職務を決めない新卒の一括採用と、年功的な賃金による長期勤続は、高度経済成長期に製造業と大企業を中心に広まった仕組みだと、労働政策研究・研修機構の資料が説明しています。
JTCという言葉が広まった経緯
ITmediaの調査では、JTCという言葉は2019年3月ごろにTwitterで使われ始めたとみられています。外資系企業やWeb系の企業と比べて、自分の会社の古さを語る言葉として広まりました。
同じ時期に、働き方の見直しも進みました。2019年4月から、大企業の時間外労働に法律で上限が設けられ、中小企業にも2020年4月から適用されています。働き方を見直す動きが、自社の習慣を点検するきっかけになったと思います。
メンバーシップ型とジョブ型で見るJTCの構造
JTCの特徴の多くは、人を基準に採用・配置・評価する「メンバーシップ型雇用」で説明できます。これに対してジョブ型雇用は、仕事を基準に採用・配置・評価します。
野村総合研究所の用語解説によると、ジョブ型は、欧米で一般的な雇用システムをまとめて名づけた理論上の型です。特定の国に、この型どおりの制度があるわけではありません。
2つの雇用の違い
| 項目 | メンバーシップ型 | ジョブ型 |
|---|---|---|
| 採用 | 職種を決めずに、新卒を一括で採用する | 必要な職務を担える人を採用する |
| 人材の調達 | 社内で育てた人材を中心に配置する | 社外の労働市場からも調達し、転職を重ねてキャリアを築く |
| 育成と配置 | ゼネラリストを育て、会社の都合で配置転換する | 職種ごとに専門性を積む |
| 評価の基準 | 人 | 仕事 |
| 期間 | 期間の定めのない雇用が前提 | 前提にしていない |
比較の軸は、会社が何に対して報酬を払うかです。メンバーシップ型は社員という人に払い、ジョブ型は担当する仕事に払います。
メンバーシップ型の長所と短所
メンバーシップ型の長所は、職務が限定されていないので、事業の必要に合わせて社員を配置できることです。社員は長く勤めることを前提に、社内で育てられます。
短所は、配置転換が前提なので、特定の職務に長く就きにくいことです。そのため、ひとつの専門性を積み上げにくいと思います。
ジョブ型の長所と短所
ジョブ型の長所は、職務ごとに必要な能力が決まっているので、仕事の内容に沿って採用と評価ができることです。
短所は、決められた職務の外の仕事を割り振りにくいことです。職務が変わるときには、配置転換ではなく、採用や転職で人が入れ替わります。
JTCの強みと弱み
メンバーシップ型の特徴から見ると、JTCの強みは長期の人材育成、弱みは意思決定の遅さです。
| 強み | 弱み | |
|---|---|---|
| 雇用 | 長く勤める前提なので、時間をかけて社内で人を育てられる | 社外から経験者が入りにくい |
| 意思決定 | 複数の階層が承認するので、合意を取りながら進められる | 承認の階層が多く、決まるまでに時間がかかる |
| 職務 | 社員を事業の必要に合わせて配置できる | 特定の専門性を積みにくい |
職務を定める制度への移行
職務を定め、仕事の内容で給与を決める人事制度を取り入れる企業があります。野村総合研究所の用語解説は、職務給や役割給をジョブ型の人事制度として挙げています。
ただし、年功序列の制度から職務に基づく制度へ変わるには、採用、配置、評価、給与の全部を見直す必要があります。制度の名前を変えるだけでは、メンバーシップ型の運用は変わりません。
若手のキャリア戦略
会社の外でも通用する専門性を持ち、会社の給与以外の収入も得ておくことが、JTCで働く若手の備えになります。人事は会社の都合で決まるため、自分で動かせる部分を増やすことが、キャリアを自分で設計する第一歩です。
若手が検討できる行動を、次の5つに分けて挙げます。
- 専門性を2つ以上持つ:特定の分野で「この人に頼みたい」と言われる専門性を磨き、別の分野のスキルと掛け合わせる。
- 収入源を増やす:副業やフリーランスの仕事で、会社の給与以外の収入を持つ。副業が認められているかは、先に就業規則で確かめる。
- 海外の動向を知る:語学を身につけ、海外の働き方や求人を知っておくと、国内に限らない選択肢が見える。
- 働き方で会社を選ぶ:労働時間や柔軟性など、自分が大事にする条件を決めて、転職先を選ぶ。
- 成長市場に入る:起業やスタートアップへの参加も、大きな裁量と成長の機会を得る選択肢になる。
自分のスキルを書き出す
JTCかどうかを判定するより、自分のスキルと、5年後と10年後に就きたい仕事を書き出すほうが、次にやることを決めやすくなります。まずは担当してきた仕事を一覧にして、社外でも通じるスキルを探してみてはいかがでしょうか。
