農林水産省の食品価格動向調査によると、2026年10月19日から21日に全国470店舗で売られた卵1パック(10個入り)の平均価格は312円でした。2003年に調査を始めてから、いちばん高い値段です。
店頭の値段は、2025年10月に303円となってから1年間、300円台が続いています。それでは、なぜ卵の値段は上がっているのでしょうか? その内訳はどうなっているのでしょうか?
卵の値段が上がっている理由は、エサ代の上昇と、出回る卵の量が減ったことである
卵の値段を押し上げているのは、鶏のエサ代の上昇と、鳥インフルエンザや猛暑で出回る卵の量が減ったことです。エサ代は、卵を作る費用の中でいちばん大きな部分を占めています。エサ代が上がると、卵を作る費用も上がります。
この費用の上昇に、鳥インフルエンザで鶏が殺処分された年と、暑い夏が重なりました。費用が上がったうえに、出回る卵の量が減ったので、値段が上がっています。
鶏や豚を飼う経営では、費用の6〜7割がエサ代である
卵を作る費用でいちばん大きいのは、鶏のエサ代です。鶏や豚を飼う経営では、生産にかかる費用の6〜7割がエサ代です。農林水産省が2025年11月の畜産部会に出した資料が、2023年の畜産物生産費統計と営農類型別経営統計から示した数字です。
卵を産む鶏だけで見ると、2022年の経営費に占めるエサ代は、飼っている羽数の規模によって54〜58%でした(農林水産省「鶏の改良増殖をめぐる情勢」2025年1月)。残りには、ひなを買う費用、人を雇う費用、電気代や燃料代などが入ります。費用の半分以上がエサ代なので、卵の値段はエサの値段に大きく左右されます。
鶏のエサの約半分はトウモロコシで、輸入に頼っている
配合飼料の原料の約半分はトウモロコシで、そのトウモロコシは米国とブラジルから輸入しています。同じ農林水産省の資料では、2024年度の配合飼料の原料のうち約5割がトウモロコシで、その輸入先は米国が81%、ブラジルが18%でした。トウモロコシのように栄養の多い濃厚飼料は、8割を輸入しています。
そのため、エサの値段は、シカゴの穀物市場のトウモロコシの相場と、円とドルの為替で上がり下がりします。JA全農は2026年10〜12月期の配合飼料の価格を、前の3か月より1トン当たり約3,200円上げました。理由は、トウモロコシと大豆かすの相場の上昇です。
鳥インフルエンザと猛暑で、出回る卵の量が減った
鳥インフルエンザで鶏が殺処分されると、その農場が元に戻るまで、出回る卵の量が減ります。2024年秋から2025年春のシーズンには、51件の発生で約932万羽が殺処分されました(農林水産省の疫学調査報告書)。
農畜産業振興機構の2025年4月の報告では、卵の卸値(東京、Mサイズ基準、1kg当たり)は334円で、前の年の同じ月より52.5%高くなりました。2025年秋から2026年春のシーズンは24件、約576万羽で、前のシーズンより少なくなっています(同じく疫学調査報告書)。
夏の暑さも、卵の量を減らします。2026年8月は、暑さで卵の重さが軽くなり、一部の産地では暑さで鶏が死んだと、農畜産業振興機構が伝えています。
卵の卸値は下がり始めたが、店頭の値段は下がっていない
2025年11月から2026年8月にかけて、卵の卸値は340円から292円に下がりましたが、店頭の値段は304円から305円で、ほぼ同じです。同じ月どうしで並べると、次のとおりです。
| 比べる点 | 2025年11月 | 2026年8月 |
|---|---|---|
| 卸値(東京、Mサイズ基準、1kg当たり) | 340円 | 292円 |
| 店頭の値段(10個入り1パック) | 304円 | 305円 |
卸値は農畜産業振興機構の2025年11月と2026年8月の報告、店頭の値段は農林水産省の食品価格動向調査の数字です。2026年8月の卸値は前の年の同じ月より5.8%安いものの、過去5年の8月の平均の246円より18.7%高く、まだ高い水準にあります。
