なぜ、借金が先進国一の日本は破綻せず、フランスの財政危機が懸念されているのか?

国の借金のGDP比は、日本が先進国でいちばん大きく、2025年で206.5%です。フランスも116.0%と大きいものの、日本ほどではありません。

それでも、格付け会社が格付けを引き下げ、市場で金利が上がっているのは、日本ではなくフランスです。なぜ、借金が先進国一の日本は破綻せず、フランスの財政危機が懸念されているのでしょうか。

目次

危うさは、借金の大きさに、対外の割合と、自分で通貨を刷れるかを掛けて決まる

借金が増えているのは、どの先進国も同じです。違うのは中身です。同じ額の借金でも、対外の割合が大きく、しかも自分で通貨を刷れない国ほど、売られたときに逃げ場がありません。

日本とフランスを、この3つで並べると次のとおりです。

日本フランス
借金のGDP比(2025年)206.5%116.0%
国債を海外の投資家が持つ割合12.2%57.5%
返すお金を自分で刷れるか刷れる(円)刷れない(ユーロ)

日本は借金の大きさでは不利ですが、対外の割合と通貨で守られています。フランスは借金が大きいうえに、対外の割合と通貨の2つでも弱いところを抱えています。

日本の借金は、国外の人向けではなく、9割近くを国内が持っている

日本の借金は海外から借りているように思えますが、実際は逆です。国債と国庫短期証券を合わせた約1,198兆円のうち、海外の投資家が持っているのは12.2%です(2025年6月末)。

日本の国債の持ち主。日本銀行45.0%、保険・年金22.9%、銀行等15.4%、海外12.2%、その他4.6%(2025年6月末)

残りの9割近くは、日本銀行と、国内の銀行・保険会社・年金が持っています。銀行や保険会社が国債を買うお金は、私たちの預金や保険料です。国全体で見ると、国が国民から借りている形になります。

国内の持ち主は、値下がりしたからといって一斉に売る立場にありません。日本銀行は買い入れを減らしてはいるものの、手持ちの国債を市場で売ってはいませんし、銀行や保険会社は円で受け取る長いお金の置き場として国債を持っています。しかも返すお金は円なので、最後は日本銀行が円を用意できます。

持ち主の9割近くが国内で、返すお金も自分で刷れる円なので、日本では国債を返せなくなる形の破綻が起きにくくなっています。

フランスの借金は、半分以上が対外で、ユーロを自分で刷れない

フランスの国債は、57.5%を海外の投資家が持っています(2026年1〜3月期、時価ベース)。日本の4倍以上です。

海外の投資家は、条件が悪くなれば国内の持ち主より早く売ります。 そして売られたとき、フランスは自分でユーロを刷って買い支えることができません。ユーロを刷るのは欧州中央銀行で、フランス一国の都合では動かせないからです。2010年のギリシャも、同じ形で追い込まれました。

この弱いところに、財政赤字の大きさと政治の不安定さが重なり、格付け会社と市場が反応しています。

中身
財政赤字(GDP比)2025年は5.1%。政府は2026年に5.4%程度へ広がると見ている
格付けフィッチが2025年9月、S&Pが2025年10月に、AA-からA+へ引き下げた
政治少数与党で、財政を立て直す法案を通しにくい
金利10年国債の利回りがドイツより約1.3%高くなり、2012年半ば以来の差に広がった(2026年9月30日)

3つを掛け合わせた指数で並べると、フランスはギリシャの次に来る

3つを1つの数字にまとめて、危険なラインを見るために、指数を作りました。

指数=借金のGDP比×海外の投資家が持つ割合×通貨の係数

通貨の係数は、自分で通貨を刷れない国を1、刷れる国を0.5にしました。最初の2つを掛けると、対外で返さなければならない借金がGDPの何%か、になります。自分で刷れる国は最後は自国の通貨で返せるので、半分に割り引いています。

国借金のGDP比海外が持つ割合通貨指数
ギリシャ(2009年)127%約70%刷れない約89
フランス116.0%57.5%刷れない約67
イタリア137.1%約29%刷れない約40
アメリカ123.9%約31%刷れる約19
イギリス102.3%33.4%刷れる約17
日本206.5%12.2%刷れる約13
指数の比較。ギリシャ(2009年)約89、フランス約67、イタリア約40、アメリカ約19、イギリス約17、日本約13

上に来るのは、危機が起きた国と今懸念されている国で、下に来るのは懸念されていない国です。 ギリシャは2009年に約89になり、翌2010年にEUとIMFへ支援を求めました。この約89を危険なラインの目安に置くと、フランスの約67はその手前にあります。

借金のGDP比でいちばん上の日本は、この指数ではいちばん下に来ます。イタリアはフランスより借金が大きいのに、指数は低く出ます。国債の7割ほどを国内の銀行や家計が持っているからです。ドイツは借金のGDP比が63.5%で、そもそも借金が小さい国です。

借金のニュースを見たときは、額の大きさだけでなく、誰から借りていて、何の通貨で返すのかを見てみてください。同じ数字でも、危うさの意味が変わって見えるはずです。


出典

  • 財務省「国債等の保有者別内訳(令和7年6月末(速報))」(日本銀行「資金循環統計」より)
  • フランス財務省 国債庁(Agence France Trésor)「Monthly bulletin July 2026」(非居住者の保有割合、Banque de France)
  • IMF「Fiscal Monitor April 2026」Table 1.2(各国の借金のGDP比、2025年)
  • ドイツ連邦銀行「German general government debt up in 2025」(ドイツの借金のGDP比63.5%)
  • 米議会調査局「Foreign Holdings of Federal Debt」(2026年4月、2025年12月時点)
  • 英国債務管理庁(DMO)「Quarterly Review Oct–Dec 2025」(海外の保有割合、2025年7〜9月期)
  • Il Sole 24 Ore/Banca d’Italia(イタリア国債の非居住者保有、2024年6月)
  • 国際通貨研究所「フランスのソブリン格付悪化に伴う周縁国への影響」(2026年3月31日)
  • ピクテ・ジャパン「フランス国債利回り上昇、何がそうさせたのか」(2026年10月1日)
  • ギリシャの2009年の借金のGDP比と海外保有:Eurostat改定値127%、海外投資家の保有は最大約70%(2010年4月時点の報道)
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