店頭の1パックの値段を、農家、卸、スーパーがそれぞれいくら受け取っているかに分けた数字は、この2つの調査には載っていません。卸値の動きが店頭の値段にどう伝わっているのかは、公表されている数字からは分かりません。
卵は、鶏が減った分を輸入で埋められない
卵と同じくエサで育てる豚や鶏の肉は、卵ほど値段が上がっていません。理由の一つは、肉は足りない分を輸入で埋められ、卵はほとんど埋められないことだと考えられます。2026年10月の店頭の値段を、過去5年の同じ月の平均と比べると、次のとおりです。
| 品目 | 店頭の値段(2026年10月) | 過去5年の同じ月の平均との比 | 国内で作った割合(2024年度) |
|---|---|---|---|
| 鶏卵(10個入り1パック) | 312円 | 119% | 98% |
| 鶏肉(もも、100g) | 156円 | 115% | 64% |
| 豚肉(ロース、100g) | 288円 | 105% | 48% |
| 国産牛肉(ロース、100g) | 857円 | 102% | 50% |
| 輸入牛肉(ロース、100g) | 451円 | 127% |
値段は農林水産省の食品価格動向調査の数字、国内で作った割合は農林水産省の令和6年度食料自給率の食料国産率の数字です。豚肉と鶏肉の値段は、国産と輸入を分けずに調べた値段です。国内で作った割合と上がり方は、品目ごとにきれいにそろってはいません。
海外の卵が安くても、殻付きの卵はほとんど輸入されていないので、店頭の値段は国内で作る卵の費用と量で決まります。農林水産省の担当課長が2024年1月に書いた解説によると、2022年度に国内に出回った卵のうち輸入は4%で、その約9割は加工食品の原料にする粉卵でした。
鶏肉は、国内で足りない分を輸入で埋めています。2026年7月の鶏肉の輸入量は5万8,478トンで、前の年の同じ月より21.2%増えました。主な輸入先のブラジルで生産が順調だったためです(農畜産業振興機構)。卵は2024年度に国内で作った割合が98%で、鳥インフルエンザで鶏が減っても、輸入で埋める道がほとんどありません。
鳥インフルエンザの被害も、卵を産む鶏に偏っています。2025年秋から2026年春のシーズンに発生した24件のうち、17件が卵を産む鶏の農場で、肉用の鶏の農場は5件でした(疫学調査報告書)。
輸入の肉が安い理由の一つは、エサのトウモロコシを作っている国から来ることである
鶏肉の主な輸入先のブラジルと、牛肉の輸入先の一つの米国は、日本が鶏のエサとして買っているトウモロコシを作っている国です。日本が輸入するトウモロコシの81%は米国、18%はブラジルからです(農林水産省の資料)。この2つの国は、エサを海の向こうから運ぶ費用をかけずに、牛や鶏を育てられます。卵を作る日本の農家は、同じトウモロコシを船で運び、円で買います。そのため、エサの費用は日本のほうが高くなり、相場と為替が動くたびに卵の費用も動くと考えられます。
ただし、輸入の肉も値上がりと無縁ではありません。輸入牛肉は、過去5年の同じ月の平均の127%で、卵より上がっています。輸入先の一つの米国では牛の数が減り、2026年の牛肉の生産量は前の年より4.0%減る見通しです。2026年8月末の為替は1ドル161円でした(農畜産業振興機構)。輸入の肉の値段は、輸出する国で肉が足りているか、円が安いかで動きます。
卵の値段は、エサ代と卵の量で動く
卵が高い理由は、輸入のトウモロコシの値段に左右されるエサ代と、鳥インフルエンザや暑さに左右される卵の量の2つです。卸値は2025年の秋より下がっていますが、エサ代は2026年の秋にまた上がりました。
次に卵の値段が動いたとき、エサ代と卵の量のどちらが動いたのか、ニュースの中で探してみてはいかがでしょうか。



